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Ⅱ 専属メイド
パトリシアⅢ 7
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幸い今は庭園の付近には誰もいなかった。ソフィアはそっとパトリシアお嬢様をポケットの外に出した。鳥や猫に連れ去られてしまわないよう、最新の注意を払いながら、庭園に置いてあるベンチの上に座って、膝の上にパトリシアお嬢様を置いた。スカート越しにパトリシアお嬢様の重みが感じられる。
とても軽いけれど、確かにそこに間違いなく存在している証拠だ。小さなパトリシアお嬢様がソフィアの方を見上げている様子が可愛らしくて、心臓の鼓動がいつもの倍以上の速さで動いているような気がした。
「シフォンケーキを焼いてきたのですが、食べますか?」
「ソフィアが作ってくれたの? もちろん食べるよ!」
嬉しそうに笑うパトリシアお嬢様にわたしの一口分の半分くらいの大きさを渡してみた。
「ありがと……っと、ごめんソフィア、重いよ」
まるで岩でも上に乗っかったみたいに、シフォンケーキを持って、その場に仰向けに倒れてしまった。シフォンケーキをお腹に乗せてもがくパトリシアお嬢様がラッコみたいに見えて可愛くもあったけれど、それよりも早く退けてあげなければと思い、慌ててシフォンケーキを退けた。ほとんど重みのない甘いケーキがパトリシアお嬢様にとっては脅威になってしまうのだから、気をつけなければならない。
「申し訳ございませんでした……」
ソフィアはさらに小さくして、ほとんど見えないくらいの大きさにちぎったものをパトリシアお嬢様に渡した。
「ありがとう、ソフィア。これなら持てるよ」
嬉しそうにシフォンケーキを頬張るパトリシアお嬢様があまりにも可愛らしすぎて、ソフィアは心の中で一人悶えてしまっていた。なんとかその感情を表に出さないように必死に手首をつねって、気を逸らしていた。こんなに可愛らしいパトリシアお嬢様と一緒に庭園デートができるなんて、なんて楽しいのだろうかと思う反面、また明日になったらベイリーにパトリシアお嬢様を取られてしまい、嫉妬と羨望で苦しい気持ちにさせられてしまうのだ。
「パトリシアお嬢様とずっと一緒にいたいです……」
思わず呟いた小さな声はきっと本来の大きさなら小さすぎて、完全な独り言として誰にも聞かれずに済んだのだろうけれど、今の小さなパトリシアお嬢様にははっきり聞こえてしまっていたようだった。
「どうしたの、ソフィア? わたしたち毎日一緒にいるけど?」
そういう意味じゃないんだけど、とソフィアは心の中で思いながらも、「そうですね」と作り笑いを浮かべた。ぼんやりと考えていたら、膝の上に置いていた手にパトリシアお嬢様がそっと体をくっつけて来ていた。ソフィアの手の甲に両手を置いて、そっと撫でてくれている。その姿が本当に可愛らしくて、やっぱりドキドキしてしまう。
「大丈夫だよ、ソフィア。私たちはずっとソフィアと一緒にいるから」
だけどわたしたち、と言われてスッと感情は冷める。
「私たちっていうのは?」
「もちろん、私とソフィアとベイリーだよ。私たち3人でずっと仲良くしたいな」
「そうですね……」となんとか答えたけれど、パトリシアお嬢様はやっぱりソフィアだけを見てくれることなんてないのだ。
それがパトリシアお嬢様の優しさと言えば聞こえは良いけれど、それでもソフィアにとって辛いことだった。もっとパトリシアお嬢様が私だけを意識してくれるようになれば良いのに、そんなことを思って、ふと一つ、アイデアが浮かんだ。
「……なるほど」
ぼんやり呟いたソフィアの方を見て、パトリシアお嬢様が首を傾げた。
「どうしたの?」
「いえ……、なんでもないんです……」
そう言いながらも、ソフィアはとても緊張していた。
「パトリシアお嬢様、私たち、ずっと一緒に過ごしましょうね」
ソフィアが満面の笑みで伝えた。私たち、が指している人物がソフィアとパトリシアお嬢様とでは違うけれど、パトリシアお嬢様はとくに気にすることなく頷いていた。
「そうだね、私たちでずっと一緒に過ごそうね」
私たち……、私とパトリシアお嬢様2人きりでずっと一緒に過ごしましょうね、とソフィアは心の中で念を押した。
とても軽いけれど、確かにそこに間違いなく存在している証拠だ。小さなパトリシアお嬢様がソフィアの方を見上げている様子が可愛らしくて、心臓の鼓動がいつもの倍以上の速さで動いているような気がした。
「シフォンケーキを焼いてきたのですが、食べますか?」
「ソフィアが作ってくれたの? もちろん食べるよ!」
嬉しそうに笑うパトリシアお嬢様にわたしの一口分の半分くらいの大きさを渡してみた。
「ありがと……っと、ごめんソフィア、重いよ」
まるで岩でも上に乗っかったみたいに、シフォンケーキを持って、その場に仰向けに倒れてしまった。シフォンケーキをお腹に乗せてもがくパトリシアお嬢様がラッコみたいに見えて可愛くもあったけれど、それよりも早く退けてあげなければと思い、慌ててシフォンケーキを退けた。ほとんど重みのない甘いケーキがパトリシアお嬢様にとっては脅威になってしまうのだから、気をつけなければならない。
「申し訳ございませんでした……」
ソフィアはさらに小さくして、ほとんど見えないくらいの大きさにちぎったものをパトリシアお嬢様に渡した。
「ありがとう、ソフィア。これなら持てるよ」
嬉しそうにシフォンケーキを頬張るパトリシアお嬢様があまりにも可愛らしすぎて、ソフィアは心の中で一人悶えてしまっていた。なんとかその感情を表に出さないように必死に手首をつねって、気を逸らしていた。こんなに可愛らしいパトリシアお嬢様と一緒に庭園デートができるなんて、なんて楽しいのだろうかと思う反面、また明日になったらベイリーにパトリシアお嬢様を取られてしまい、嫉妬と羨望で苦しい気持ちにさせられてしまうのだ。
「パトリシアお嬢様とずっと一緒にいたいです……」
思わず呟いた小さな声はきっと本来の大きさなら小さすぎて、完全な独り言として誰にも聞かれずに済んだのだろうけれど、今の小さなパトリシアお嬢様にははっきり聞こえてしまっていたようだった。
「どうしたの、ソフィア? わたしたち毎日一緒にいるけど?」
そういう意味じゃないんだけど、とソフィアは心の中で思いながらも、「そうですね」と作り笑いを浮かべた。ぼんやりと考えていたら、膝の上に置いていた手にパトリシアお嬢様がそっと体をくっつけて来ていた。ソフィアの手の甲に両手を置いて、そっと撫でてくれている。その姿が本当に可愛らしくて、やっぱりドキドキしてしまう。
「大丈夫だよ、ソフィア。私たちはずっとソフィアと一緒にいるから」
だけどわたしたち、と言われてスッと感情は冷める。
「私たちっていうのは?」
「もちろん、私とソフィアとベイリーだよ。私たち3人でずっと仲良くしたいな」
「そうですね……」となんとか答えたけれど、パトリシアお嬢様はやっぱりソフィアだけを見てくれることなんてないのだ。
それがパトリシアお嬢様の優しさと言えば聞こえは良いけれど、それでもソフィアにとって辛いことだった。もっとパトリシアお嬢様が私だけを意識してくれるようになれば良いのに、そんなことを思って、ふと一つ、アイデアが浮かんだ。
「……なるほど」
ぼんやり呟いたソフィアの方を見て、パトリシアお嬢様が首を傾げた。
「どうしたの?」
「いえ……、なんでもないんです……」
そう言いながらも、ソフィアはとても緊張していた。
「パトリシアお嬢様、私たち、ずっと一緒に過ごしましょうね」
ソフィアが満面の笑みで伝えた。私たち、が指している人物がソフィアとパトリシアお嬢様とでは違うけれど、パトリシアお嬢様はとくに気にすることなく頷いていた。
「そうだね、私たちでずっと一緒に過ごそうね」
私たち……、私とパトリシアお嬢様2人きりでずっと一緒に過ごしましょうね、とソフィアは心の中で念を押した。
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