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Eighth Chapter...7/26
診察と対話②
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「とりあえず、診察を始めてしまおうか。話せることがあれば、話してくれればいいから」
「お願いします」
診察台の上に寝転ぶよう促され、仰向けになる。そこからは簡単な問診と、特殊な装置を使った異常の検査が進められていく。
普通の医師に求められる技術ではないし、双太さんも相当特殊な知識を詰め込んできたのだろう。並外れた努力によって。
「……双太さんは、この街の事情についてどれくらい知ってるんすか?」
「事情、というと」
「まあ、電波塔計画とか、そもそもまちづくりの方針そのものについてとかっすかね」
「……それを聞くということは、あまり良くないことを耳にしたみたいだね」
一瞬、双太さんの声が震えたように思えた。まさか、知られたからには生かしておけない……なんて言うんじゃないかとほんの僅かだけ焦ったが、決してそういうわけではなかった。彼は悲しげに嘆息を吐いて、
「僕はあくまで下働きの人間だ。色んな経緯があって、貴獅さんとともに医師をやらせてもらっているけれど……僕自身も深入りはできないし、詳しい事情は知らない」
「含みのある言い方っすね。深く知ることが危険だ……みたいな」
「そう言うわけではないよ。ただ、そうだね。僕にも手の届かない分野というか……貴獅さんはこの街を、そこで過ごす人々をモデルケースとして、ハンディキャップを持つ人に対する新しい解法を出そうとしているみたいだ」
「新しい、解法……」
そこでどうしても浮かんできたのは、永射が口にしていたあの奇妙な台詞だった。
――ヒトの、魂魄の新たな在り方を模索しているのですよ。
「間違えないでほしいのだけど、貴獅さんは決して研究者タイプの人じゃあない。あの人が熱心になっている理由は他でもない、満雀ちゃんのためなんだ」
「満雀ちゃんの?」
「うん。あの人が一番治したいと思っているのは、やっぱり満雀ちゃんだからさ」
それを言われると、少し考えを改めたくもなる。あの男とて一人の父親であり、娘は俺たちの親友である満雀ちゃんなのだ。
彼女の笑顔を守ること……それが一番の望みというなら、その気持ちは理解できる。
「満雀ちゃんを救えれば、同じように沢山の人を救える。貴獅さんはそう考えているはずだ。ただ、画期的な方法というのが道徳的に受け入れられるものなのかというのは、常に社会に委ねられるものだけど……」
道徳的に、か。考えてもみれば、医療技術の進歩は目覚ましく、過去の人間からみれば恐ろしい、あり得ない方法と感じるものもあるだろう。
細胞を取り出して培養し、切除した部分の代用品としたり、或いは他の生物の臓器を移植する方法だってあるのだという。俺も何となく、そんなやり方で大丈夫なのかと思うことはあった。
それに、この目だって――。
「永射さんと協力していたのは、彼が資金的にも権力的にも力を持っていたからだ。目指す方向も同じだったというし」
「同じ、ですか。そうは思えなかったっすけどね……」
「……まあ、実際のところは分からないよ。しかし……」
そこで双太さんは一度言葉を切り、
「君はやっぱり、永射さんと?」
「最近気になることばっかりだったんで、話はしました。それが、あんなことになるなんて」
「事件の夜、虎牙くんはあそこにいたのかい」
「それは……双太さんが信用できるかによります」
「はは……全くもって、だね」
彼は少しずり落ちた眼鏡の位置を直すと、
「僕は、ここに過ごす人たちのこと、関わってきた人たちのことを大切に考えている。だから、虎牙くんが不利になるようなことは決してしないよ。これまでもそうしてきたし、これからも」
「それを信じるっきゃないですかね」
「できるなら、ね。……うん、僕にとっても守りたいものだ」
直感的にだが、双太さんも貴獅の計画を百パーセントは認めていないように思えた。その全貌をどこまで知っているのかは不明として、どこかの部分で受け入れられない事項があるのかもしれない。
「……永射は、この街を一つの実験場なんて抜かしてた。他にも理解不能なことばっかり並べ立てて、ムカついたってのは本当だ。だけど、俺は永射に危害を加えちゃいない……はずなんだよ。あのとき俺は、異様な頭痛に襲われて……そんな中で永射の方から俺を川へ突き落とそうとしてきて。気付いたときには数時間経っていて、もうそこには誰もいなかったんだ」
「永射さんの方から、か」
「もう一つ言うなら、俺の後頭部には誰かに殴られたようなコブができてた。永射がやったんじゃないなら……あの場には他の誰かがいたってことじゃないかと思ってる」
突き落とされそうになっていたのは間違いなく自分だ。意外にもあの男の力は強く、正常な状態でもやり返せていた自信は無い。
なら、あの場にもう一人いた可能性を考えてもおかしくはないはずだ。
「だから今は、表には出てこずに犯人探しをしてるってわけだね」
「犯人もそうだし、可能ならこの街で起きてることの全貌を知りたい。そんな風に思ってるさ」
犯人が明らかになれば、動機も自動的に導かれるものかもしれない。まあ、何にせよそのどちらもが分かるのなら、そして俺が日常を取り戻せるのならそれでいいのだ。
双太さんはふうむと唸り、
「実際、虎牙くんは永射さんを殺害したのがどういう人か、検討をつけているのかな」
「さあて……結局は電波塔とかまちづくりに起因すると思ってますけど、反対派なのか賛成派なのか。賛成してたって、ある程度力を持つ人間ならそれを奪ってやろうってこともあるじゃないすか。たとえば……まあ、誰とは言いませんけど」
パッと浮かんでくるのが貴獅しかいなかったので伏せたが、双太さんには伝わっているだろう。計画の細かい部分で折り合いがつかず、ならば自分がコントロールできるようにと邪魔者を消した……そんな可能性もなくはなさそうだが。
「研究に関しては、お二人の間でそんなに齟齬はなかったんじゃないかな……僕がそう思っているだけかもしれないけどね」
「双太さんは研究の詳細まで知ってるんですか?」
「いや、僕もそこまでは。新しい解法というのが何を示しているのかは予想するしかないくらいだよ。ただ、電波塔を作ったり、電気設備関係を増強したり……本音を言えば医療の範疇からは少し外れている印象があるけれど」
電子カルテの導入など、医療の分野でもネットワーク技術は必須だと、双太さんもそういう認識かと思っていたのだが違うらしい。新しい解法とは、医療という分野ですらない別アプローチだというのか? そんなもので人を救うことができるのだろうか……。
「お願いします」
診察台の上に寝転ぶよう促され、仰向けになる。そこからは簡単な問診と、特殊な装置を使った異常の検査が進められていく。
普通の医師に求められる技術ではないし、双太さんも相当特殊な知識を詰め込んできたのだろう。並外れた努力によって。
「……双太さんは、この街の事情についてどれくらい知ってるんすか?」
「事情、というと」
「まあ、電波塔計画とか、そもそもまちづくりの方針そのものについてとかっすかね」
「……それを聞くということは、あまり良くないことを耳にしたみたいだね」
一瞬、双太さんの声が震えたように思えた。まさか、知られたからには生かしておけない……なんて言うんじゃないかとほんの僅かだけ焦ったが、決してそういうわけではなかった。彼は悲しげに嘆息を吐いて、
「僕はあくまで下働きの人間だ。色んな経緯があって、貴獅さんとともに医師をやらせてもらっているけれど……僕自身も深入りはできないし、詳しい事情は知らない」
「含みのある言い方っすね。深く知ることが危険だ……みたいな」
「そう言うわけではないよ。ただ、そうだね。僕にも手の届かない分野というか……貴獅さんはこの街を、そこで過ごす人々をモデルケースとして、ハンディキャップを持つ人に対する新しい解法を出そうとしているみたいだ」
「新しい、解法……」
そこでどうしても浮かんできたのは、永射が口にしていたあの奇妙な台詞だった。
――ヒトの、魂魄の新たな在り方を模索しているのですよ。
「間違えないでほしいのだけど、貴獅さんは決して研究者タイプの人じゃあない。あの人が熱心になっている理由は他でもない、満雀ちゃんのためなんだ」
「満雀ちゃんの?」
「うん。あの人が一番治したいと思っているのは、やっぱり満雀ちゃんだからさ」
それを言われると、少し考えを改めたくもなる。あの男とて一人の父親であり、娘は俺たちの親友である満雀ちゃんなのだ。
彼女の笑顔を守ること……それが一番の望みというなら、その気持ちは理解できる。
「満雀ちゃんを救えれば、同じように沢山の人を救える。貴獅さんはそう考えているはずだ。ただ、画期的な方法というのが道徳的に受け入れられるものなのかというのは、常に社会に委ねられるものだけど……」
道徳的に、か。考えてもみれば、医療技術の進歩は目覚ましく、過去の人間からみれば恐ろしい、あり得ない方法と感じるものもあるだろう。
細胞を取り出して培養し、切除した部分の代用品としたり、或いは他の生物の臓器を移植する方法だってあるのだという。俺も何となく、そんなやり方で大丈夫なのかと思うことはあった。
それに、この目だって――。
「永射さんと協力していたのは、彼が資金的にも権力的にも力を持っていたからだ。目指す方向も同じだったというし」
「同じ、ですか。そうは思えなかったっすけどね……」
「……まあ、実際のところは分からないよ。しかし……」
そこで双太さんは一度言葉を切り、
「君はやっぱり、永射さんと?」
「最近気になることばっかりだったんで、話はしました。それが、あんなことになるなんて」
「事件の夜、虎牙くんはあそこにいたのかい」
「それは……双太さんが信用できるかによります」
「はは……全くもって、だね」
彼は少しずり落ちた眼鏡の位置を直すと、
「僕は、ここに過ごす人たちのこと、関わってきた人たちのことを大切に考えている。だから、虎牙くんが不利になるようなことは決してしないよ。これまでもそうしてきたし、これからも」
「それを信じるっきゃないですかね」
「できるなら、ね。……うん、僕にとっても守りたいものだ」
直感的にだが、双太さんも貴獅の計画を百パーセントは認めていないように思えた。その全貌をどこまで知っているのかは不明として、どこかの部分で受け入れられない事項があるのかもしれない。
「……永射は、この街を一つの実験場なんて抜かしてた。他にも理解不能なことばっかり並べ立てて、ムカついたってのは本当だ。だけど、俺は永射に危害を加えちゃいない……はずなんだよ。あのとき俺は、異様な頭痛に襲われて……そんな中で永射の方から俺を川へ突き落とそうとしてきて。気付いたときには数時間経っていて、もうそこには誰もいなかったんだ」
「永射さんの方から、か」
「もう一つ言うなら、俺の後頭部には誰かに殴られたようなコブができてた。永射がやったんじゃないなら……あの場には他の誰かがいたってことじゃないかと思ってる」
突き落とされそうになっていたのは間違いなく自分だ。意外にもあの男の力は強く、正常な状態でもやり返せていた自信は無い。
なら、あの場にもう一人いた可能性を考えてもおかしくはないはずだ。
「だから今は、表には出てこずに犯人探しをしてるってわけだね」
「犯人もそうだし、可能ならこの街で起きてることの全貌を知りたい。そんな風に思ってるさ」
犯人が明らかになれば、動機も自動的に導かれるものかもしれない。まあ、何にせよそのどちらもが分かるのなら、そして俺が日常を取り戻せるのならそれでいいのだ。
双太さんはふうむと唸り、
「実際、虎牙くんは永射さんを殺害したのがどういう人か、検討をつけているのかな」
「さあて……結局は電波塔とかまちづくりに起因すると思ってますけど、反対派なのか賛成派なのか。賛成してたって、ある程度力を持つ人間ならそれを奪ってやろうってこともあるじゃないすか。たとえば……まあ、誰とは言いませんけど」
パッと浮かんでくるのが貴獅しかいなかったので伏せたが、双太さんには伝わっているだろう。計画の細かい部分で折り合いがつかず、ならば自分がコントロールできるようにと邪魔者を消した……そんな可能性もなくはなさそうだが。
「研究に関しては、お二人の間でそんなに齟齬はなかったんじゃないかな……僕がそう思っているだけかもしれないけどね」
「双太さんは研究の詳細まで知ってるんですか?」
「いや、僕もそこまでは。新しい解法というのが何を示しているのかは予想するしかないくらいだよ。ただ、電波塔を作ったり、電気設備関係を増強したり……本音を言えば医療の範疇からは少し外れている印象があるけれど」
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