王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

文字の大きさ
48 / 85
第一章 天空大陸の主

5

しおりを挟む
「ちょっと、アルバート!???」
 なにをしてーーいる、の?
 その光はなに??
「あの天眼とやらを死ぬまで使っても消えないだけの魔素、魔力の源を渡しただけだ。
 命をかけてしてくれたことだからな。それなりに例はしなければならん。
 それと、これは祝いだ、バディムの血族の娘。
 懐かしい、友のことを思い出した。
 力の使い方を思い出すがいい」
 今度は青い光にアリスティアが照らされる。
「なにーーこれ‥‥‥???」
 膨大な知識、一族の知恵、歴史、そしてーー
「御先祖様の‥‥‥」
 リアルエルムは懐かしむように言う。
「バディムの乱は正しくはなかったが、それでもあれは王としては良き王だった。
 魔王を名乗るのが‥‥‥早すぎたな」
 魔王!?
 アリスティアの尾がまた膨らんでしぼんでいく。
「そんな、魔王の家系だったなんてー‥‥‥」
「何も魔王だからといって悪ではないだろう?
 今でもまだ二十ほどはいるようだ、世界各地の地下にな?」
 もう勘弁してください。
 アリスティアは泣きそうになる。アルバートが大丈夫だよ、と抱き寄せてささやいてやると少しは落ち着いたようだがそれでも、彼女にはショックだったらしい。
「リアルエルムも魔王の一人だしねえ」
 その一声が限界だったらしい。
 アリスティアはふっと意識を失ったことを覚えている‥‥‥
「あ、あれっ‥‥‥アリスティア???」
 リアルエルムはアルバート‥‥‥と、たしなめるようにため息をついた。
「お前は本当にその妻が大事なのか?
 もう少し、思いやったらどうだ?
 それに、その腰の剣だが‥‥‥」
 え、あーこれだね。
 アルバートが見たのはグレアム卿が渡してくれた神剣アージェスだった。
「それは命を対価にする剣だ。
 バディムの首を跳ねた剣でもある。ラードリーが手放していたとはな‥‥‥」
 使う時は、銀の月の神からでも力を借りないと、その妻を悲しませるぞ?
 そうリアルエルムは言う。
 アルバートが理由と聞いた時、彼は多くを語らなかった。
 ただ、
「バディムとラードリーはほぼ、一日をかけて戦い、そして、ラードリーが勝った。
 だが、ラードリーが死ぬことはなかった。
 死んだのは‥‥‥今では数少ない、バゼスという魔族がいる。
 千年を生きる空の民だ。ラードリーが愛したその一族の娘の命をその剣は吸った。
 気を付けることだ‥‥‥」 
 さて、土産も渡したし、行きたい所へと送ってやろう。
 どこへ行きたい?
 そう、リアルエルム問いかけた。
 アルバートはアリスティアを抱えると、決めていた一言を告げる。
「では、暗黒神ゲフェトが住まうという。
 あの地下ダンジョンへ」
 あっさりと言いのけた少年に、竜王は嘆息する。
 本当にその妻を守れるのか、とも逆に心配になってしまう。
「お前はどこか田舎で静かに暮らすべきだろう‥‥‥入り口までは送ってやろう。
 そこから先は二人で相談するがいい」
 緑色の燐光に包まれて消えゆくアルバートに、竜王は朱い宝珠を投げつけて寄越した。 
 それはそのまま、アルバートの体内に入りこみ、消えて行く。
「最後の土産だ。
 死ぬなよ、若き天眼使いーー」
 リアルエルムのその言葉を最後に、アルバートとアリスティアは消えて行った。
 我が魔石、力になればいいがなー‥‥‥
 リアルエルムはそう呟き、海中に潜って消えて行った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

聖女じゃない私の奇跡

あんど もあ
ファンタジー
田舎の農家に生まれた平民のクレアは、少しだけ聖魔法が使える。あくまでもほんの少し。 だが、その魔法で蝗害を防いだ事から「聖女ではないか」と王都から調査が来ることに。 「私は聖女じゃありません!」と言っても聞いてもらえず…。

処理中です...