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最終部【伍横町幻想 ―Until the day we meet again―】

二十三話 「メイさんの遺したもの」

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 音楽室に到着した二人は、早速室内の探索を始めた。
 しかし、彼女がいつも座っていたピアノをはじめ、生徒用のオルガン付近にも黒板やゴミ箱にも、それらしきものは何もなかった。
 十分ほどは探しただろうか。あまり物音を立てすぎると、校内を徘徊する悪霊たちに気付かれることもあり、二人は神経をすり減らしてしまっていた。

「……ふう。どこにあるやら」
「えっと、ミオさん。向こうに音楽準備室もあるんですけど」
「ああ……楽器をしまってるところかな? 物が多いなら、そっちの可能性もあるね」

 ミイナの提案に乗り、二人は音楽準備室へ移動して、また探索を始めることにした。

「クラブ活動で使われる楽器なんかも、ここにあるんだね」
「はい。私もちょっと、吹奏楽部には憧れたりもしたんですが」
「へえ……似合うと思うけど」
「そ、そうですか?」

 ミオと話していると、ミイナはいつの間にか手が止まっているのに気付く。ついつい集中が探索から会話に移ってしまっているのだ。
 せっかくだから、もう少しミオと話したい。そう思うのは、単に心細いからなのか、それとも。
 ミイナは自分が不思議な気持ちになっているのを感じていた。

「……お、これかな」

 ミイナがドギマギしているのをよそに、ミオはピアノの蓋の裏に封筒が貼り付けられているのを発見する。
 封筒から中身を取り出してみると、そこには丸っこい文字がびっしりと書かれた便箋が入っていた。

「これが、メイさんの遺したもの……なんでしょうね」
「うん、だと思う」

 果たしてメイは、この便箋にどんな情報を記したのか。
 二人は仲良く隣に並び、メイの文章を目で追っていった。

「最初の方は、風見照と波出守……それに犬飼真美が埋葬された墓地の名称が書かれてるね」
「三人とも、同じ墓地に埋葬されているみたいですね」
「まだ分かっていなかったことだから、この情報はありがたい。ドールを止めさえすればいいかと思っていたけど、実際どうなるか分からないし」

 霊空間の暴走を抑えなければならない状況に陥る可能性がないともいえない。それに、風見照と波出守の魂を浄化出来れば、二人から直接過去の事件の真相を聞くことも叶うのだ。
 選択肢として、二人の魂を元に戻すというのは視野に入れておくべきだろう。

「……二枚目がありますけど、それは?」
「あ、本当だ」

 便箋は一枚で終わりではなかった。テラスたちが眠る墓地の情報の先にも、彼女が書き遺した文は続いている。
 ……そこには。

「……え?」

 二枚目の内容を半分ほど読んだところで、ミオは衝撃の事実に突き当たった。
 これまでの考えを根本からひっくり返されるような……過去の真実に。

「そうか。だから三人だったんだ……」
「な、何が書かれてるんです……!?」

 ミイナは、ミオがしっかりと便箋を掴んでしまっていたので内容を読み取れず、気になって問いかける。
 そこでミオはハッと気付いて、

「……ご、ごめん。ミイナちゃんも読んでみて」

 謝りながら、ミイナに便箋を渡した。

「ここに、仁行通――つまりドールという存在について、書かれているから……」
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