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第一章 悲しみの聖女と精霊王

聖女はしばらく家出をすることにしました! 2

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「あいたた‥‥‥っ」

 しまった。
 着地に失敗した。
 お尻から床に着地したようになって、鈍い痛みが全身を突き抜ける。
 次に思ったのはどうしよう、これはとんでもない誤算だったかもしれない。
 そんな思いだった。

「ア、アリ‥‥‥ア???」

 なぜここに!?
 そんな顔でわたしを信じられないと見つめるショーン。
 そりゃそうよね、いきなりなにもない虚空から出現したんだから。
 逃亡したはずの、元婚約者が‥‥‥

「せ、聖女‥‥‥様!?
 お戻りになられた――しかし、なぜ!?
 どこからー‥‥‥??!!」

「いたた‥‥‥あはは、お久しぶりです、国王様、王妃様。
 それに、王子殿下‥‥‥」

 どこからと言われても、いきなり未来からなんて言えるわけがない。
 何より、あそこにいるショーンは負け犬のままの彼。
 どんな行動にでるか分からないのに、ああしろ、こうしろなんて――言えない。
 それこそ、命取りになりそうだもの。

「アリア、心配していたのよー‥‥‥。
 陛下が、殿下を‥‥‥その手にかけようとなさるから。 
 ああ、でも良かった。
 これで息子も救われるわ、ねえ、あなた!!」

 え、ちょっ、ちょっと待ってくださいよ王妃様!?
 何勝手に話進めてるんですか!?

「おお、そうだな、王妃よ‥‥‥。
 これこそ、精霊王様のまさしく、精霊王様の御加護に違いない‥‥‥。
 ありがたいことだー‥‥‥」

 やっぱり、賢君じゃなかったこの王様。
 中身は愚王そのものだ‥‥‥
 本当は、あの未来の先にあったのもショーンの片腕や自分の首とかじゃなくて――
 ラーナ辺りにすべてを押し付けて逃げる気だったんじゃ‥‥‥
 わたしはあまりにも変わり身の早い国王夫妻に唖然としてしまった。
 片腕だの首だのはどこにいったのやら。
 この状況で、精霊王様のお告げなんて言って果たして効果あるのかしら?
 
「良く戻った、わたしの正妃。
 これでこの国も安泰だ‥‥‥!!!」

「なっ!?
 ちょっと、やめて、触らないで!!」

 いきなり抱き着いてくる、恥知らずのこの王子に抵抗するわたしを国王様はじろり、とにらみつけた。
 え、なんですか、国王様‥‥‥
 その目つきは――まさか‥‥‥???

「失礼であろう、聖女殿。
 王子が正妃に迎えると言っているのにそれを断ろうとは。
 あなた様が言いだしたのですぞ?
 この国の為に、正妃になり我が息子を支えたい、と」

 最悪だ‥‥‥本当に、最低な親子だ。
 どうせ王妃様も言うことは分かり切ってる。
 なんで、こんな親子と生涯を共にしようと思ってたの、過去のわたし!?
 まともな人間なんて、どこにもいないじゃない!!

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