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第二部【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】

十話 視線の問題(記憶世界)

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「さて……この部屋はどんな仕掛けなんだろ」

 気持ちを切り替え、私は部屋の全体を見回した。
 ここもまた、奇妙な部屋だ。
 床や壁の欠落は当然のことながら、特徴的なのは部屋の中央に銅像が置かれてあること。
 その銅像の周囲は完全に床が無くなっていて、近づくことができなくなっている。
 つまり、銅像は浮遊する床の上にあるわけだが……非現実的な光景過ぎる。

「変てこだなあ」

 銅像は、部屋の四隅にもあった。壁にはひっついていないが、ちょうど中央の像と同じ線上に置かれている。
 像は全て幼い子供を模したものであり、中央の像はその容姿に見覚えがあった。
 ……いや、見覚えがあるどころか、それは……。
 ふと、エオスを見やる。彼女は浮かない顔をしていた。
 それは、彼女の油断だったのかもしれない。

「どうしたの?」

 私が問うと、彼女はドキリとして肩を震わせた。

「いえ……何でも」
「そっか……どうすれば、いいんだろうね」

 当然ながら、エオスは教えられないと首を振った。
 自分で考えて行動するしかない。
 中央の像には触れられないので、必然的に調べるなら四隅の像になりそうだ。
 他にも机やタンスなどの家具はあるが、まずは目立っている像から調べようと考えた。

「……ん」

 像に触れてみると、ひんやり冷たい。
 こちらの像は、ほとんど特徴のない顔つきをしていた。
 動くかどうか試してみるが、前に進んだりはしない。
 ただ、力を入れると僅かに向きが変わった。

「……回るんだ?」

 どうやらこの銅像は回転するらしい。
 中央の像と同一線上に設置されていることを考えると……ある程度の予想がつく。
 この像の向きを、全て中央の像を見るように変えてやればいいのだ。

「よしっ」

 四つすべての銅像を動かすというのは中々骨の折れる作業だったが、私はきびきび働いた。
 一つを回転させ終えると、すぐに次の像へ。大体三分くらいで一連の作業は終わった。
 最後の像を中央へ向けたとき、何かが起きるんじゃないかと身構えた。……しかし、部屋は特に何の変化もない。
 分からないくらい小さな変化かな、とも思ったけれど、エオスも黙り込んだままだし、恐らくこれは正解ではないのだろう。
 像にギミックがある以上、やることは間違えていないはずだが……。
 そこまで考えて、私は別の答えを思いついた。
 ただ、それが正解なのは感情的に受け付けないのだけれど。

「……やってみるしかないか」

 とにかく、今の私は思いつくことをやっていくしかないのだ。
 そう自分に言い聞かせ、また作業を開始した。
 中央の像を向かせた銅像を、全て反対向きにしていく。
 四つの像全てが、中央の像に背を向けるように。
 そして四つ目の像を動かした瞬間、部屋に強烈な光が生じて、欠落していた床の一部が出現し、その向こうに扉も現れたのだった。
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