外交武官(スパイ)は甘いキスをする

 
 神聖ムゲール王国の女伯爵、エレンジーナ。
 4年前に夫を亡くし、爵位や財産を継いだ彼女は、領内におおきな鉱山をもつ資産家だ。
 表の顔は、女性起業家、アルドノア女伯爵エレンジーナ。

 裏の顔は、外務省に所属する外交武官――つまり、女スパイ。
 今回の任務は、隣国、エルムド帝国の皇子ジーニアスとの結婚だ。

 帝国はエレンジーナが大河沿いの領地にもつ、巨大な魔鉱石の鉱山を欲している。
 エレンジーナは年下の夫をうまくいなしつつ、事業に関わらせないようにしようと思っていた。

 しかし、その実、裏では驚きの計画が進められていた。
 伯爵領には古代魔導帝国の兵器が眠っており、王国側は知らず知らずのうちにそれを掘り当てたのだった。

 その兵器はエルムド帝国の皇帝の血筋しか動かせないのだという。
 何も知らないのはエレンジーナだけ。

「妻の私をとるの? それとも皇帝陛下の命令を優先するの? あなたの愛はどこ?」
「俺を利用しようとたくせに、ああもう。俺はおまえが好きだよ。決まってるだろ、取るなら妻だ!」

 いざ事情を知り、兵器にジーニアスがたどり着いたとき、妻は本当の愛を問いかける。
 そして、若い夫が選んだのは――エレンジーナだった。

 これは互いに騙し合いをしながらも、最後は年上妻の愛を手に入れる男女の物語。
  
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