聖女である御姉様は男性に抱かれたら普通の女になりますよね? だから、その婚約者をわたしに下さいな。

星ふくろう

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第一部 クローディアと氷の精霊王

エピローグ

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 東南東の丘からの帰り道。
 クローディアは満足げにほくそ笑んでいた。
 膝上でふふふ、と意味深な笑みを連呼する妻を見て精霊王はとんでもないことになってきたと、反対にぼやいていた。
 
「お前、あれでよかったのか?」
「へ?
 ああ、はい。
 あれでよいのです。
 不毛な狩りなどされた日には、彼らの怒りに火をつけかねません。
 何より、敵うわけがないではないですか。
 マクシミリアンやアンナに。
 先兵にされるのは神殿関係者ですよ?
 きちんと‥‥‥お土産もあげましたし」
「土産なあ‥‥‥。
 翡翠がまさか、連中の大好きな宝石だとは」
「あれほど巨大な翡翠。
 まあ、彫られている存在が誰かにも気づいていたようですし。
 氷雪熊の長老たちも、あの広かった洞穴の上段に飾って見せたということは、旦那様とは争う気が無いと。
 そういうことでしょ?」
「うん、まあ、な。
 しかし、妙な気分だな‥‥‥」
「いいではありませんか、人間だけでなく魔獣からも慕われて、信奉される偉大なる氷の精霊王様。
 自慢の旦那様ですわ」
「そうか?
 どうもやりきれんな」

 ふーむとクローディアを抱きしめて精霊王は大きなため息をつく。
 まあ、臣下に下ると言った訳ではないが、この子が存命の間は人も魔獣も精霊も上手くやっていけるだろう。
 そんな未来はなんとなく、見えかけてきたから彼は不問にすることにした。

「で、王国には遣いを出したのか?」
「ええ、誰でしたっけ?
 ジェスロの同輩が行ってくれたはずですわ。
 マクシミリアンもアンナも管理地が魔獣の棲み処で、あちらが先だから人間は手出ししないように。
 そういう、わたしの指示に歯噛みしていたみたいですけど」
「争いが無いのが一番いいのだ。
 無辜な民が犠牲になるのが一番だめだからだ。
 しかし、きちんと管理できるのか?」
「心配ですか?」

 クローディアにじっと振り返りながら見つめられ、その頭上には氷雪熊の視線もあり‥‥‥

「うっ。
 いや、まあ。
 任せるとしよう」
「はい、旦那様。
 子供も欲しいですしねー、幸せになりましょうね?」
「あの王子夫婦を苛立たせる程度には、な?」

 新妻を再度、優しく抱き寄せると精霊王はソリの上でどこか不安なまま、まあいいか。
 そう、聞こえないようにため息をつくのだった。
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