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Sixth Chapter...7/24

闇の中の尾行

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 まあ、最終回も残念な会となったようだが、俺が気にすべきはそこではない。永射には心の中でご愁傷様と呟きつつ、すぐに行動を開始する。
 追跡……今の俺がなすべきことは、奴の正体を見極めることだ。
 人の気配が減ってきたところで集会場を出る。永射は相変わらず護衛も付けずに一人で行動していた。普通ならこのまま自宅へ帰るのだろうが、昨日電話で話していた通り、どこかへ向かうようだ。
 元々の不利さもあり、俺は距離感に苦心しつつも奴を追う。……鼻先に冷たいものが当たり、雨が降り始めていることに気付いたが、無視するしかなかった。
 永射は住民たちが帰っていくのとは逆方向……つまり北側の森へと足を運んでいた。
 密会するための例の場所とは、まさか森の中だというのか? もしそうなら、場所だけでも怪しさ満点だ。
 永射は悪路にも関わらず、軽い足取りでどんどん進んでいく。俺の方は、足音を立てないよう注意しながらなので差は広がるばかりだった。ギリギリ視界にはその点を捉えられているが、もう少し離れてしまったら……という焦りが付き纏う、苦しい追跡。
 ひたすら山道を登っていく永射。しかし、こちらを道なりに進んで辿り着くのは電波塔か観測所くらいだ。密会場所が電波塔の下というのはまあ、奴の計画からすればあり得なくはないが、観測所は流石にないだろう。あそこには、変人と言ってもいいような研究員が一人いるだけだ。
 ……八木優。もしもあの人が密会相手だったら驚きだが、まあ可能性は低いと思う。彼は何というか、純粋にやりたいことをやりながら、のんびり生きているような人間なのだし。それが永射やGHOSTとはどうにも結び付かなかった。
 永射はどこまでも登っていく。ただ、方向は少し西へ逸れているようだ。整備された道は無くなっていき、次第に獣道に近くなる。やはり観測所ではないらしい。
 このまま行けば……道はないが、恐らく鬼封じの池かその上流辺りに辿り着くはず……。

 ――あれ?

 少しばかり考え事に意識を割いていただけなのに、永射の気配が無くなる。……いや、当然と言えば当然なのだ。こんな獣道に入っているのだから。もう少し注意深く追っていればよかったが、後悔しても遅い。雑草が踏み倒されている感覚を頼りに、進んでいくしかなさそうだ。
 雨は少しずつ強まっていく。髪が濡れ、額に張り付くのが分かった。雫が目に入るのを拭いながら、前へ進む。最早雑草を掻き分ける音は消せそうもない。
 どこまで奥へ行けば……そう思っていると、ようやく獣道が終わり、少し開けた場所に辿り着いたようだった。
 先には川が流れ、相当に古いが木の柵も立てられている。ここはちょうど鬼封じの池の上流で、街の人がたまに釣りをしに来るというのは聞いたことがあった。
 地面と川の境目は少しだけ落差があり、もしも落ちたら俺などでは上がって来れなさそうだ。だとすれば鬼封じの池まで下らないといけないだろうが、あちらはあちらで水質も悪そうだし、底なし沼のように抜け出せなくなって……という嫌な想像もしてしまう。
 ……とにかく、今は永射だ。
 昨日の電話からして、ここで誰かと待ち合わせをしているはずだ。直接会って話すのでなければ、その電話で完結していいはずなのだから。例えば、牛牧さんがオヤジの製品を見にくるように、現物を見なければいけないような事情でもあるとかか。
 周囲をゆっくりと見回す。暗い上に雨が鬱陶しくて中々世界がハッキリしない。本当にこの目は煩わしく、しかし視えているだけでも奇跡というほかないのが辛い。

 ――いた。

 永射は川縁、それもそれなりに高低差のある場所にいた。釣りをするならベストスポットなのだろうが、木柵はもたれかかったら折れてしまいそうだし危ない場所だ。
 雨が降り始めていることもあるし、俺だったらあんなところには絶対行きたくないな。
 それにしても、待ち合わせの相手はいつ来るのだろう。永射も傘を差していないし、長時間話すつもりはないように思える。他に人の気配は今のところしないが、果たしてどこからやって来るのか。背後から来て、俺の存在がバレてしまうのが一番怖い……。
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