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第七章 闇の希望と炎の魔神
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ナターシャの視線は希望に満ち溢れていて、彼はそれをうけることがとても苦しかった。
さっきまでの悲しい感覚を彼女に向けていたのに、いまは別の感情が彼を襲っていた。
彼、髑髏の騎士は森の人にまた余計なことを、と毒づきながらナターシャにある事実を伝えなければならなかった。
「すまないー‥‥‥。
ここには君が望む者はいないんだ、アルフレッドも竜王のかつての親友も。
いないんだよ」
本当に済まないと、後悔しているそぶりを見せる彼を、ナターシャは責めれなかった。
ここまでこれたのも、自分がこの場所にいるのも彼等のお陰だからだ。
「いいえ‥‥‥いいの。
あなたたちは悪くない。
それでもさっきの話は気になりますけど、どうもわたしと彼の話のようだからそれはもういいわ」
「ああ‥‥‥。
未来は自分たちで得るものだ。
俺たちのように刈り取られなければ、な?」
「刈り取り‥‥‥?
それは、王家と教会のことでしょうか?
教会は一体、何をしようとして貴方達をあの場所で断罪したの??」
それは困った質問だ、そう騎士は呟いた。
知るべきではないこともあるんだ、と。
「そうだな、人は神を恐れることをやめたんだ。
新たに自分たちに都合の良い神を作り上げた。
古き神は去り、中身のない、力もなにもない神が作らえて祭り上げられた」
「神様を‥‥‥人間が!?」
ナターシャは驚いていた。
偉大なる神々を越える行為を、人間がするなんて、と。
だが、髑髏の騎士はそれを笑っていた。
「なにがおかしいのですか?
神様を作るなんてー‥‥‥」
ナターシャは笑いが止まらない彼に憤然とする。
騎士はひとしきり満足するまで笑い続けると、すまないと言って話を続けた。
「西方教会の神は存在しない。
まあ、それでも千年もあればその聖典にある内容の神を、人の信仰心が産み出すだろう。
その神は他の宗教や神々を弾圧し、征服して勝利を治める。
それはつまり、人類国家群が世界を支配する。
そういうことだ。
宗教を武器として人は人のままで、古き神々や魔や精霊の支配から解放されるべきだと考えたのがあの西方教会の最初の法王であり、俺たちの国の数代目の国王はそれに賛同した。
だから、歴史が書き換えられたのさ。
わかるだろ?
あのお姫様が男装するはずだった演目が、そのいい例だ」
「でも、それでは人は誰にも頼れないわ。
神様は見守っているだけで、何かをしろなんて言わないはずなのに‥‥‥」
「そうかな?」
髑髏の騎士は少しだけ皮肉を交えてそう言うが、ナターシャはそれを受け入れることがどうにも抵抗を感じてしまい納得できなかった。
「だって、竜王様だって無理強いはしなかったし‥‥‥人の世界に神様は口出ししてはいけないって」
「ああ、あれな。
エバーグリーンはかなり古い神だからな。
頭の中が硬いのさ。
考え方も生き方もな。
待つなんてせずに、さっさと嫁を追いかけていればよかったものを‥‥‥」
「嫁?
だって、いまその王妃様は上に―‥‥‥!!」
うん?
髑髏の騎士は不思議そうにそれを聞いているが、ああ、そういう事かと理解する。
このお姫様、まだ誤解しているのかと。
「なあ、そんなことはどうでもいいだろ?
教会は何なんでも、神に関わる存在を消しにくるぞ?
それは、あの人類最大国家エイジス連邦でも同じ事だ。
もっとも、エイジス連邦は外の異世界とも多く交易をする国でもあるし、その窓口でもあるからな。
だから、人類最大国家になれたんだが‥‥‥」
「待って!?
異世界との窓口だの、交易だの言われても分からないわ――。
何より、国家の転覆を図って罪を受けるならわたしだけで、アルフレッドは関係ないでしょ??!」
そんな余計なことよりも彼はどこにいるのかを、ナターシャは早く教えて欲しかった。
彼等が言う、時間がない。
その期限は刻々と近付いているようにナターシャは感じていた。
さっきまでの悲しい感覚を彼女に向けていたのに、いまは別の感情が彼を襲っていた。
彼、髑髏の騎士は森の人にまた余計なことを、と毒づきながらナターシャにある事実を伝えなければならなかった。
「すまないー‥‥‥。
ここには君が望む者はいないんだ、アルフレッドも竜王のかつての親友も。
いないんだよ」
本当に済まないと、後悔しているそぶりを見せる彼を、ナターシャは責めれなかった。
ここまでこれたのも、自分がこの場所にいるのも彼等のお陰だからだ。
「いいえ‥‥‥いいの。
あなたたちは悪くない。
それでもさっきの話は気になりますけど、どうもわたしと彼の話のようだからそれはもういいわ」
「ああ‥‥‥。
未来は自分たちで得るものだ。
俺たちのように刈り取られなければ、な?」
「刈り取り‥‥‥?
それは、王家と教会のことでしょうか?
教会は一体、何をしようとして貴方達をあの場所で断罪したの??」
それは困った質問だ、そう騎士は呟いた。
知るべきではないこともあるんだ、と。
「そうだな、人は神を恐れることをやめたんだ。
新たに自分たちに都合の良い神を作り上げた。
古き神は去り、中身のない、力もなにもない神が作らえて祭り上げられた」
「神様を‥‥‥人間が!?」
ナターシャは驚いていた。
偉大なる神々を越える行為を、人間がするなんて、と。
だが、髑髏の騎士はそれを笑っていた。
「なにがおかしいのですか?
神様を作るなんてー‥‥‥」
ナターシャは笑いが止まらない彼に憤然とする。
騎士はひとしきり満足するまで笑い続けると、すまないと言って話を続けた。
「西方教会の神は存在しない。
まあ、それでも千年もあればその聖典にある内容の神を、人の信仰心が産み出すだろう。
その神は他の宗教や神々を弾圧し、征服して勝利を治める。
それはつまり、人類国家群が世界を支配する。
そういうことだ。
宗教を武器として人は人のままで、古き神々や魔や精霊の支配から解放されるべきだと考えたのがあの西方教会の最初の法王であり、俺たちの国の数代目の国王はそれに賛同した。
だから、歴史が書き換えられたのさ。
わかるだろ?
あのお姫様が男装するはずだった演目が、そのいい例だ」
「でも、それでは人は誰にも頼れないわ。
神様は見守っているだけで、何かをしろなんて言わないはずなのに‥‥‥」
「そうかな?」
髑髏の騎士は少しだけ皮肉を交えてそう言うが、ナターシャはそれを受け入れることがどうにも抵抗を感じてしまい納得できなかった。
「だって、竜王様だって無理強いはしなかったし‥‥‥人の世界に神様は口出ししてはいけないって」
「ああ、あれな。
エバーグリーンはかなり古い神だからな。
頭の中が硬いのさ。
考え方も生き方もな。
待つなんてせずに、さっさと嫁を追いかけていればよかったものを‥‥‥」
「嫁?
だって、いまその王妃様は上に―‥‥‥!!」
うん?
髑髏の騎士は不思議そうにそれを聞いているが、ああ、そういう事かと理解する。
このお姫様、まだ誤解しているのかと。
「なあ、そんなことはどうでもいいだろ?
教会は何なんでも、神に関わる存在を消しにくるぞ?
それは、あの人類最大国家エイジス連邦でも同じ事だ。
もっとも、エイジス連邦は外の異世界とも多く交易をする国でもあるし、その窓口でもあるからな。
だから、人類最大国家になれたんだが‥‥‥」
「待って!?
異世界との窓口だの、交易だの言われても分からないわ――。
何より、国家の転覆を図って罪を受けるならわたしだけで、アルフレッドは関係ないでしょ??!」
そんな余計なことよりも彼はどこにいるのかを、ナターシャは早く教えて欲しかった。
彼等が言う、時間がない。
その期限は刻々と近付いているようにナターシャは感じていた。
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