14 / 14
第一部 クローディアと氷の精霊王
エピローグ
しおりを挟む
東南東の丘からの帰り道。
クローディアは満足げにほくそ笑んでいた。
膝上でふふふ、と意味深な笑みを連呼する妻を見て精霊王はとんでもないことになってきたと、反対にぼやいていた。
「お前、あれでよかったのか?」
「へ?
ああ、はい。
あれでよいのです。
不毛な狩りなどされた日には、彼らの怒りに火をつけかねません。
何より、敵うわけがないではないですか。
マクシミリアンやアンナに。
先兵にされるのは神殿関係者ですよ?
きちんと‥‥‥お土産もあげましたし」
「土産なあ‥‥‥。
翡翠がまさか、連中の大好きな宝石だとは」
「あれほど巨大な翡翠。
まあ、彫られている存在が誰かにも気づいていたようですし。
氷雪熊の長老たちも、あの広かった洞穴の上段に飾って見せたということは、旦那様とは争う気が無いと。
そういうことでしょ?」
「うん、まあ、な。
しかし、妙な気分だな‥‥‥」
「いいではありませんか、人間だけでなく魔獣からも慕われて、信奉される偉大なる氷の精霊王様。
自慢の旦那様ですわ」
「そうか?
どうもやりきれんな」
ふーむとクローディアを抱きしめて精霊王は大きなため息をつく。
まあ、臣下に下ると言った訳ではないが、この子が存命の間は人も魔獣も精霊も上手くやっていけるだろう。
そんな未来はなんとなく、見えかけてきたから彼は不問にすることにした。
「で、王国には遣いを出したのか?」
「ええ、誰でしたっけ?
ジェスロの同輩が行ってくれたはずですわ。
マクシミリアンもアンナも管理地が魔獣の棲み処で、あちらが先だから人間は手出ししないように。
そういう、わたしの指示に歯噛みしていたみたいですけど」
「争いが無いのが一番いいのだ。
無辜な民が犠牲になるのが一番だめだからだ。
しかし、きちんと管理できるのか?」
「心配ですか?」
クローディアにじっと振り返りながら見つめられ、その頭上には氷雪熊の視線もあり‥‥‥
「うっ。
いや、まあ。
任せるとしよう」
「はい、旦那様。
子供も欲しいですしねー、幸せになりましょうね?」
「あの王子夫婦を苛立たせる程度には、な?」
新妻を再度、優しく抱き寄せると精霊王はソリの上でどこか不安なまま、まあいいか。
そう、聞こえないようにため息をつくのだった。
クローディアは満足げにほくそ笑んでいた。
膝上でふふふ、と意味深な笑みを連呼する妻を見て精霊王はとんでもないことになってきたと、反対にぼやいていた。
「お前、あれでよかったのか?」
「へ?
ああ、はい。
あれでよいのです。
不毛な狩りなどされた日には、彼らの怒りに火をつけかねません。
何より、敵うわけがないではないですか。
マクシミリアンやアンナに。
先兵にされるのは神殿関係者ですよ?
きちんと‥‥‥お土産もあげましたし」
「土産なあ‥‥‥。
翡翠がまさか、連中の大好きな宝石だとは」
「あれほど巨大な翡翠。
まあ、彫られている存在が誰かにも気づいていたようですし。
氷雪熊の長老たちも、あの広かった洞穴の上段に飾って見せたということは、旦那様とは争う気が無いと。
そういうことでしょ?」
「うん、まあ、な。
しかし、妙な気分だな‥‥‥」
「いいではありませんか、人間だけでなく魔獣からも慕われて、信奉される偉大なる氷の精霊王様。
自慢の旦那様ですわ」
「そうか?
どうもやりきれんな」
ふーむとクローディアを抱きしめて精霊王は大きなため息をつく。
まあ、臣下に下ると言った訳ではないが、この子が存命の間は人も魔獣も精霊も上手くやっていけるだろう。
そんな未来はなんとなく、見えかけてきたから彼は不問にすることにした。
「で、王国には遣いを出したのか?」
「ええ、誰でしたっけ?
ジェスロの同輩が行ってくれたはずですわ。
マクシミリアンもアンナも管理地が魔獣の棲み処で、あちらが先だから人間は手出ししないように。
そういう、わたしの指示に歯噛みしていたみたいですけど」
「争いが無いのが一番いいのだ。
無辜な民が犠牲になるのが一番だめだからだ。
しかし、きちんと管理できるのか?」
「心配ですか?」
クローディアにじっと振り返りながら見つめられ、その頭上には氷雪熊の視線もあり‥‥‥
「うっ。
いや、まあ。
任せるとしよう」
「はい、旦那様。
子供も欲しいですしねー、幸せになりましょうね?」
「あの王子夫婦を苛立たせる程度には、な?」
新妻を再度、優しく抱き寄せると精霊王はソリの上でどこか不安なまま、まあいいか。
そう、聞こえないようにため息をつくのだった。
23
お気に入りに追加
173
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!


異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい
千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。
「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」
「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」
でも、お願いされたら断れない性分の私…。
異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。
※この話は、小説家になろう様へも掲載しています
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる