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序章 ワタル七日目

夕暮

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 ……そのときの空は、胸が痛くなる程に綺麗な茜色をしていた。
 目を背けたくなるようで、けれどその赤から目を離せなくなる、そんな空の色。
 一つの終わりを感じさせるような、緩やかに沈んでいく色。

 ……荒い息遣い。それは、俺と彼女のもの。
 疲れきった体を寄り添わせて、俺たちは木の幹に背を預けていた。
 彼女は眠っている。それまでの全てを、せめて今一度だけでも忘れようと。
 そして俺も、ほんの少しくらいなら……。

 ――つがいのトキを目にした恋人たちは、必ず結ばれる。
 そんな言い伝えが、この村にはあった。
 鴇村ときむらと名がついたこの小さな村で、ずっと昔から語り継がれてきた不思議な伝承。
 その伝承に、何の根拠もあるわけではないけれど。

 あの日見た光景だけは、いつまでも信じていたい。
 あの日刻んだ言葉だけは、いつまでも信じていたい。
 その思いは、俺も彼女も、同じであるはずだ。
 だから、俺たちはきっと。

 ……真っ赤な空に飛び立っていくトキたちを見つめながら、俺は思う。

 いつまでも、
 いつまでも、共に生きていこうと。

 ……ツバサ。
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