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第三部【流刻園幻想 ―Omnia fert aetas―】

序章① 学園

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 流刻園りゅうこくえんという名称で、伍横町の若者たちがまず連想するのは『七不思議』だった。
 伍横町の東部に所在するその高校は、七不思議が存在することで有名だったのである。
 全国を探せば、学校の七不思議などは様々なところで存在するだろうが、流刻園は少し事情が違う。
 流刻園の七不思議は、実際の事件を基に噂が広まったものが多いからだ。
 校長先生の娘が亡くなったり。
 校内で首を吊って自殺した生徒がいたり。
 そうした負の事件が人から人へ伝達されるうちに歪んでいき。
 やがては七不思議の一つへと変貌してしまったものもあった。
 だから、生徒たちは時折口にする。
 この学園は――呪われているかもしれないと。
 もしかしたらこれからもまた。
 七不思議の仲間入りをするような事件が、悲劇が……突然に引き起こされるのかもしれない、と。

 ……そして。
 黄昏の中、学園の運動場に、一人の人影。
 ふらり、ふらりとした足取りで玄関口を目指す男。
 生徒でもなく、教員でもなく。
 本来いるべきでない男が、一つの目的を持って歩き続けていた。
 男は、歯を食い縛る。
 銀色に光るそれを掴んだ手を、強く握り込む。
 流刻園。
 運命の場所。
 茜色に染まるその校舎を見上げた男は、頑なな決意を胸に秘めていた。

 ……、と。
 
 遠雷が、町に轟いた。
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