えっ!? 聖女として命がけで国を守ってたのに婚約破棄&追放ですか!!? 悲しみの聖女は精霊王の溺愛を受けてます!!!

星ふくろう

文字の大きさ
上 下
16 / 87
第一章 悲しみの聖女と精霊王

逃がしませんよ、愛しい旦那様!!? 2

しおりを挟む
「はい、アズオル様。
 アリアはそう思います。
 ところで、旦那様もアズオル様も、代価としてあのバカ王子の腕や賢君を気取っている王様の首。
 欲しいのですか?」

 おいおい、と呆れた声を上げる旦那様。
 仮にも元義理の父親候補に失礼だろう、と。

「知りません、そんな事は。
 ラーナを二年前から側室へとすることを認めていた段階で、アリアには今では王様ですら‥‥‥。
 裏切り者です。王妃様には恩義は感じますけど。
 いま、あの二人が死んだり傷ついても、この国は変わりません‥‥‥どうせ」

 それでも、アリアは旦那様を愛しておりますよ。
 わたしは心の底からそう思いを込めて夫を見上げた。
 どんな形であれ、いまは夫婦なのだ。
 精霊王の妻として――

「俺も精霊王も。
 そんなものは欲しくはないよ、聖女殿。
 で、どうする気なんだ?
 不公平だ、なんだと言ってもそなたを追い出した憎い元婚約者だろう?
 結界を崩壊させるか?」

「まさか!!?
 そんなことをすれば、民が苦しみます!!
 ショーンだって王になれないではないですか」

 これには御二方がびっくりされていた。

「王にする気なのか!?
 あのバカ王子を!!?」

「アリア、お前、正気なのか??
 殺そうとした相手だぞ!?」

 ですから――
 わたしは鏡の中でまるでピクリとも動かないショーンや王様を指差した。

「何も、国の王にしなくても良いではありませんか?
 例えば、奴隷の王。
 例えば、囚人の王。
 例えば‥‥‥開拓民の王でも――」

「まさか、アリア?
 それは‥‥‥」

「聖女殿、それはあの土地を‥‥‥!!??」

 はい、そうです。
 わたしはにっこりとほほえんでニーエさんにこの国の付近の地図を用意して貰っていた。
 ここですね。
 そう指差したそこは極寒の大地の地下に眠る鉱脈。
 少しばかりの旦那様のお力が効いていて、暖かい土地ではないけれど。
 雪が山と積もるほどの冬は来ないそんな場所。
 そこは、王国の囚人が護送され、定められた期間を鉱山の労働に従事する場所。
 ショーンのあのバカ王子には‥‥‥一番、相応しい場所だ。

「で、ここに送り込み――どうする気だ?
 ただ、労働させるわけではあるまい?
 なあ、わたしのアリア。
 先程から考えが読めないのだが‥‥‥ニーエ、何か教えたな?」

「あら、旦那様。
 ニーエさんをお叱りになるのは筋違いですわ。
 元々、人間は心の風など聞こえないのですから。
 これで、公平な夫婦です。
 それは置いておきまして‥‥‥。
 アズオル様、ショーンにこの鉱山の囚人たちをまとめ、この付近に街を作らせて新しい国を作る。
 そこにアズオル様、あなた様の神殿を新たに建てそして、国民に信仰させる。
 いま、王都には職のない者も溢れております。
 試練を与えるのはいかがでしょうか?」

 顔を見合わせる御二方。
 どちらの名前でそれを言いだすか。
 困っているようだった。

「ねえ、旦那様?
 水の精霊の女王。
 誰がなる予定でしたかしら?」

 わたしは顔をしかめる二人に向かって、意地悪く言ってみた。
 もう責任を御二方だけで背負われる必要なんてないじゃないですか。
 このアリアにも、分けて下さい。
 わたしはそんな笑顔を御二方にむけたの。

しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

処理中です...