20 / 20
第二十話 世界の変革
しおりを挟む
明日香の父親との対面を果たした遠矢は不承不承、自分から結婚したいと父親に報告をする恋人をなだめながら考えていた。
竜王は彼らが産まれた時より少し以前で、世界を分けたと言った。
でも、明人はそれより以前に地球からこのヤオに来ていると聞いている。
時系列的に物事が成立しない。
その点が、理解できなかった。
何点か質問した中で、どうやって明日香の母親のシェナと知りあったのか。
その経緯を知りたいと、聞いた時だ。
明人は難しそうに考えながら答えてくれた。
「あの夜、わたしは左目の視力を奪われたんだ。
まだ十七だったかな?
まあ、それはいい。その出来事があまりにも理不尽だと。
夜空に向かって叫んだ。全宇宙の神々よ、これはおかしい、とね。
そうしたら、脳裏に繋げよ、そう声が響いた。
そして、左目の奥に、いまの妻がいた」
懐かしそうに彼は話てくれた。
「妻のフラウにもわたしが映っていたんだよ。
お互いが鏡のように、周囲の風景も合わせて見ることができた。
でも触れず、声も聞こえない。言葉も通じない。
長い時間をかけて文字だの、数字だの、絵だの。
いろんな方法を試みて、ようやく会話ができるようになった。
まあ、文字だけどね?」
そこに明日香が口を挟む。
「ひどいんだよ、アンはねー‥‥‥」
「おい、明日香」
止めようとしても無駄だ。明日香の口は壊れたラジオと同じなのだから。
遠矢は苦い顔をする明人にすいません、と先に謝っておいた。
「英語なんて、エムがお母さんが知らないものを押し付けて教え込んだの。
覚えるのに苦労したってぼやいてたもん。
この紅河の言葉は漢字が元なんだからそれをお互いに交換した方が早かったって。
気づくのが遅いんだよねーー」
「こら、お前はもう黙りなさい。
まったく‥‥‥」
いつもこうなのか? そちらでも。
と問いかけられるが、いいえ、そんなことはないです。
もっと静かですよ、と明日香を庇っておく。そうしないと後からまたうるさいからだ。
「そうそう、とおクンはいつも優しいんだから」
誰だよ、今朝がたひどいとか言ってたのは。
そう心に思うが、口には出せない。
明人が同情してお互いに大変だな、そう言ってくれたのが何よりの救いだった。
帰国の日。
遠矢はあの回転式の輸送機の中で長く考えていた。
竜王が世界を分岐させる前からこの紅河は存在していた。
そして、地球とも繋がっており、数千年前に誰かによって彼らはここに地球から連れてこられた。
天帝や神仙が助けたのではなくて、彼らは償いをしたのではなかったのか?
あの天空回廊はもしかしてー‥‥‥と遠矢は考えた。
竜王が言った、古代神たちが力を合わせてどこかに押し込めた、追いやった喰らうもの。
あの天空回廊はそいつらが使っていた、移動用の道なのじゃなかったのか?
それを竜王は知っていて、喰らうものが戻れないように天空回廊を千年前に二連星。
つまり、このヤオと上にあるメイの中だけで使えるようにしたのではないか。
もしそうだとしたら、もしかしたら戻る可能性のある敵を撃退するためにこの地へと来たのかもしれない。
そして世界が分岐している今。
「連中は、大きな壁の向こうにいてもこの分岐した世界になら‥‥‥干渉できるかもしれない」
だから、弟に自分の妻を警護につけたのではないのか、と。
「なら、俺の警護は‥‥‥???」
竜王ははるか銀河の果てにいて、明日香の母親では役不足のはず。
もしかしたら、あの創造神。
未来から来た異界の存在。この世界の創造神はまだ目覚めていない。
竜王はそう言っていた。
「多分、そうだ」
遠矢の仕事は、その異界の創造神を探すことだ。
彼は核心を見つけた気がした。
「何がそうなの、旦那様?」
明日香との紅河側での入籍は昨日済ませてきた。
あちら側では二人は正式な夫婦になる。
だが、地球側ではそれをすれば‥‥‥
「明日香?」
「へ?」
「離婚だ」
「はあーーーーーー!!???」
「いや、紅河では夫婦でもいい。
俺はもう少ししたら死ぬ。
いいから、文句を言わずに聞け。これはこの紅河側にいる間にしかできない話なんだ。
俺はもう少し、あと数年後だ。
その時に消滅する。だから、日本では結婚できない」
「ふざけんな!
そんなに明日香で遊びたかったの!?」
はあ、バカだなお前は。
ついついそう思いながら抱きしめてしまう。
「違うよ、愛してる。世界で誰よりも大好きだ。
真実を話してるんだ、頼むから聞いてくれ。もう着くまでに数分しかないからな。
俺は消滅する。でも、復元する方法がある。
それを探す、異界の創造神を。
だから、一緒にはいるよ。俺が消えた後にどうすればいいか、それを探す。
もし見つかったら‥‥‥俺を復活させてくれないか?」
「それ、本気?
絶対に、浮気とかしない?
死ぬなら、明日香の為だけに死ねる?」
「ああ、もちろんだ。それに、ただ消える気はないぞ。
必ず、生き返る。これは竜王は関係ない。俺だけの話だ。いいな?」
明日香は涙目で言った。
「旦那様のばか。返事はイエスしかないでしょ」
と。
竜王は彼らが産まれた時より少し以前で、世界を分けたと言った。
でも、明人はそれより以前に地球からこのヤオに来ていると聞いている。
時系列的に物事が成立しない。
その点が、理解できなかった。
何点か質問した中で、どうやって明日香の母親のシェナと知りあったのか。
その経緯を知りたいと、聞いた時だ。
明人は難しそうに考えながら答えてくれた。
「あの夜、わたしは左目の視力を奪われたんだ。
まだ十七だったかな?
まあ、それはいい。その出来事があまりにも理不尽だと。
夜空に向かって叫んだ。全宇宙の神々よ、これはおかしい、とね。
そうしたら、脳裏に繋げよ、そう声が響いた。
そして、左目の奥に、いまの妻がいた」
懐かしそうに彼は話てくれた。
「妻のフラウにもわたしが映っていたんだよ。
お互いが鏡のように、周囲の風景も合わせて見ることができた。
でも触れず、声も聞こえない。言葉も通じない。
長い時間をかけて文字だの、数字だの、絵だの。
いろんな方法を試みて、ようやく会話ができるようになった。
まあ、文字だけどね?」
そこに明日香が口を挟む。
「ひどいんだよ、アンはねー‥‥‥」
「おい、明日香」
止めようとしても無駄だ。明日香の口は壊れたラジオと同じなのだから。
遠矢は苦い顔をする明人にすいません、と先に謝っておいた。
「英語なんて、エムがお母さんが知らないものを押し付けて教え込んだの。
覚えるのに苦労したってぼやいてたもん。
この紅河の言葉は漢字が元なんだからそれをお互いに交換した方が早かったって。
気づくのが遅いんだよねーー」
「こら、お前はもう黙りなさい。
まったく‥‥‥」
いつもこうなのか? そちらでも。
と問いかけられるが、いいえ、そんなことはないです。
もっと静かですよ、と明日香を庇っておく。そうしないと後からまたうるさいからだ。
「そうそう、とおクンはいつも優しいんだから」
誰だよ、今朝がたひどいとか言ってたのは。
そう心に思うが、口には出せない。
明人が同情してお互いに大変だな、そう言ってくれたのが何よりの救いだった。
帰国の日。
遠矢はあの回転式の輸送機の中で長く考えていた。
竜王が世界を分岐させる前からこの紅河は存在していた。
そして、地球とも繋がっており、数千年前に誰かによって彼らはここに地球から連れてこられた。
天帝や神仙が助けたのではなくて、彼らは償いをしたのではなかったのか?
あの天空回廊はもしかしてー‥‥‥と遠矢は考えた。
竜王が言った、古代神たちが力を合わせてどこかに押し込めた、追いやった喰らうもの。
あの天空回廊はそいつらが使っていた、移動用の道なのじゃなかったのか?
それを竜王は知っていて、喰らうものが戻れないように天空回廊を千年前に二連星。
つまり、このヤオと上にあるメイの中だけで使えるようにしたのではないか。
もしそうだとしたら、もしかしたら戻る可能性のある敵を撃退するためにこの地へと来たのかもしれない。
そして世界が分岐している今。
「連中は、大きな壁の向こうにいてもこの分岐した世界になら‥‥‥干渉できるかもしれない」
だから、弟に自分の妻を警護につけたのではないのか、と。
「なら、俺の警護は‥‥‥???」
竜王ははるか銀河の果てにいて、明日香の母親では役不足のはず。
もしかしたら、あの創造神。
未来から来た異界の存在。この世界の創造神はまだ目覚めていない。
竜王はそう言っていた。
「多分、そうだ」
遠矢の仕事は、その異界の創造神を探すことだ。
彼は核心を見つけた気がした。
「何がそうなの、旦那様?」
明日香との紅河側での入籍は昨日済ませてきた。
あちら側では二人は正式な夫婦になる。
だが、地球側ではそれをすれば‥‥‥
「明日香?」
「へ?」
「離婚だ」
「はあーーーーーー!!???」
「いや、紅河では夫婦でもいい。
俺はもう少ししたら死ぬ。
いいから、文句を言わずに聞け。これはこの紅河側にいる間にしかできない話なんだ。
俺はもう少し、あと数年後だ。
その時に消滅する。だから、日本では結婚できない」
「ふざけんな!
そんなに明日香で遊びたかったの!?」
はあ、バカだなお前は。
ついついそう思いながら抱きしめてしまう。
「違うよ、愛してる。世界で誰よりも大好きだ。
真実を話してるんだ、頼むから聞いてくれ。もう着くまでに数分しかないからな。
俺は消滅する。でも、復元する方法がある。
それを探す、異界の創造神を。
だから、一緒にはいるよ。俺が消えた後にどうすればいいか、それを探す。
もし見つかったら‥‥‥俺を復活させてくれないか?」
「それ、本気?
絶対に、浮気とかしない?
死ぬなら、明日香の為だけに死ねる?」
「ああ、もちろんだ。それに、ただ消える気はないぞ。
必ず、生き返る。これは竜王は関係ない。俺だけの話だ。いいな?」
明日香は涙目で言った。
「旦那様のばか。返事はイエスしかないでしょ」
と。
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。
星の記憶
鳳聖院 雀羅
ファンタジー
宇宙の精神とは、そして星の意思とは…
日本神話 、北欧神話、ギリシャ神話、 エジプト神話、 旧新聖書創世記 など世界中の神話や伝承等を、融合させ、独特な世界観で、謎が謎を呼ぶSFファンタジーです
人類が抱える大きな課題と試練
【神】=【『人』】=【魔】 の複雑に絡み合う壮大なるギャラクシーファンタジーです
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる