48 / 88
Ninth Chapter...7/27
再会と傍受
しおりを挟む
今日は早めに昼食を作ってもらい、俺はさっさと行動を開始する。蟹田さんから得た情報を最大限活用するためには、とりあえず二つの場所に出向くべきだと考えていた。
一つはもちろん永射邸跡。奴らの計画を示す何らかの手掛かりが残っていないか、それを探す必要がある。
もう一つは、俺たちの秘密基地だ。どこまでできるかは未知数だが、一応パソコンが使えるかは確かめておきたい。ムーンスパローがあれば、病院から発せられているであろう通信を傍受できる可能性もゼロじゃないと考えていた。
まあ、基地についてはあくまでオマケだ。少しだけ、懐かしさに浸りたいと馬鹿みたいな気持ちになったことも大きかった。あいつらとの繋がりを、せめて少しだけでもと。
調査に出向くとだけオヤジに伝え、家を出てそのまま北へ。まだ湿り気のある、枝葉の散らばる山道を歩いていく。ここへ来るまでにも時間は要したが、自分の歩速は大体把握しているし、想定の範囲内だ。
午後一時前。玄人や龍美は、流石に試験を終えて昼食でもとっている頃だと思うのだが……。
「ん……?」
物音が聞こえた気がした。……風が何かを動かしたのだろうか。けれど、今は微風でそんな気配もない。
音は秘密基地の方向から聞こえたようだ。何によって発せられた音なのか……動物か?
そっと、木の影から基地の中を覗き見る。
すると、そこには。
「……あ……」
ぎこちない動きで、けれども頑張って片付けをする彼女。
一人きり、誰にも見せられないのであろう寂しげな表情を露わにする、彼女の姿があった。
俺は……。
「……痛て」
彼女は、軽い頭痛に苛まれたか、側頭部を押さえながら呟く。そのまま一雫の汗を拭うと、小さく溜め息を吐いた。
片付けは終わったようだ。どうせ彼女のことだから、今日は自分がやるからと玄人を帰らせたのだろう。そして一人になって、この静かな場所で自分の思いを整理していたに違いない。
それが、あの表情なのだ。
少しだけまぶたを閉じてから、彼女は決心したように歩き出す。今日はもう帰るつもりのようだった。
やり過ごせばいい。一瞬はそう考えたけれど、本当にそれで良いのかという気持ちが頭をもたげた。
やりきれない感情。
せめて僅かばかりの安心くらいは。
彼女こそ、きっと一番心配してくれている存在に相違なく。
だからこそ、こんなにもメッセージを送り続けているわけで。
既に何人かの人物に会い、協力を取り付けている中で、顔も見せないのはやはり……もどかしかった。
もう、心の中で詫び続けるのは辛かった。
そして――あの表情。
「……よう」
突き動かされるようにして、俺は声を発していた。
最早懐かしくすら感じる彼女に向かって。
「……疲れた顔してんな、龍美」
*
そこからの気持ちの切り替えは案外早かった。龍美から率直な思いをぶつけられたことももちろん大きい。とにかく、彼女は本気でこの事件の解決に寄与したいと考えてくれているようで、ならば口を閉ざすという、裏切りのような選択肢は選べなかった。
俺はこれまでに得てきた情報をほぼ包み隠さずに明かした。満生台で秘密裏に行われているらしい実験のこと、それを行う病院の思惑や出資者の存在……。GHOSTの詳細など、一部曖昧にしたことはあったが、事件に限って言えば大体は把握できるくらいのことを語ったはずだ。まあ、それだけでも龍美は目を丸くして驚いていたけれど。
無理もない。これが単純に電波塔計画に反対する人間の凶行だというなら、受け入れられるレベルではある。なのに付随する要素があまりにも多すぎるのだ。むしろ永射が殺されたことの方が本筋に対する枝葉のようにしか思えない。
解くべき謎はうず高い。殺人の犯人を暴くということが即ち事件の解決になるという保証もない。だから、犯人だけでなくこの事件全体を見つめる必要がどうしてもあった。
協力を申し出てくれた龍美に、俺は早速仕事を頼む。蟹田さんから聞いていた通信の件だ。病院……恐らくは久礼貴獅がいつ外部と連絡をとっているかは不明だが、やり方を決めていれば定期的に確認できる。龍美も操作が覚束ないとはいえ、俺より断然マシだしプログラムへの理解もある。通信傍受の準備は物の数分で完了させることができた。
ムーンスパロー。満雀ちゃんの希望を乗せたこの装置が、今は父親の秘密を暴くために使われているとは。口が裂けても本人には言えないな。
「そもそも、文字データを拾うだけで精一杯な装置でもあるしねえ……発信源が近いから拾えるかもって希望に賭けるしかないかしら」
「駄目なら駄目で、別の策を考える。なに、もう一回盗み聞きすりゃいいだけだからな」
既に永射のところでやっているからと、やや自嘲気味に呟いた言葉だったが、龍美は顔を歪める。危険なことと分かっている行動を肯定できないのだろう。まあ、本当に盗み聞きするのは最終手段だ。蟹田さんの協力もあることだし、そちらは任せることになるかもしれない。
しばらくムーンスパローを付けっぱなしにしていたが、反応は現れない。アマチュアレベルの製作物なので、そもそも通信がうまく拾えるかはまだ不安が残る。一度の成功は偶然の産物かもしれないし。この上いつされるか分からない通信を傍受するのは更に困難だろうな。
時刻は午後一時過ぎ。ちょうど昼休みの時間帯なら、可能性は高そうなのだが。
「なあ、龍美。これってデフォルトの周波数だっけか?」
「ん、まあそうね。幅広く拾えるようにはなってるはずだけど」
「絞ったりできるもんか?」
「絞るって……つまり周波数を限定するってことよね?」
俺はこくりと頷く。思い付きだが、やらないよりはマシだと思ったアイデアだ。
GHOSTという組織と、その構成員であった永射孝史郎。あいつが鬼封じの池にあった廃墟について知識を有し、先人とまで語っていたなら……。
「――802Mhz」
「……マジ?」
龍美はその数値に驚く。彼女にとってそれは、廃墟で見つけただけの数字の羅列に過ぎないから当然といえば当然だ。
しかし、俺はそれ以上の繋がりを一応知っている。可能性は低くとも、試してみることくらいは悪くないだろう。
龍美は半信半疑ながら、ゆっくりと周波数をずらしていく。802Mhzに向けて、少しずつ。
そうしてメモリが802の場所へ行き着くと、彼女は小さく息を漏らした。
あとは我慢比べのような時間だった。数分間、特に何も発することなく波形を見つめ続ける。もしかしたら、という思いが息をすることさえ忘れさせかけたが、結局三分ほど待っても波形に変化は生じなかった。
「……やっぱ駄目かねえ」
「そもそも関係ない数字でしょうし……」
「ま、もしかしたら貴獅もあの数字を見て……とか考えたが、あり得ねえよな」
「そりゃあね――」
龍美が気怠げに頷いた、ちょうどそのときだった。
レッドアイのシステムに、微小な変化が現れたのは。
明らかに、何か電波を拾っている。
802Mhzという周波数帯で、何かを……。
「嘘……」
「聞こえるか……!?」
俺も龍美も、ほとんどくっつくくらいの距離まで耳を近づける。ノイズ混じりの音だが、確かに何かが聞こえていた。
これは――声だ。
『……警戒…………の……』
「き、聞こえる……!」
驚いて声を上げてしまった龍美だが、続きが聞こえなくなるので俺は身振りで黙らせた。悪いなとは思ったが、大事な情報を聞き逃すことだけは避けたい。
『……は……WAWプログ…………』
男の声。この低さからすれば、該当するのはほぼ間違いなく貴獅だ。途切れ途切れな言葉で、かつそこから先はノイズばかりになってしまったが、聞き慣れない不可思議なワードは耳に飛び込んできた。
WAWプログラム……。
拾えただけでも奇跡だ、と龍美は呟く。だが、その奇跡も龍美なくしては起こらないものだった。だから素直に感謝を示したのだが、周波数帯を口にしたのは俺の手柄だと逆に褒められてしまう。あまり慣れていないので上手く反応は返せなかった。
WAWが何の略かは不明としても、プログラムは計画という意味だ。それは永射たちの話していた実験と繋がる。つまりこの街でなされている実験が、WAWプログラムという名称である可能性は高かった。
「WAWね……。とりあえず、そっちの中身も追ってみることにするか。永射の事件に繋がってる線も濃いしな。……サンキュ、助かった」
「これくらい全然。……とんでもないことになってきたわね」
全くだ。これが今起き始めたことではなく、昔から水面下で蠢いていたものだというのが尚更気持ち悪い。
表面化した事実を拾い上げ、怖がっているようでは、全ての真実が明らかになったとき、俺たちはどう感じるのだろうか。……果たして、どんな真相が待っているのか。
「んじゃ、俺はそろそろ帰るとするぜ。時間が惜しいってのもあるしな。お前とは連絡をとりあうが、最低限にしておくつもりだ。こっち側の通信を傍受されてるって危険性だってある」
「それは考えすぎ……だといいけど。了解したわ、今日はアンタの無事が分かっただけでも良しとします」
その代わり、今後はもっと頼ってほしい。そんな気持ちが容易に透けて見える表情をしながら龍美は言う。だから、真剣な場面なのに笑ってしまいそうになった。
本当に、お前というやつは。
「すまねえが、玄人や満雀には俺のこと言わないでくれ。半端なのはかえって心配させるからよ。……じゃあ、またな」
「ええ、また」
また、という部分を殊更力強く。
必ずそれが来ますようにと、彼女は俺を送り出す。
ああ、心配なんてするな。俺は必ずこの事件を終わらせる。
そして、また賑やかな日常をお前らと過ごしてやるとするさ。
一つはもちろん永射邸跡。奴らの計画を示す何らかの手掛かりが残っていないか、それを探す必要がある。
もう一つは、俺たちの秘密基地だ。どこまでできるかは未知数だが、一応パソコンが使えるかは確かめておきたい。ムーンスパローがあれば、病院から発せられているであろう通信を傍受できる可能性もゼロじゃないと考えていた。
まあ、基地についてはあくまでオマケだ。少しだけ、懐かしさに浸りたいと馬鹿みたいな気持ちになったことも大きかった。あいつらとの繋がりを、せめて少しだけでもと。
調査に出向くとだけオヤジに伝え、家を出てそのまま北へ。まだ湿り気のある、枝葉の散らばる山道を歩いていく。ここへ来るまでにも時間は要したが、自分の歩速は大体把握しているし、想定の範囲内だ。
午後一時前。玄人や龍美は、流石に試験を終えて昼食でもとっている頃だと思うのだが……。
「ん……?」
物音が聞こえた気がした。……風が何かを動かしたのだろうか。けれど、今は微風でそんな気配もない。
音は秘密基地の方向から聞こえたようだ。何によって発せられた音なのか……動物か?
そっと、木の影から基地の中を覗き見る。
すると、そこには。
「……あ……」
ぎこちない動きで、けれども頑張って片付けをする彼女。
一人きり、誰にも見せられないのであろう寂しげな表情を露わにする、彼女の姿があった。
俺は……。
「……痛て」
彼女は、軽い頭痛に苛まれたか、側頭部を押さえながら呟く。そのまま一雫の汗を拭うと、小さく溜め息を吐いた。
片付けは終わったようだ。どうせ彼女のことだから、今日は自分がやるからと玄人を帰らせたのだろう。そして一人になって、この静かな場所で自分の思いを整理していたに違いない。
それが、あの表情なのだ。
少しだけまぶたを閉じてから、彼女は決心したように歩き出す。今日はもう帰るつもりのようだった。
やり過ごせばいい。一瞬はそう考えたけれど、本当にそれで良いのかという気持ちが頭をもたげた。
やりきれない感情。
せめて僅かばかりの安心くらいは。
彼女こそ、きっと一番心配してくれている存在に相違なく。
だからこそ、こんなにもメッセージを送り続けているわけで。
既に何人かの人物に会い、協力を取り付けている中で、顔も見せないのはやはり……もどかしかった。
もう、心の中で詫び続けるのは辛かった。
そして――あの表情。
「……よう」
突き動かされるようにして、俺は声を発していた。
最早懐かしくすら感じる彼女に向かって。
「……疲れた顔してんな、龍美」
*
そこからの気持ちの切り替えは案外早かった。龍美から率直な思いをぶつけられたことももちろん大きい。とにかく、彼女は本気でこの事件の解決に寄与したいと考えてくれているようで、ならば口を閉ざすという、裏切りのような選択肢は選べなかった。
俺はこれまでに得てきた情報をほぼ包み隠さずに明かした。満生台で秘密裏に行われているらしい実験のこと、それを行う病院の思惑や出資者の存在……。GHOSTの詳細など、一部曖昧にしたことはあったが、事件に限って言えば大体は把握できるくらいのことを語ったはずだ。まあ、それだけでも龍美は目を丸くして驚いていたけれど。
無理もない。これが単純に電波塔計画に反対する人間の凶行だというなら、受け入れられるレベルではある。なのに付随する要素があまりにも多すぎるのだ。むしろ永射が殺されたことの方が本筋に対する枝葉のようにしか思えない。
解くべき謎はうず高い。殺人の犯人を暴くということが即ち事件の解決になるという保証もない。だから、犯人だけでなくこの事件全体を見つめる必要がどうしてもあった。
協力を申し出てくれた龍美に、俺は早速仕事を頼む。蟹田さんから聞いていた通信の件だ。病院……恐らくは久礼貴獅がいつ外部と連絡をとっているかは不明だが、やり方を決めていれば定期的に確認できる。龍美も操作が覚束ないとはいえ、俺より断然マシだしプログラムへの理解もある。通信傍受の準備は物の数分で完了させることができた。
ムーンスパロー。満雀ちゃんの希望を乗せたこの装置が、今は父親の秘密を暴くために使われているとは。口が裂けても本人には言えないな。
「そもそも、文字データを拾うだけで精一杯な装置でもあるしねえ……発信源が近いから拾えるかもって希望に賭けるしかないかしら」
「駄目なら駄目で、別の策を考える。なに、もう一回盗み聞きすりゃいいだけだからな」
既に永射のところでやっているからと、やや自嘲気味に呟いた言葉だったが、龍美は顔を歪める。危険なことと分かっている行動を肯定できないのだろう。まあ、本当に盗み聞きするのは最終手段だ。蟹田さんの協力もあることだし、そちらは任せることになるかもしれない。
しばらくムーンスパローを付けっぱなしにしていたが、反応は現れない。アマチュアレベルの製作物なので、そもそも通信がうまく拾えるかはまだ不安が残る。一度の成功は偶然の産物かもしれないし。この上いつされるか分からない通信を傍受するのは更に困難だろうな。
時刻は午後一時過ぎ。ちょうど昼休みの時間帯なら、可能性は高そうなのだが。
「なあ、龍美。これってデフォルトの周波数だっけか?」
「ん、まあそうね。幅広く拾えるようにはなってるはずだけど」
「絞ったりできるもんか?」
「絞るって……つまり周波数を限定するってことよね?」
俺はこくりと頷く。思い付きだが、やらないよりはマシだと思ったアイデアだ。
GHOSTという組織と、その構成員であった永射孝史郎。あいつが鬼封じの池にあった廃墟について知識を有し、先人とまで語っていたなら……。
「――802Mhz」
「……マジ?」
龍美はその数値に驚く。彼女にとってそれは、廃墟で見つけただけの数字の羅列に過ぎないから当然といえば当然だ。
しかし、俺はそれ以上の繋がりを一応知っている。可能性は低くとも、試してみることくらいは悪くないだろう。
龍美は半信半疑ながら、ゆっくりと周波数をずらしていく。802Mhzに向けて、少しずつ。
そうしてメモリが802の場所へ行き着くと、彼女は小さく息を漏らした。
あとは我慢比べのような時間だった。数分間、特に何も発することなく波形を見つめ続ける。もしかしたら、という思いが息をすることさえ忘れさせかけたが、結局三分ほど待っても波形に変化は生じなかった。
「……やっぱ駄目かねえ」
「そもそも関係ない数字でしょうし……」
「ま、もしかしたら貴獅もあの数字を見て……とか考えたが、あり得ねえよな」
「そりゃあね――」
龍美が気怠げに頷いた、ちょうどそのときだった。
レッドアイのシステムに、微小な変化が現れたのは。
明らかに、何か電波を拾っている。
802Mhzという周波数帯で、何かを……。
「嘘……」
「聞こえるか……!?」
俺も龍美も、ほとんどくっつくくらいの距離まで耳を近づける。ノイズ混じりの音だが、確かに何かが聞こえていた。
これは――声だ。
『……警戒…………の……』
「き、聞こえる……!」
驚いて声を上げてしまった龍美だが、続きが聞こえなくなるので俺は身振りで黙らせた。悪いなとは思ったが、大事な情報を聞き逃すことだけは避けたい。
『……は……WAWプログ…………』
男の声。この低さからすれば、該当するのはほぼ間違いなく貴獅だ。途切れ途切れな言葉で、かつそこから先はノイズばかりになってしまったが、聞き慣れない不可思議なワードは耳に飛び込んできた。
WAWプログラム……。
拾えただけでも奇跡だ、と龍美は呟く。だが、その奇跡も龍美なくしては起こらないものだった。だから素直に感謝を示したのだが、周波数帯を口にしたのは俺の手柄だと逆に褒められてしまう。あまり慣れていないので上手く反応は返せなかった。
WAWが何の略かは不明としても、プログラムは計画という意味だ。それは永射たちの話していた実験と繋がる。つまりこの街でなされている実験が、WAWプログラムという名称である可能性は高かった。
「WAWね……。とりあえず、そっちの中身も追ってみることにするか。永射の事件に繋がってる線も濃いしな。……サンキュ、助かった」
「これくらい全然。……とんでもないことになってきたわね」
全くだ。これが今起き始めたことではなく、昔から水面下で蠢いていたものだというのが尚更気持ち悪い。
表面化した事実を拾い上げ、怖がっているようでは、全ての真実が明らかになったとき、俺たちはどう感じるのだろうか。……果たして、どんな真相が待っているのか。
「んじゃ、俺はそろそろ帰るとするぜ。時間が惜しいってのもあるしな。お前とは連絡をとりあうが、最低限にしておくつもりだ。こっち側の通信を傍受されてるって危険性だってある」
「それは考えすぎ……だといいけど。了解したわ、今日はアンタの無事が分かっただけでも良しとします」
その代わり、今後はもっと頼ってほしい。そんな気持ちが容易に透けて見える表情をしながら龍美は言う。だから、真剣な場面なのに笑ってしまいそうになった。
本当に、お前というやつは。
「すまねえが、玄人や満雀には俺のこと言わないでくれ。半端なのはかえって心配させるからよ。……じゃあ、またな」
「ええ、また」
また、という部分を殊更力強く。
必ずそれが来ますようにと、彼女は俺を送り出す。
ああ、心配なんてするな。俺は必ずこの事件を終わらせる。
そして、また賑やかな日常をお前らと過ごしてやるとするさ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
『忌み地・元霧原村の怪』
潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。
渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。
《主人公は月森和也(語り部)となります。転校生の神代渉はバディ訳の男子です》
【投稿開始後に1話と2話を改稿し、1話にまとめています。(内容の筋は変わっていません)】
ダブルの謎
KT
ミステリー
舞台は、港町横浜。ある1人の男が水死した状態で見つかった。しかし、その水死したはずの男を捜査1課刑事の正行は、目撃してしまう。ついに事件は誰も予想がつかない状況に発展していく。真犯人は一体誰で、何のために、、 読み出したら止まらない、迫力満点短編ミステリー
【恋愛ミステリ】エンケージ! ーChildren in the bird cageー
至堂文斗
ライト文芸
【完結済】
野生の鳥が多く生息する山奥の村、鴇村(ときむら)には、鳥に関する言い伝えがいくつか存在していた。
――つがいのトキを目にした恋人たちは、必ず結ばれる。
そんな恋愛を絡めた伝承は当たり前のように知られていて、村の少年少女たちは憧れを抱き。
――人は、死んだら鳥になる。
そんな死後の世界についての伝承もあり、鳥になって大空へ飛び立てるのだと信じる者も少なくなかった。
六月三日から始まる、この一週間の物語は。
そんな伝承に思いを馳せ、そして運命を狂わされていく、二組の少年少女たちと。
彼らの仲間たちや家族が紡ぎだす、甘く、優しく……そしてときには苦い。そんなお話。
※自作ADVの加筆修正版ノベライズとなります。
表紙は以下のフリー素材、フリーフォントをお借りしております。
http://sozai-natural.seesaa.net/category/10768587-1.html
http://www.fontna.com/blog/1706/
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この満ち足りた匣庭の中で 二章―Moon of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
それこそが、赤い満月へと至るのだろうか――
『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。
更なる発展を掲げ、電波塔計画が進められ……そして二〇一二年の八月、地図から消えた街。
鬼の伝承に浸食されていく混沌の街で、再び二週間の物語は幕を開ける。
古くより伝えられてきた、赤い満月が昇るその夜まで。
オートマティスム、鬼封じの池、『八〇二』の数字。
ムーンスパロー、周波数帯、デリンジャー現象。
ブラッドムーン、潮汐力、盈虧院……。
ほら、また頭の中に響いてくる鬼の声。
逃れられない惨劇へ向けて、私たちはただ日々を重ねていく――。
出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
【朗読の部屋】from 凛音
キルト
ミステリー
凛音の部屋へようこそ♪
眠れない貴方の為に毎晩、ちょっとした話を朗読するよ。
クスッやドキッを貴方へ。
youtubeにてフルボイス版も公開中です♪
https://www.youtube.com/watch?v=mtY1fq0sPDY&list=PLcNss9P7EyCSKS4-UdS-um1mSk1IJRLQ3
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる