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20倍サイズのメイドが管理する地区にて
マイペースな銀髪少女 4
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「希望が見えてきたらお腹が空きました! それ一緒に食べましょう!」
銀髪少女はわたしが手に持っている、ダコタおばさんからもらったりんごを指差したかと思うと、「先にいただきますね!」と言って、嬉しそうにりんごを齧り始めた。一応わたしがもらったりんごなのに、彼女が先に口をつける。別に初めから一緒に分けるつもりだったから良いのだけれど、かなりのマイペースさに苦笑いをしてしまった。背が高くて麗しくて大人っぽいのに、言動はかなり子どもっぽい子だな、と思ってしまった。
わたしは嬉しそうにりんごを齧る銀髪少女を見つめて、大事なことに気がついた。そういえば、この子の名前まだ聞いていない。
「ねえ、ところであなた名前は何ていうの?」
「知らない人に名前を名乗っちゃダメだって、ママとパパから言われてるから、言えないです」
尋ねたのに、すぐには教えてくれない態度にちょっとムッとした。
「知らない人とりんごを分けちゃダメっていうルールはなかったの?」
「え、じゃあこのりんごは、わたしが一人で食べないといけないんですか?」
確かにわたしの意見では、すでに銀髪少女がりんごを一口齧ってしまっているから、分けないのならば彼女のものになってしまうか。皮肉ったつもりなのに、逆に言い負かされてしまったみたい。天然なのか、頭が回る子なのかはわからないけれど、侮ってはいけない子であることは理解した。
「一緒にりんごを分け合うくらいの仲なら、もう知ってる人ってことで良いでしょ? 名前わからないと不便だし、めんどくさいから、さっさと教えてよ」
銀髪少女が少し考えてから頷いた。
「そうですね。わたしたちはお友達ですから、良いですよ」
案外素直で可愛らしい反応だった。
「わたしはパメラと言います。パピプペポのパに、マミムメモのメに、ラリルレロのラでパメラです」
「別にそこまで丁寧に説明しなくてもわかるけれど……」
わたしはりんごを齧り続ける彼女を見ながら続ける。
「わたしはサーシャ。元々森の奥に住んでたけれど、半年前くらいからあのメイドに捕まってここで働かされてるの」
「わたしも半年ほど前からなので、同じくらいの時期ですね。同期生です」
同期生なんて、そんな平和な表現で良いのだろうかと気になりはしたけれど、それよりもシャクシャクと瑞々しい音を立てて彼女の口の中に運ばれていくりんごがどんどん減っていくから、そちらの方が気になってしまった。わたしは慌てて彼女の手を止める。
「ねえ、ちゃんと半分残しておいてよ?」
パメラが大きく頷いた。すでに半分以上食べてしまっているのだけれど、大丈夫かな。頷いてくれたのに、パメラがなぜかもう一口食べてしまおうとしていたので、わたしは慌てて止めた。
「そろそろわたしにも食べさせて欲しいんだけど……!」
「外側はわたし、内側はサーシャさん。それじゃダメですか?」
「内側って、芯と種ばっかりなんだけど」
「ダメですか?」
「なんで良いと思うの……」
「種を植えたらリンゴの木が実って、いっぱい食べられますよ」
「猿かに合戦じゃないんだから………」
わたしは首を横に振ってため息をついたら、渋々芯と種を除いて残り3分の1程になっている、綺麗な歯形のついたりんごを譲ってくれた。
「これ食べたらもう寝ようね」
リンゴを齧ると、瑞々しい味がした。疲れて乾き切っていた体が芯から潤っていくような気分になる。
「美味しいな……」
思わず声に出すと、パメラの視線を感じる。指を咥えてもの欲しそうにこちらを見ている。
「さ、さっきいっぱい食べてたでしょ?」
「だって、サーシャさんがあまりにも美味しそうに食べてますから……」
ジトーっと見つめられて、わたしはソッとパメラの前にリンゴを差し出した。
「一口だけだからね?」
「ありがとうございます!」
そう言って、パメラが一口齧って両手で頬を抑えた。
「やっぱり美味しすぎますね、これ!」
「なら良かったよ」とわたしが適当に返事をしてから、パメラが「そうでした!」と大きな声を出す。
「いきなりどうしたのさ?」
「わたし、美味しいものが食べたいです!」
「え?」
いきなり何の宣言だろう。
「平和な世界になったらやりたいことです! パイやタルト、ケーキみたいな美味しいものを好きなだけ食べたいです!」
「パイ? タルト? ケーキ? 何それ? 食べ物の名前なの?」
聞いたことのない単語がズラリと口にされている。わたしが尋ねると、パメラが首を傾げた。
「知らないのですか?」
「うん」
「……なら、平和な世界になったらわたしが思う存分、メイドに作らせて、サーシャさんに振る舞いますね!」
「メイドって、無理でしょ」
あの巨大な意地悪メイドさんたちがわたし達のために食事を作ってくれるなんて、絶対に無理だと思うけど……。
「大丈夫ですよ! うちには秘伝のレシピ本がありますから!」
レシピ本とか、そう言う問題じゃ無い気がするけど……。でも、これ以上この話題を続けるのも面倒なので、話を終わらせる。
「た、楽しみにしとくね」
わたしが曖昧に笑ったら、パメラが満足そうに頷いたのだった。
銀髪少女はわたしが手に持っている、ダコタおばさんからもらったりんごを指差したかと思うと、「先にいただきますね!」と言って、嬉しそうにりんごを齧り始めた。一応わたしがもらったりんごなのに、彼女が先に口をつける。別に初めから一緒に分けるつもりだったから良いのだけれど、かなりのマイペースさに苦笑いをしてしまった。背が高くて麗しくて大人っぽいのに、言動はかなり子どもっぽい子だな、と思ってしまった。
わたしは嬉しそうにりんごを齧る銀髪少女を見つめて、大事なことに気がついた。そういえば、この子の名前まだ聞いていない。
「ねえ、ところであなた名前は何ていうの?」
「知らない人に名前を名乗っちゃダメだって、ママとパパから言われてるから、言えないです」
尋ねたのに、すぐには教えてくれない態度にちょっとムッとした。
「知らない人とりんごを分けちゃダメっていうルールはなかったの?」
「え、じゃあこのりんごは、わたしが一人で食べないといけないんですか?」
確かにわたしの意見では、すでに銀髪少女がりんごを一口齧ってしまっているから、分けないのならば彼女のものになってしまうか。皮肉ったつもりなのに、逆に言い負かされてしまったみたい。天然なのか、頭が回る子なのかはわからないけれど、侮ってはいけない子であることは理解した。
「一緒にりんごを分け合うくらいの仲なら、もう知ってる人ってことで良いでしょ? 名前わからないと不便だし、めんどくさいから、さっさと教えてよ」
銀髪少女が少し考えてから頷いた。
「そうですね。わたしたちはお友達ですから、良いですよ」
案外素直で可愛らしい反応だった。
「わたしはパメラと言います。パピプペポのパに、マミムメモのメに、ラリルレロのラでパメラです」
「別にそこまで丁寧に説明しなくてもわかるけれど……」
わたしはりんごを齧り続ける彼女を見ながら続ける。
「わたしはサーシャ。元々森の奥に住んでたけれど、半年前くらいからあのメイドに捕まってここで働かされてるの」
「わたしも半年ほど前からなので、同じくらいの時期ですね。同期生です」
同期生なんて、そんな平和な表現で良いのだろうかと気になりはしたけれど、それよりもシャクシャクと瑞々しい音を立てて彼女の口の中に運ばれていくりんごがどんどん減っていくから、そちらの方が気になってしまった。わたしは慌てて彼女の手を止める。
「ねえ、ちゃんと半分残しておいてよ?」
パメラが大きく頷いた。すでに半分以上食べてしまっているのだけれど、大丈夫かな。頷いてくれたのに、パメラがなぜかもう一口食べてしまおうとしていたので、わたしは慌てて止めた。
「そろそろわたしにも食べさせて欲しいんだけど……!」
「外側はわたし、内側はサーシャさん。それじゃダメですか?」
「内側って、芯と種ばっかりなんだけど」
「ダメですか?」
「なんで良いと思うの……」
「種を植えたらリンゴの木が実って、いっぱい食べられますよ」
「猿かに合戦じゃないんだから………」
わたしは首を横に振ってため息をついたら、渋々芯と種を除いて残り3分の1程になっている、綺麗な歯形のついたりんごを譲ってくれた。
「これ食べたらもう寝ようね」
リンゴを齧ると、瑞々しい味がした。疲れて乾き切っていた体が芯から潤っていくような気分になる。
「美味しいな……」
思わず声に出すと、パメラの視線を感じる。指を咥えてもの欲しそうにこちらを見ている。
「さ、さっきいっぱい食べてたでしょ?」
「だって、サーシャさんがあまりにも美味しそうに食べてますから……」
ジトーっと見つめられて、わたしはソッとパメラの前にリンゴを差し出した。
「一口だけだからね?」
「ありがとうございます!」
そう言って、パメラが一口齧って両手で頬を抑えた。
「やっぱり美味しすぎますね、これ!」
「なら良かったよ」とわたしが適当に返事をしてから、パメラが「そうでした!」と大きな声を出す。
「いきなりどうしたのさ?」
「わたし、美味しいものが食べたいです!」
「え?」
いきなり何の宣言だろう。
「平和な世界になったらやりたいことです! パイやタルト、ケーキみたいな美味しいものを好きなだけ食べたいです!」
「パイ? タルト? ケーキ? 何それ? 食べ物の名前なの?」
聞いたことのない単語がズラリと口にされている。わたしが尋ねると、パメラが首を傾げた。
「知らないのですか?」
「うん」
「……なら、平和な世界になったらわたしが思う存分、メイドに作らせて、サーシャさんに振る舞いますね!」
「メイドって、無理でしょ」
あの巨大な意地悪メイドさんたちがわたし達のために食事を作ってくれるなんて、絶対に無理だと思うけど……。
「大丈夫ですよ! うちには秘伝のレシピ本がありますから!」
レシピ本とか、そう言う問題じゃ無い気がするけど……。でも、これ以上この話題を続けるのも面倒なので、話を終わらせる。
「た、楽しみにしとくね」
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