31 / 86
Sixth Chapter...7/24
おつかい再び
しおりを挟む
この日の試験も、私は無難に片付けた。埋められない部分は無かったし、中々高得点を期待できるはずだ。
玄人と満雀ちゃんも手応えありで、ダメダメなのは虎牙だけのようだった。
まあ、お決まりの展開だ。
試験の感想は早々に終わらせて、私たちはこの日もゲームに興じた。
オーソドックスなモノポリーゲームは、この日も満雀ちゃんが活躍し、勝利を収める。というか、私と虎牙がぶつかり合ってばかりなせいで、玄人と満雀ちゃんが楽にゲームを展開していけたという次第だが。
ちなみに玄人は単純に運がなかった。
ゲームが終わり、双太さんも帰ってきて。雨が降り出す前に帰ろうという流れになったので、私たちは片付けを始めた。手際良くゲーム盤をしまいこんでいると、
「そうそう、今日は永射さんの説明会があるみたいだけど……皆は行くのかな?」
双太さんが訊ねてくる。
「私と玄人は行くことになってるわ。虎牙は?」
「俺は多分行かねえ。オヤジが行かないっぽいしな」
「佐曽利さんか。まあ、あの人はそういうことに興味がなさそうだ」
虎牙の保護者である佐曽利さん。寡黙なタイプなので、私はあまり話したことがないのだけれど、双太さんはあの人と親しいのだろうか。まあ、生徒の親ならば懇談とかで話す機会もあるし、これだけ人口の少ない街だから、都会より接点が増えるのは自然なことか。
「病院で働いてる都合もあって、僕は行かないといけないから。まあ、聞いててもつまらない内容かもしれないけれど、また夜にね」
双太さんの言葉を受けて、玄人に忠告する意味合いも込め、
「寝ないように頑張るわ」
私は素っ気なく言う。よっぽど退屈な話なんだろうと悟った玄人は、
「そ、そうだね」
と、苦笑いを浮かべながら答えるのだった。
「じゃ、ひとまずこれで解散ね。帰りましょ」
「うん。また明日ね、みんな」
「おう。満雀はのんびりしてろよ。どうせ下らねえ会だ」
「あはは、辛辣だね……」
実際、私たちのような子どもにとっては下らないと思ってしまう会だ。大人になって、電波塔のありがたさを実感するときは来るかもしれないが、そのときはもう、説明会のことなんてきっと覚えていないだろう。
とりあえず、今日は少しの間我慢しよう。それくらいに思いながら、私たちはそれぞれの帰路につくのだった。
*
学校から帰宅し、簡単に試験の出来を報告してから昼食をとった。夏の暑さのせいもあり、この日はさっぱりした素麺だった。
さっさと完食し、部屋に戻って休もうかというところで、お母さんが声をかけてくる。こういう場合は大抵、何かお願いがあるときなのだ。
予想に違わず、お母さんは私に買い物を頼んできた。
「ちょっと説明会のことで、ご近所の人に呼ばれててねえ……龍美なら、千代さんもまけてくれそうだし」
都会時代に貯め込んだお金があるのだし、値引きなんて気にしていないだろう。お父さんは勿論買い物になんか行かないだろうし、仕方ない。行ってあげるとしますか。
毎度のようにお釣りは貰える筈だし、ついでだからムーンスパローの改良に必要な部品も漁ってみることにしよう。
しばらく自室に引きこもり、ネットでアマチュア無線家のサイトを閲覧して、どんな部品があれば精度が良くなるかを確認する。ムーンスパローに足りていなさそうなものと合致する部品があれば、それを買ってアップグレードしなくては。
十分ほどのネットサーフィンで、手頃かつメジャーな部品を発見できた。もしも秤屋商店に売っていたなら、買い物がてら一緒に購入することにしよう。
時刻が二時になろうかというところで、私はお母さんからお金と買い物リストを受け取って家を出た。
玄人と満雀ちゃんも手応えありで、ダメダメなのは虎牙だけのようだった。
まあ、お決まりの展開だ。
試験の感想は早々に終わらせて、私たちはこの日もゲームに興じた。
オーソドックスなモノポリーゲームは、この日も満雀ちゃんが活躍し、勝利を収める。というか、私と虎牙がぶつかり合ってばかりなせいで、玄人と満雀ちゃんが楽にゲームを展開していけたという次第だが。
ちなみに玄人は単純に運がなかった。
ゲームが終わり、双太さんも帰ってきて。雨が降り出す前に帰ろうという流れになったので、私たちは片付けを始めた。手際良くゲーム盤をしまいこんでいると、
「そうそう、今日は永射さんの説明会があるみたいだけど……皆は行くのかな?」
双太さんが訊ねてくる。
「私と玄人は行くことになってるわ。虎牙は?」
「俺は多分行かねえ。オヤジが行かないっぽいしな」
「佐曽利さんか。まあ、あの人はそういうことに興味がなさそうだ」
虎牙の保護者である佐曽利さん。寡黙なタイプなので、私はあまり話したことがないのだけれど、双太さんはあの人と親しいのだろうか。まあ、生徒の親ならば懇談とかで話す機会もあるし、これだけ人口の少ない街だから、都会より接点が増えるのは自然なことか。
「病院で働いてる都合もあって、僕は行かないといけないから。まあ、聞いててもつまらない内容かもしれないけれど、また夜にね」
双太さんの言葉を受けて、玄人に忠告する意味合いも込め、
「寝ないように頑張るわ」
私は素っ気なく言う。よっぽど退屈な話なんだろうと悟った玄人は、
「そ、そうだね」
と、苦笑いを浮かべながら答えるのだった。
「じゃ、ひとまずこれで解散ね。帰りましょ」
「うん。また明日ね、みんな」
「おう。満雀はのんびりしてろよ。どうせ下らねえ会だ」
「あはは、辛辣だね……」
実際、私たちのような子どもにとっては下らないと思ってしまう会だ。大人になって、電波塔のありがたさを実感するときは来るかもしれないが、そのときはもう、説明会のことなんてきっと覚えていないだろう。
とりあえず、今日は少しの間我慢しよう。それくらいに思いながら、私たちはそれぞれの帰路につくのだった。
*
学校から帰宅し、簡単に試験の出来を報告してから昼食をとった。夏の暑さのせいもあり、この日はさっぱりした素麺だった。
さっさと完食し、部屋に戻って休もうかというところで、お母さんが声をかけてくる。こういう場合は大抵、何かお願いがあるときなのだ。
予想に違わず、お母さんは私に買い物を頼んできた。
「ちょっと説明会のことで、ご近所の人に呼ばれててねえ……龍美なら、千代さんもまけてくれそうだし」
都会時代に貯め込んだお金があるのだし、値引きなんて気にしていないだろう。お父さんは勿論買い物になんか行かないだろうし、仕方ない。行ってあげるとしますか。
毎度のようにお釣りは貰える筈だし、ついでだからムーンスパローの改良に必要な部品も漁ってみることにしよう。
しばらく自室に引きこもり、ネットでアマチュア無線家のサイトを閲覧して、どんな部品があれば精度が良くなるかを確認する。ムーンスパローに足りていなさそうなものと合致する部品があれば、それを買ってアップグレードしなくては。
十分ほどのネットサーフィンで、手頃かつメジャーな部品を発見できた。もしも秤屋商店に売っていたなら、買い物がてら一緒に購入することにしよう。
時刻が二時になろうかというところで、私はお母さんからお金と買い物リストを受け取って家を出た。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【恋愛ミステリ】エンケージ! ーChildren in the bird cageー
至堂文斗
ライト文芸
【完結済】
野生の鳥が多く生息する山奥の村、鴇村(ときむら)には、鳥に関する言い伝えがいくつか存在していた。
――つがいのトキを目にした恋人たちは、必ず結ばれる。
そんな恋愛を絡めた伝承は当たり前のように知られていて、村の少年少女たちは憧れを抱き。
――人は、死んだら鳥になる。
そんな死後の世界についての伝承もあり、鳥になって大空へ飛び立てるのだと信じる者も少なくなかった。
六月三日から始まる、この一週間の物語は。
そんな伝承に思いを馳せ、そして運命を狂わされていく、二組の少年少女たちと。
彼らの仲間たちや家族が紡ぎだす、甘く、優しく……そしてときには苦い。そんなお話。
※自作ADVの加筆修正版ノベライズとなります。
表紙は以下のフリー素材、フリーフォントをお借りしております。
http://sozai-natural.seesaa.net/category/10768587-1.html
http://www.fontna.com/blog/1706/
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
この満ち足りた匣庭の中で 三章―Ghost of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
幾度繰り返そうとも、匣庭は――。
『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。
その裏では、医療センターによる謎めいた計画『WAWプログラム』が粛々と進行し、そして避け得ぬ惨劇が街を襲った。
舞台は繰り返す。
三度、二週間の物語は幕を開け、定められた終焉へと砂時計の砂は落ちていく。
変わらない世界の中で、真実を知悉する者は誰か。この世界の意図とは何か。
科学研究所、GHOST、ゴーレム計画。
人工地震、マイクロチップ、レッドアウト。
信号領域、残留思念、ブレイン・マシン・インターフェース……。
鬼の祟りに隠れ、暗躍する機関の影。
手遅れの中にある私たちの日々がほら――また、始まった。
出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
蠍の舌─アル・ギーラ─
希彗まゆ
ミステリー
……三十九。三十八、三十七
結珂の通う高校で、人が殺された。
もしかしたら、自分の大事な友だちが関わっているかもしれない。
調べていくうちに、やがて結珂は哀しい真実を知ることになる──。
双子の因縁の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる