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Ⅱ 専属メイド

パトリシアⅢ 5

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「パトリシアお嬢様、晩御飯のお時間ですよ!」
ソフィアがルンルン気分で小さなパトリシアお嬢様を机に乗せて、ご飯を食べさせようとしていた。けれど、横からベイリーが邪魔をしてくる。

「パトリシアお嬢様、ソフィアはすぐにパトリシアお嬢様に色恋を仕掛けようとしてしまう破廉恥なメイドです。そんな失礼な子に食べさせてもらうのはよろしくないですので、わたしが食べさせますね」
「いえ、パトリシアお嬢様、ベイリーさんに食べさせてもらったら、また小さくなる毒でも入れられたら大変ですので――」
ソフィアとベイリーはお互いに肩を押し付け合いながら、テーブルの上に立っているパトリシアお嬢様の正面を陣取ろうとしていた。

「2人とも、全っ然仲良くできてないじゃないのよ!!! 嘘つき!!! もうわたし引きこもるから!!」
パトリシアお嬢様が苛立った様子で頬を膨らませながら、ドールハウスに戻って行こうとする。

「「だ、ダメです!!」」
こう言う時には嫌になる程ベイリーとは気が合ってしまった。2人で声を揃えて、ドールハウスの出入り口の目の前に手のひらを置いて、通せんぼをした。

「ちょっと! 変なことしないでよ!」
パトリシアお嬢様は腕組みをして、目の前の二重のバリケードを作り上げてしまったソフィアとベイリーの方を見上げて睨んだ。小さな体だし、とても可愛らしくて穏やかな人なのに、次期当主としての威厳なのかわからないけれど、ソフィアもベイリーも背筋を震わせた。

「パ、パトリシアお嬢様と会えない1ヶ月間とっても寂しかったので……」
「わたしたち、パトリシアお嬢様がいないとダメになっちゃうので……」

ソフィアもベイリーも必死に思いを伝えた。2人の優秀なメイドを骨抜きにしてしまうパトリシアお嬢様の人たらしっぷりは凄かった。パトリシアお嬢様への色恋が絡むと、2人とも駄メイドと化してしまうのだから……。そんな2人の様子を見て、パトリシアお嬢様がかなり大きなため息をついた。

「ねえ、せめてわたしの前くらいでは喧嘩しないでよ……。2人とも昔はあんなに仲良かったのに、このところいっつも喧嘩ばっかり。仲の悪い2人のことは嫌いだからね。次喧嘩したらもうチャンスはあげないから」
はい……、と2人とも怯えるように頷いたのだった。

「とりあえず、パトリシアお嬢様の面倒は日替わりで見るようにしませんか?」
パトリシアお嬢様から聞こえないように部屋の外、専属メイド用の休憩用の個室に戻ってから、2人で話し合いを始めた。
ソフィアが提案すると、ベイリーも頷いた。

「そうね。日替わりで担当の人がパトリシアお嬢様の身近なお世話をすることにしたら、平等だわ」
「ただし、キスみたいに過度なスキンシップをした人は1ヶ月接触禁止にしましょう」
「1ヶ月の我慢と引き換えの覚悟ならキスをしても良いってことかしら?」
ベイリーがクスクスと笑ったから、ソフィアは真面目な口調で答える。

「良いわけないじゃないですか。本当は二度と接触禁止にしたいところだけれど、そうやってノーチャンスにしてしまうと、ベイリーさんが約束を破った時に自棄になって喧嘩を吹っかけてくるかもしれませんので。そうなると、またパトリシアお嬢様がドールハウスに引き篭もってしまいます」
「あら? わたしは大丈夫だけれど、ピンク髪の淫乱メイドがパトリシアお嬢様が小さくなったことを良いことに、キスを始めてしまうものね」
「元はといえば、ベイリーさんのキスのせいでこんなことになったのに、またそれを棚に上げて!」
「あれは不可抗力よ! それに先に告白しようとしたのは淫乱ソフィアの方よ!」

2人とも椅子から立ち上がって睨み合ってしまっていた。パトリシアお嬢様のいない場所で話し合いをしていたから良かったけれど、もし目の前でこんな揉め事をしていたら、即ドールハウスに引き篭もられてしまっていただろう。

「まあ、なんでもいいわ。とりあえず明日からにしましょう。この間はあなたの規約違反でパトリシアお嬢様が引き篭もってしまったのだから、わたしが先行で良いわよね?」
「ええ、良いですよ。別に日替わりなら明後日にはパトリシアお嬢様には会えますし」
こうして、ソフィアとベイリーの日替わりパトリシアお嬢様当番が始まるのだった。
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