えっ!? 聖女として命がけで国を守ってたのに婚約破棄&追放ですか!!? 悲しみの聖女は精霊王の溺愛を受けてます!!!

星ふくろう

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第一章 悲しみの聖女と精霊王

逃がしませんよ、愛しい旦那様!!? 4

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「ねえ、エバース様。
 そんな悲しそうな顔をしないでください。
 アリアまで悲しくなりますよ?」

 この言葉は嘘じゃない。
 心の声の風なんて関係ない。
 溢れ出ている涙だけでも、それは自分でもああ、ダメだなあ。
 自分から言いだしたのに。
 彼を困らせている。
 それが、申し訳なくて。
 何より、もう離れたくないのに‥‥‥
 また、数年は離れ離れになる。
 心だけはあなたの側にいるからね、エバース様。
 少しだけ。
 待っていて下さいな。
 わたしはそうお願いするしかできなかった。

「強がりを言う割に、不器用な我が妻は本当に、愛おしい聖女だ。
 しかしー‥‥‥」

 それとは別に、わたしの全身を上から下までじっと視線をやって考えこむ旦那様。
 この外見が何か問題があるのかな?
 その意図がわからなくて、わたしは戸惑っていた。

「人の成長は早いからな。
 次に戻る時には、更に美しさに磨きがかかっているだろうよ、エバース。
 それとも、そのままが愛おしいのか?
 現在の幼いままの御姿が?
 そう言えば、お前のこれまでの恋愛相手もニンフだったりエルフだったりと――」

 ピクリ。
 そう、わたしの耳がアズオル様の言葉に反応する。
 どの種族も長命で成長が遅い。
 つまり、人間でいえばまだ十代前半に見えても数百年を生きている。
 そんな方々がざらにいる。
 まさかの‥‥‥???

「エバース?
 まさかー‥‥‥」

 少しばかり、いえ、他人の性癖にや趣味に文句をつける気はないけど。
 幼女趣味‥‥‥?
 だとしたら、少しばかり引きますけど、ねえ?
 
「いや、違う、そうではない。
 断じてそうではない。
 ただ――」

「ただ、なんでしょうか、旦那様?
 この笑顔があるうちにお答えいただかないと、出ていくかもしれませんよ?
 戻る頃には既に二十六、七歳。
 人間で言うと、すでに寿命の半分を終えている計算です。
 祈りを捧げ続け、疲弊して外見もさらに老けているかもしれませんね、わたし。
 おばあちゃんになっていても、もちろん、愛して頂けますよね?
 今よりももっと、たくさん、強く抱いて頂けますよね?」

 嫌だなんて言わせない。
 離縁だなんて絶対に認めない。
 何があってもあなたを離さない。
 女の一念は強いんですよ?
 ねえ、旦那様?
 そして、アズオル様が面白そうに助け舟を出してくる。
 本当に、いい友人だな、この御二方は。
 そう思うほどに、いいタイミングだった。

「違うよ、聖女殿。
 そのエバースはな、まだ精霊王候補だった時に前任の精霊王が女性でな。
 くくくっ‥‥‥、数千歳を生きたハイエルフはそれでも若いが人間で言えば四十代といったとことか。
 エバースはその頃、見た目がまるで少女の様に――」

「おい、アズオル!!
 やめろ、人のトラウマを笑うのは!!」

 アズオル様、なかなか素晴らしい合いの手です!
 そして明かされる旦那様の密やかな過去。
 こんなお話、戻ればたくさんお伺いしたいわ。
 三人で過ごす時間が楽しみです。
 わたしはそう思いつつ――

「トラウマ?
 つまり、無理矢理関係を迫られそうになり、必死に抵抗した結果――
 逃げれたけど、それが心のストレスになって老齢の御婦人は苦手だ、と?」

「‥‥‥。
 アリア、もう勘弁してくれ。
 だが、誓う!!!
 お前なら――」

 懇願するように言いすがる旦那様。
 さっきまでのわたしのお願いを却下したあの姿勢はどこにいったのやら。
 なので、わたしも少しばかり意地悪をすることにしました。

「あー‥‥‥いえ。
 いいです、そういう事情ならば仕方がありません。
 心の傷を癒して差し上げたいですけれど、わたしも同じく老齢に似た外見になるでしょうから。
 無理強いをしてもなにも変わりませんから。
 残念ですね、旦那様?」

 そう、笑顔で却下して差し上げたの。
 うん、これっていけないことだけど。
 楽しいですね、やり返すのって。
 でも、いけないことですけどね?

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