上 下
10 / 87
第一章 悲しみの聖女と精霊王

聖女の寿命と王子の対価がそれではー‥‥‥困ります!! 3

しおりを挟む
 王様が剣を振り上げた。
 その切っ先は間違いなく、いま顔を庇おうとしているショーンの右腕を狙っている。
 ちょっと!!??
 待ってよ、待ってよ、待ってよっーーーー!!!
 そんなこと誰も望んでないの!!
 わたしは!!

「甘えるな、アリア!!」

「えっ‥‥‥???
 だん、な‥‥‥さま?
 なん、で??
 なぜですか!?
 だって、目の前でショーンが!!」

 パンッ‥‥‥

 小気味好い音がしてわたしの頬がはたかれた。
 ‥‥‥え???
 なんーーーーで!?
 なんで、怒られなくちゃ‥‥‥??

「ただの友人、知人ならば即座に止めるべきだ。
 だが彼は王子だ。
 王の覚悟をお前は見ていないのか?」

 はたいてすまなかった。
 そう、言い、旦那様はわたしを抱きしめてくれた。

「多くの者の上にたつ以上‥‥‥民に犠牲を強いた王子は報いを受けなければならない。
 それは、わたしたちが介入することではない。
 あの国が。
 あの国王が決めることだ。
 いいか、愛しいアリア。
 慈悲だけでは世界は救えない。
 お前が水の精霊の女王になると決意したその日から、王になるための試練は始まっている。
 可哀想、憐れだ。
 それだけでは駄目なんだよ、アリア」

「そんな、それはー‥‥‥」

 そう思うけど、言われてみればそれはそうだ。
 王様は命を捧げて民を守ろうとしている。
 その後に残されたあのショーンが国を支えて、そしてーー

「わたしの母国は、歴史から消え去るのですね‥‥‥。
 はい‥‥‥申し訳ございません、旦那様。
 アリアの覚悟が、足りませんでした‥‥‥」

 王様が死んだら、王妃様も全てを見届けた後に自害なさるだろう。
 ショーンはどうだろう?
 隻腕、片腕でこの大陸にある多くの諸国に頭を下げれるだろうか?
 でも、いまのわたしは彼の。
 風の精霊王エバースの妻であり、水の精霊王の後を継ぐ覚悟を決めたのだ。
 なら、わたしがするべきは‥‥‥

「ふん。
 なかなかいい考えだな、妻よ?」

 あ、また考えを読んだな、この不良精霊王‥‥‥
 妻の心を覗くのはいいですけど、水の精霊王になった後にわたしも覗きますからね?
 浮気なんて考えた瞬間に、覚えていなさいよ!!

「お前は恐い女だ‥‥‥」

「恐くありません!!
 それより!!
 あれ、どうするんですか!?」

 わたしは鏡を指差す。
 ここまで見ていて、酔狂や王の覚悟を教えるだけで済ます気なら‥‥‥
 旦那様は、後から話したはずだ。
 ショーンがやって来て、国王様の首と自分の片腕と引き換えに。
 民の移動が終わるまで、結界魔法を解除するのは待って欲しい。
 そう、願い出た時にわたしに諭したはずだ。
 だって、旦那様は‥‥‥もっと深いものを見せ教える時にしかこんなことはしないはず。
 わたしの覚悟は定まりましたよ、旦那様!?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

処理中です...