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第二章 水の精霊女王アリア

旦那様‥‥‥それは、やりすぎです‥‥‥ 8

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 シュネイア様はさすがに女王様というか、エバースの親類というか。
 人間族が簡単に精霊女王の座に上がったのが面白くないのか、それとも、わたし自身に落ち度があったのか。
 なんとなく、合わない。
 そんな、第一印象を植え付けられそうな対面だった。
 クロウ様に助けを求めるのはおかしな話だし、かといって夫の矢面に立って自分はこうです!
 なんて間抜けにも程があるような情けないことはできない。
 ここは彼の城であり、彼はわたしの夫であり‥‥‥何より、精霊女王の座に就いた際の後見人。
 わたしが黙って後ろに下がり、夫の一族の会話を見守るほかに術がなかった。

「大叔母上、この度はお越しいただき‥‥‥しかし、この時代にその御姿の在所は見受けられませんが。
 やはりまだ、あの時代にだけ御住みなのですか?」

 どことなくとげのある言い方をするエバースの顔は、苦手な存在に対して逃げたいけど後ろには‥‥‥?
 そんなふうにも見て取れた。
 妻がいる男性って大変なのね。
 まあ、いまは旦那様がそうなのだけど。
 そして、シュネイア様はにっこりと微笑んでまた、とげのある返事を返してくる。

「ええ、そうよ可愛いエバースの結婚式にと思って来てみれば。
 今度は、水の精霊女王の生誕祭まで開いたと聞いて。
 我が一族から王が二人も出たかと思いきや‥‥‥」
 
 そこで、ジロリと視線はわたしに向かって移動する。
 え?
 わたしですか!?
 なんとなく、嫌な予感がして背筋に汗が流れたのを感じていた。

「まあ、あなたがそれほどに肩入れをするその女性。
 さて、どれほどのお力を潜在的にもたれていらしたの?」

「おい、シュネイア‥‥‥」

「あなた様はお黙り下さいませ」

 クロウ様の助け舟はあえなく、ドロ舟と化して?
 いいえ、多分、鋼鉄の軍艦でも二つに折られて撃沈されていただろうと思った。
 だって、シュネイア様の全身からはたった一言。

 ―面白くないー

 それがにじみ出ていたから。
 つまり、一介の人間の小娘。
 それも聖女として寿命が終わる寸前に、夫に助けられた存在。
 それが、自分と同列の精霊女王の座に収まることを良しとしない。
 そういうことなんだろうなってわたしにはなんとなく、理解できた。
 確かにそうかもしれない。

 わたしが同じ立場なら――
 エバースの行為に賛同し、歓待することはしないだろうと思うの。
 だって、何も手柄を立てたわけでもない。
 神に近い神格を得てここにいるわけでもない。
 単なる、人間の小娘。それも、聖女という名ばかりの存在がいるんだから。

「我が畏敬致します、神々しき創始の神々にも匹敵せしめん時間の風の女王。
 シュネイア様、いえ、大叔母上、それに大叔父上。
 アリアはわたしが選んだ初めての妻。
 そして、わたしのわがままを聞き入れ、永遠の咎人の時間を共に歩んでくれると約束してくれた愛おしき存在。
 その、大叔母上の物言いは、このエバースの心には悲しきかと――」

 困ったように挨拶をするエバース。
 そして、より困った顔でシュネイア様はエバースに声をかけていた。



 

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