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第二部【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】
十五話 抜け落ちた最後(記憶世界)
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「……ねえ、アキノ?」
「なに、お姉ちゃん」
呼び名がエオスからアキノに変わって。
アキノからの呼び名もお姉ちゃんに変わったくすぐったさを感じながら、私たちは話していた。
「アキノはどうしてあの日……階段から転落してしまったの? 不慮の事故だと結論付けられたけど、私には信じられなかったから……」
ずっと気になっていたことだ。警察も呼ばれ、検証はなされたものの、結局は事故と片付けられてしまった一件。
それが私たち姉妹の運命を大きく変えることになった。
釈然としないまま、この歳になるまで生きてはきたものの、さっき頭に浮かんできた光景が再び疑惑を強めた。
誰かに突き落とされるような恰好で踊り場から階下へ落ちていく、アキノの姿……。
「……私にも、事故だったのかよく分からないんだ。答えられなくてごめんね、お姉ちゃん」
「……そっか」
彼女はそう答えるものの、背中を押される感触くらいはあったはずだ。
あの光景に犯人の姿は無かったが……自分からあんな体勢で落ちることは、ほぼ確実にないと言ってもいい。
まあ、彼女が確信を持てないのなら、ここで無理に追及はしないけれど。
「えっと、あともう一つだけ聞きたいことがあるんだけど。私、肝心なことも忘れちゃってるからさ」
「肝心なこと?」
「私がこうなってしまった原因だよ。どうして私は、生死の境を彷徨うことになっちゃったんだろうって……」
家族のこと、知人のことについてはこの探索の中で取り戻せてきた。
しかし、最後の記憶――私が何故死に瀕してしまったのかという記憶は未だ明らかにならない。
仮に病気だったなら期間も長そうだし、記憶に深く刻まれていてもいいはずだ。
そうではないことから、事故や事件に巻き込まれたという可能性が高いと睨んでいるのだが……。
「それは、もうすぐ思い出せるはずだよ」
私から目を逸らしながら、アキノは答える。
「欠け落ちた記憶の全ては、必ず散らばってる。だから、私が言おうと言うまいと、いずれはちゃんと戻ってくるんだ」
そう。事態は受け止めているし、彼女が答えるつもりがないこともまた分かっている。
でも……答えない理由に、どこか後ろめたいものがあるような気がしたのだ。
だって――彼女は私の目を見ない。
「お姉ちゃん……悲しまないでね」
「え……?」
悲しまないで。
やっとのことで絞り出したその言葉が、意味するものは何なのだろう?
まだ、アキノの横顔は髪に隠れて見えない。
どんな表情を浮かべているのかが、分からない。
「覚悟は……しておくよ」
「お願い」
小さく呟いて、アキノはふらりと、前へ進んでいく。
「さあ、お守りも手に入れてくれたし……また先へ進もうか」
「ん……そうしようか」
取り戻したい答えは近いのかもしれない。
私はふいに、そんな予感がしたのだった。
「なに、お姉ちゃん」
呼び名がエオスからアキノに変わって。
アキノからの呼び名もお姉ちゃんに変わったくすぐったさを感じながら、私たちは話していた。
「アキノはどうしてあの日……階段から転落してしまったの? 不慮の事故だと結論付けられたけど、私には信じられなかったから……」
ずっと気になっていたことだ。警察も呼ばれ、検証はなされたものの、結局は事故と片付けられてしまった一件。
それが私たち姉妹の運命を大きく変えることになった。
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誰かに突き落とされるような恰好で踊り場から階下へ落ちていく、アキノの姿……。
「……私にも、事故だったのかよく分からないんだ。答えられなくてごめんね、お姉ちゃん」
「……そっか」
彼女はそう答えるものの、背中を押される感触くらいはあったはずだ。
あの光景に犯人の姿は無かったが……自分からあんな体勢で落ちることは、ほぼ確実にないと言ってもいい。
まあ、彼女が確信を持てないのなら、ここで無理に追及はしないけれど。
「えっと、あともう一つだけ聞きたいことがあるんだけど。私、肝心なことも忘れちゃってるからさ」
「肝心なこと?」
「私がこうなってしまった原因だよ。どうして私は、生死の境を彷徨うことになっちゃったんだろうって……」
家族のこと、知人のことについてはこの探索の中で取り戻せてきた。
しかし、最後の記憶――私が何故死に瀕してしまったのかという記憶は未だ明らかにならない。
仮に病気だったなら期間も長そうだし、記憶に深く刻まれていてもいいはずだ。
そうではないことから、事故や事件に巻き込まれたという可能性が高いと睨んでいるのだが……。
「それは、もうすぐ思い出せるはずだよ」
私から目を逸らしながら、アキノは答える。
「欠け落ちた記憶の全ては、必ず散らばってる。だから、私が言おうと言うまいと、いずれはちゃんと戻ってくるんだ」
そう。事態は受け止めているし、彼女が答えるつもりがないこともまた分かっている。
でも……答えない理由に、どこか後ろめたいものがあるような気がしたのだ。
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どんな表情を浮かべているのかが、分からない。
「覚悟は……しておくよ」
「お願い」
小さく呟いて、アキノはふらりと、前へ進んでいく。
「さあ、お守りも手に入れてくれたし……また先へ進もうか」
「ん……そうしようか」
取り戻したい答えは近いのかもしれない。
私はふいに、そんな予感がしたのだった。
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