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第二部【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】

二十五話 降霊術の誘い②(現実世界)

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「……ごめん。気持ちは分かるけど、私には教えられない」

 昼下がりの喫茶店。
 なるべく人気のない端のテーブルで、僕とハルナちゃんは話していた。
 誘ったのは僕だ。どうしても彼女の知識を頼りたくて、いつでもいいからと呼びつけた。
 事件があり、しばらく大学を休んでいたからか、ハルナちゃんも心配してすぐに来てくれたのだった。
 ……けれど。

「あれがどんな恐ろしい結果を招くか、私にはある程度分かってるしさ。だから……ミオくんを危ない目に遭わせたくないんだよ」

 僕の頼みは頑なに聞き入れてくれなかった。
 いつも朗らかなハルナちゃんからは想像もできない、それは強い拒絶だった。

「……ハルナちゃん」

 分かっている。霧夏邸幻想と呼ばれたあの事件については、町内でしばらく噂になっていたくらいだから詳細は覚えている。
 屋敷に忍び込んだ少年少女七人の内、四人もの死者が出た痛ましい事件。
 表向きは一人の少年による連続殺人となっている事件。

「降霊術は、悲劇しか呼ばない。命を呼び戻すことが、良い方向に進むとは思わない」

 その瞳の奥には、とても暗い淀みがあった。
 友人たちの惨たらしい最期を目にしてきた、哀しみがあった。

「……じゃあ、僕はこれから何を頼りに生きていけばいいって言うの? 僕にはもう何も残されてない。大事な人が死んで、僕はもう空っぽなんだ」

 たとえ僕の人生がこの先、良き方向に進まないとしても。
 それでもいいから一目会いたい。一言喋りたい。
 そんな思いが張り裂けそうで。
 歯止めが利かなくなった僕は、心の奥の黒い部分を曝け出してしまう。

「残っているのは、あいつへの……ケイへの復讐の気持ちくらいしか――」
「復讐なんてしちゃダメだよッ!」

 復讐という言葉を吐き出した瞬間、ハルナちゃんは弾かれたように立ち上がり、声を上げた。

「あ――ごめんね……」

 驚く僕に、ハルナちゃんは気まずそうに謝ったあと、ゆっくりと座り直した。
 ……復讐。その言葉に、彼女は何らかのトラウマがあるようで。

「ミオくんの悲しみ、苦しみは本当に分かる。でも、復讐なんてしても……いいことはないよ、絶対」

 ふう、と一つ溜め息を吐いて。

「……何を頼りに、か。それはこれから見つけていくしかないだろうけどね……」

 彼女はもう冷たくなった紅茶を一口、啜った。
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