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第一部 クローディアと氷の精霊王
精霊王は聖女が欲しくてたまらない
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「なあ、クローディア?」
「なんでしょうか、精霊王様?」
「どうしてここにいる‥‥‥???」
なんでって。
逃げて来たからに決まってるじゃないですか。
なにをわかりきったことをきいてるんですか、精霊王様?
しれっとした顔で氷の聖女は、
「あ、ありがとう。
こんな極北の国で甘いお菓子なんてほんとうに贅沢。
神官なんてやってられませんわねー」
と言いながら、精霊王の臣下の女性がうやうやしく出してきたお菓子と紅茶を楽しんでいた。
なんてずぶとい神経の持ち主なんだ‥‥‥精霊王はやれやれと呆れて自分もそれを食べようとするが――
「おい、それはわたしの城から出した――」
「だめでございます。
これはクローディアが頂きましたものですから。
精霊王様ともあろう御方が、器の小さいことを言わないでください」
「本当に、あの謙虚なお前はどこに行ったのか‥‥‥」
「そんなに理解していただけるほど、深いお付き合いございませんので」
「‥‥‥冷たい女だ」
「はい、氷の聖女でございますから。
あ、紅茶のおかわりいただけますか、そそ。
砂糖は二つで、あら、ありがとう」
「要求するな!
お前たちも出すでないっ、まったくー‥‥‥。
クローディア、精霊王としての命令だ、あれを解いて来い」
あれ、とは氷の中に閉じこめられた王子夫婦のことである。
クローディアはお断りいたします、と首を横にふっていた。
「嫌ですわ、なんでいまさら。
戻ったらどんな仕打ちがまっているか、想像できません?
精霊王様のアイデアでもあると話していいのなら、行きますけれど?」
「お前!?
わたしを売る気か!?」
「だって、そうじゃないですか。
精霊王様のお考えも入っていますし、それに喜んでいたんじゃないですか?
あの光景を見ていらしたんでしょ、どうせ?」
「くっ‥‥‥なんとあざとい」
はい、氷の聖女ですから。
そうクローディアは微笑んでやる。
ここに来た理由?
そんなの決まってるじゃないですか。
あそこに、王都にいたらバレバレですからねー‥‥‥聖女の意趣返しだって。
死ぬのは嫌だもの。
そう、クローディアは王子夫婦を氷に閉じ込めたあと、あの毛皮を被ってまたテフテフと氷原を歩いてきたのだ。
どうせ、バレたら家はお取り潰し。
まあ、父親はどうなってもいいんだけど、あの夜に庇ってくれなかったんだから。
家だって勝手に潰れたらいい。
母親はすでに他界してるし、実の兄弟姉妹はいない。
神殿?
あの神官長だってどこかで仲間だった可能性があるから、どうでもよかった。
ただ――
「次代の王がいなければ、神殿関係者とその下で働いてきたお前の同僚や作業員仲間にまで、罪が及ぶかもしれんな‥‥‥なあ、元神官のクローディア?」
「うー‥‥‥卑怯です、精霊王様。
自分だけ逃げようなんてー‥‥‥」
「そりゃ、わたしは精霊王様だからな。
信者の恨みを買うなどごめんだ」
「なんて裏表のある神様‥‥‥」
「人間だってそんなものだろう?
あの王子にしたって王国の行く末を考えて――」
「あれは単に、思考が足りないだけです!」
「なら、お前も似たようなものだな?
誕生日の、あの場でその解決策を出せなかったのだから。
そうだろ?」
「人の弱味につけこむのだけはうまいんですね、精霊王様?」
「毒舌だけは立派なものだな。
しかし、かつての仲間からの信頼は失いたくないだろう?」
酷い王様だ。
そんな、心のどこかにある後悔の念を責めるなんて。
そりゃあ良心が痛むこともありますよ?
でも、あんな仕打ちをされて黙って終わらすのだけは嫌。
クローディアは頑固に、意固地になって首をたてに振らない。
しまいには、
「なんで聖女なんて厄介な存在を作ったんですか、精霊王様?
王様に匹敵する権力に、これだけの氷を操る能力。
前の聖女様なんて、神殿にこもってのんびりするだけで、神官だけが苦労してたんですよ!?」
精霊王は面白そうに笑っていた。
別に聖女なんていらんぞ?
そうも付け加えて、返事をしてくる。
クローディアはあっけに取られていた。
「あのな、クローディア。
あの大地は数万年以上も、氷のしたにあったんだぞ?
普通に考えれないか?」
「意味がわかりません」
「結界の下の大地を掘ってみろ。
土は凍り付いてるはずだ。
王国を作るときに、わたしが結界のなかの大地だけすべて作り変えたんだよ」
「それは偉大ですのね、あ、もうわたしのお菓子ないので、精霊王様の頂きますねー」
「おい‥‥‥偉大なんて思ってないだろ、お前。
まったく、なんて聖女だ。
とにかく、新しい土地を制御するのに必要だったのだ」
‥‥‥と、クローディアは沈黙する。
それって、数百年もたった今でもいるんですか?
そんな視線を精霊王に投げかけながらお菓子を頬張っていた。
威勢のいいことを言い、ふてぶてしくしているが実は王様の前にでも、いきなり放り出されたらどうしようと思って背中には冷や汗をかいているのだ。
わたしは知らん。
すべてはこの聖女がやったのだ、なんて言われたらどうしよう。
そう思いながらも、手と口だけは動いていた。
「うーん?
お前、気が付いていないのか?」
「‥‥‥何をですか?」
「あんな掘れば掘るほど、不凍。
つまり凍っている大地に温泉などあるわけがなかろうが。
お前の代になって、温泉の数が増えたとは思わなかったのか?」
「あー‥‥‥そう言われれば確かにそんな気もします、ねえ‥‥‥」
「その毛皮。
この城の中では脱いで欲しいのだがな。
口から顔をだして歩かれたら家臣が困惑する」
「だって、ここ寒いんです」
「そりゃ、氷の精霊王の城だからな」
「なら、多めに見て下さらないと」
口の減らんやつめ。
精霊王はお菓子の皿をうばいかえすと、言葉の意味を考えろとクローディアに促す。
その、魔獣は聖女であっても仕留めることは難しんだぞ、と。
「なんだか、わたしが聖女にならなくても神官時代から聖女様と同程度の能力があった、みたいな言い方されますね、精霊王様?」
「鈍い奴だな。
そう言っているんだ。
温泉もそうだ。
お前が湯元を発見したのではなく、地下に溜まっている水源の凍り付いたのを湯に変えていた。
そういうことだ」
「‥‥‥だから何なんですか?
わたしが今更、あの二人を元に戻す理由にはなりませんよね?
嫌ですよ、どうせ、精霊王様は悪くないとか言いながら売るつもりなんでしょう?
冷酷な精霊王様‥‥‥」
「お前、めんどくさい女だな?」
「余計なお世話です」
はあ、遠回しすぎて伝わらん。
こいつは賢いようで感情優先。
まさしく、女性そのものだ。
氷の精霊王はため息をついた。
「お前の実家だってこのままでは潰されるぞ?
自分の復讐のために、あの場にいた全員を愚か者にするのはやめろ。
わたしが困る」
「はあ??」
なんでこの人が困るんだろ?
クローディアはまったく意味がわからなかった。
困るのは王様だけで、わたしたちには関係ないのに、と。
「だからだなあ‥‥‥。
察しろ。
あの場で聖女は神殿で祈っていろと王子夫妻が発言しただろう?
覚えはあるな?」
「まあ‥‥‥それは、はい」
「なら、その発言がわたしの怒りに触れた。そういうことにしておけ」
「嫌ですよー、そんなことで許したら、あの二人の反省なんてないじゃないですか!!
せっかく、凍らせたのに」
クローディアは口をとがらせて文句を言う。
気が晴れない。
そう言い続けていた。
「だからなーそれ以上の幸せがあればいいのだろう?
あの二人が悔やむような、そんな幸せがな?」
「はあ‥‥‥。
まあ、そんなのありませんけどね。
しばらくこのお城に居座って、そのうち、精霊王様も冷たくなるだろうから。
王国に売り飛ばされる前に逃げようかな、とは思ってましたけど」
「本当に口の減らない女だな、おまえは?
何故、わたしを悪者にするんだ!?」
「だってー‥‥‥。
たかだか、いち聖女よりつきあいの長い王国を取るのは普通じゃないですか。
違います?」
ふてぶてしく、皿を再度、強奪してクローディアはふんぞり返る。
大体、こうなった以上、次代の聖女の選定だって厳しくなるだろうし。
神殿関係者の恨みだって‥‥‥逃げ場がないのは自分だけじゃないですか、と。
「それくらいの覚悟は決めてやれよ、お前‥‥‥」
「手助けしてくださった精霊王様も同罪ですわ‥‥‥」
「クッキー頬張っていばるな!
なら、罪を半分背負ってやるから。
あれを許してやれ。
お前の親が愚かだとなったままだと、わたしも困るのだ」
なんで困るのよ。
半分、背負いますとかいいながら。
なら、どうするんですか、何をしてくださいますか、精霊王様!?
クローディアは突っ込んでみた。
そして返ってきた返事に唖然とする。
「わたしはずぶとくて冷酷で嫉妬深いおまえが気に入っている」
「はあ?
頭に温泉でも湧きましたか!?」
「失礼な!
本気だ‥‥‥!」
「‥‥‥嘘でしょ!?」
お父様が愚かだと困るのは、つまり。
精霊王様の一族になるから評判が‥‥‥ってこと!?
「じゃあ、次代の聖女は!?
神殿も王国も、より疑い深くなりますよ!?」
「聖女はなしだ。
その代わり、お前が管理しろ。
妻になれば神格をやる。
あの馬鹿、王子夫婦の上に立てるぞ?」
「はああ??!
精霊王様‥‥‥本当に女を見る目が無いですね!?」
「それはこちらのセリフだ。
さっさと、あの術を解いて来い!!」
「わかりましたよ‥‥‥旦那様‥‥‥いいのかしら、こんなご都合主義ー‥‥‥」
「いいからさっさと行け!!」
「はーい‥‥‥。
まあ、いっか。
これからは気に入らない時はいつでも凍らせてやれるんだし。
役得、役得―-」
そう言いながら、王国に戻って行くクローディアに部下をつけて送迎させるようにしながら、氷の精霊王は思ったという。
何か間違えたかもしれん‥‥‥と。
注)第三話はとっと様の感想にヒントを得て書きました。
とっと様、ありがとうございました。
「なんでしょうか、精霊王様?」
「どうしてここにいる‥‥‥???」
なんでって。
逃げて来たからに決まってるじゃないですか。
なにをわかりきったことをきいてるんですか、精霊王様?
しれっとした顔で氷の聖女は、
「あ、ありがとう。
こんな極北の国で甘いお菓子なんてほんとうに贅沢。
神官なんてやってられませんわねー」
と言いながら、精霊王の臣下の女性がうやうやしく出してきたお菓子と紅茶を楽しんでいた。
なんてずぶとい神経の持ち主なんだ‥‥‥精霊王はやれやれと呆れて自分もそれを食べようとするが――
「おい、それはわたしの城から出した――」
「だめでございます。
これはクローディアが頂きましたものですから。
精霊王様ともあろう御方が、器の小さいことを言わないでください」
「本当に、あの謙虚なお前はどこに行ったのか‥‥‥」
「そんなに理解していただけるほど、深いお付き合いございませんので」
「‥‥‥冷たい女だ」
「はい、氷の聖女でございますから。
あ、紅茶のおかわりいただけますか、そそ。
砂糖は二つで、あら、ありがとう」
「要求するな!
お前たちも出すでないっ、まったくー‥‥‥。
クローディア、精霊王としての命令だ、あれを解いて来い」
あれ、とは氷の中に閉じこめられた王子夫婦のことである。
クローディアはお断りいたします、と首を横にふっていた。
「嫌ですわ、なんでいまさら。
戻ったらどんな仕打ちがまっているか、想像できません?
精霊王様のアイデアでもあると話していいのなら、行きますけれど?」
「お前!?
わたしを売る気か!?」
「だって、そうじゃないですか。
精霊王様のお考えも入っていますし、それに喜んでいたんじゃないですか?
あの光景を見ていらしたんでしょ、どうせ?」
「くっ‥‥‥なんとあざとい」
はい、氷の聖女ですから。
そうクローディアは微笑んでやる。
ここに来た理由?
そんなの決まってるじゃないですか。
あそこに、王都にいたらバレバレですからねー‥‥‥聖女の意趣返しだって。
死ぬのは嫌だもの。
そう、クローディアは王子夫婦を氷に閉じ込めたあと、あの毛皮を被ってまたテフテフと氷原を歩いてきたのだ。
どうせ、バレたら家はお取り潰し。
まあ、父親はどうなってもいいんだけど、あの夜に庇ってくれなかったんだから。
家だって勝手に潰れたらいい。
母親はすでに他界してるし、実の兄弟姉妹はいない。
神殿?
あの神官長だってどこかで仲間だった可能性があるから、どうでもよかった。
ただ――
「次代の王がいなければ、神殿関係者とその下で働いてきたお前の同僚や作業員仲間にまで、罪が及ぶかもしれんな‥‥‥なあ、元神官のクローディア?」
「うー‥‥‥卑怯です、精霊王様。
自分だけ逃げようなんてー‥‥‥」
「そりゃ、わたしは精霊王様だからな。
信者の恨みを買うなどごめんだ」
「なんて裏表のある神様‥‥‥」
「人間だってそんなものだろう?
あの王子にしたって王国の行く末を考えて――」
「あれは単に、思考が足りないだけです!」
「なら、お前も似たようなものだな?
誕生日の、あの場でその解決策を出せなかったのだから。
そうだろ?」
「人の弱味につけこむのだけはうまいんですね、精霊王様?」
「毒舌だけは立派なものだな。
しかし、かつての仲間からの信頼は失いたくないだろう?」
酷い王様だ。
そんな、心のどこかにある後悔の念を責めるなんて。
そりゃあ良心が痛むこともありますよ?
でも、あんな仕打ちをされて黙って終わらすのだけは嫌。
クローディアは頑固に、意固地になって首をたてに振らない。
しまいには、
「なんで聖女なんて厄介な存在を作ったんですか、精霊王様?
王様に匹敵する権力に、これだけの氷を操る能力。
前の聖女様なんて、神殿にこもってのんびりするだけで、神官だけが苦労してたんですよ!?」
精霊王は面白そうに笑っていた。
別に聖女なんていらんぞ?
そうも付け加えて、返事をしてくる。
クローディアはあっけに取られていた。
「あのな、クローディア。
あの大地は数万年以上も、氷のしたにあったんだぞ?
普通に考えれないか?」
「意味がわかりません」
「結界の下の大地を掘ってみろ。
土は凍り付いてるはずだ。
王国を作るときに、わたしが結界のなかの大地だけすべて作り変えたんだよ」
「それは偉大ですのね、あ、もうわたしのお菓子ないので、精霊王様の頂きますねー」
「おい‥‥‥偉大なんて思ってないだろ、お前。
まったく、なんて聖女だ。
とにかく、新しい土地を制御するのに必要だったのだ」
‥‥‥と、クローディアは沈黙する。
それって、数百年もたった今でもいるんですか?
そんな視線を精霊王に投げかけながらお菓子を頬張っていた。
威勢のいいことを言い、ふてぶてしくしているが実は王様の前にでも、いきなり放り出されたらどうしようと思って背中には冷や汗をかいているのだ。
わたしは知らん。
すべてはこの聖女がやったのだ、なんて言われたらどうしよう。
そう思いながらも、手と口だけは動いていた。
「うーん?
お前、気が付いていないのか?」
「‥‥‥何をですか?」
「あんな掘れば掘るほど、不凍。
つまり凍っている大地に温泉などあるわけがなかろうが。
お前の代になって、温泉の数が増えたとは思わなかったのか?」
「あー‥‥‥そう言われれば確かにそんな気もします、ねえ‥‥‥」
「その毛皮。
この城の中では脱いで欲しいのだがな。
口から顔をだして歩かれたら家臣が困惑する」
「だって、ここ寒いんです」
「そりゃ、氷の精霊王の城だからな」
「なら、多めに見て下さらないと」
口の減らんやつめ。
精霊王はお菓子の皿をうばいかえすと、言葉の意味を考えろとクローディアに促す。
その、魔獣は聖女であっても仕留めることは難しんだぞ、と。
「なんだか、わたしが聖女にならなくても神官時代から聖女様と同程度の能力があった、みたいな言い方されますね、精霊王様?」
「鈍い奴だな。
そう言っているんだ。
温泉もそうだ。
お前が湯元を発見したのではなく、地下に溜まっている水源の凍り付いたのを湯に変えていた。
そういうことだ」
「‥‥‥だから何なんですか?
わたしが今更、あの二人を元に戻す理由にはなりませんよね?
嫌ですよ、どうせ、精霊王様は悪くないとか言いながら売るつもりなんでしょう?
冷酷な精霊王様‥‥‥」
「お前、めんどくさい女だな?」
「余計なお世話です」
はあ、遠回しすぎて伝わらん。
こいつは賢いようで感情優先。
まさしく、女性そのものだ。
氷の精霊王はため息をついた。
「お前の実家だってこのままでは潰されるぞ?
自分の復讐のために、あの場にいた全員を愚か者にするのはやめろ。
わたしが困る」
「はあ??」
なんでこの人が困るんだろ?
クローディアはまったく意味がわからなかった。
困るのは王様だけで、わたしたちには関係ないのに、と。
「だからだなあ‥‥‥。
察しろ。
あの場で聖女は神殿で祈っていろと王子夫妻が発言しただろう?
覚えはあるな?」
「まあ‥‥‥それは、はい」
「なら、その発言がわたしの怒りに触れた。そういうことにしておけ」
「嫌ですよー、そんなことで許したら、あの二人の反省なんてないじゃないですか!!
せっかく、凍らせたのに」
クローディアは口をとがらせて文句を言う。
気が晴れない。
そう言い続けていた。
「だからなーそれ以上の幸せがあればいいのだろう?
あの二人が悔やむような、そんな幸せがな?」
「はあ‥‥‥。
まあ、そんなのありませんけどね。
しばらくこのお城に居座って、そのうち、精霊王様も冷たくなるだろうから。
王国に売り飛ばされる前に逃げようかな、とは思ってましたけど」
「本当に口の減らない女だな、おまえは?
何故、わたしを悪者にするんだ!?」
「だってー‥‥‥。
たかだか、いち聖女よりつきあいの長い王国を取るのは普通じゃないですか。
違います?」
ふてぶてしく、皿を再度、強奪してクローディアはふんぞり返る。
大体、こうなった以上、次代の聖女の選定だって厳しくなるだろうし。
神殿関係者の恨みだって‥‥‥逃げ場がないのは自分だけじゃないですか、と。
「それくらいの覚悟は決めてやれよ、お前‥‥‥」
「手助けしてくださった精霊王様も同罪ですわ‥‥‥」
「クッキー頬張っていばるな!
なら、罪を半分背負ってやるから。
あれを許してやれ。
お前の親が愚かだとなったままだと、わたしも困るのだ」
なんで困るのよ。
半分、背負いますとかいいながら。
なら、どうするんですか、何をしてくださいますか、精霊王様!?
クローディアは突っ込んでみた。
そして返ってきた返事に唖然とする。
「わたしはずぶとくて冷酷で嫉妬深いおまえが気に入っている」
「はあ?
頭に温泉でも湧きましたか!?」
「失礼な!
本気だ‥‥‥!」
「‥‥‥嘘でしょ!?」
お父様が愚かだと困るのは、つまり。
精霊王様の一族になるから評判が‥‥‥ってこと!?
「じゃあ、次代の聖女は!?
神殿も王国も、より疑い深くなりますよ!?」
「聖女はなしだ。
その代わり、お前が管理しろ。
妻になれば神格をやる。
あの馬鹿、王子夫婦の上に立てるぞ?」
「はああ??!
精霊王様‥‥‥本当に女を見る目が無いですね!?」
「それはこちらのセリフだ。
さっさと、あの術を解いて来い!!」
「わかりましたよ‥‥‥旦那様‥‥‥いいのかしら、こんなご都合主義ー‥‥‥」
「いいからさっさと行け!!」
「はーい‥‥‥。
まあ、いっか。
これからは気に入らない時はいつでも凍らせてやれるんだし。
役得、役得―-」
そう言いながら、王国に戻って行くクローディアに部下をつけて送迎させるようにしながら、氷の精霊王は思ったという。
何か間違えたかもしれん‥‥‥と。
注)第三話はとっと様の感想にヒントを得て書きました。
とっと様、ありがとうございました。
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