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Ⅱ 専属メイド
わたしたちの恋愛事情 5
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どこから話せば良いのだろうか……。
わたしは悩みつつ話を始める。
「わたしがまだ幼かった頃の話なんですけど、そのとき社交パーティーでパトリシアお嬢様や、ソフィアと一緒にいたアリシアお嬢様と出会ったんです」
「社交パーティー……?」
エミリアが尋ねてくるから、わたしが答える。
「元々わたしはリティシアという家の三女だったんです。それで、定期的に社交パーティーとか、他の家と親交を深めるパーティーがあったんです。まあ、もう昔のことですけど……」
わたしは苦笑いをしたけれど、エミリアが突然泣きそうな顔をしていたから、ビックリした。
「あの……、何かありました……?」
わたしが恐る恐る尋ねると、エミリは怯えたような声を出す。
「え、リティ……。嘘……。い、今リティシア家って言った……?」
明らかに取り乱しているエミリアのことが不思議だった。
「言いましたけれど、どうしました……」
エミリアが口元を両手で覆って突然泣き出してしまった。
「え……エミリアさん!? どうしました!?」
突然のことすぎて、わけが分からず、わたしは困惑してしまう。
「た、大変申し訳ございませんでした……!!!」
エミリアが突如立ち上がって綺麗に90度の角度で深々とお辞儀をして謝罪を始めた。床に大粒の涙がボタボタと落ちている。
「ま、待ってください、どうしたんですか?」
「あ、謝ってももう遅いですよね……。わたしのこと、今までわたしがやったみたいに、思いっきり蹴って、押し潰してください。わたし、リティシア家のお嬢様にそんな無礼なことをしたなんて……」
「いえ、別にそんな謝らなくても……」
困惑しているわたしのことを気にせず、エミリアは謝罪を続けた。
「あ、でも、ダメですよね。今の体じゃ、わたしのこと踏み潰せないですよね……。じゃあ、自分で……」
エミリアがメイド服のスカートを捲り上げて、中から小さなナイフを取り出した。護衛も兼ねたメイドだからか、武器も所持しているらしい。
「ごめんなさい。こんなので許されるとは思ってないのですが……」
腕を捲り上げて、肌を出すと、そこには既に何本かナイフで切った後が出てくる。
「これは自分への罰ですから」
エミリアが刃を当てて自傷行為をしようとしたから、慌てて叫ぶ。
「エ、エミリアさん!! やめてくださいってば!! 本当に切ったら、わたし怒りますよ!!!」
エミリアが刃を止めた。
「ですが、わたしはどうやってあなたに謝罪をしたら……」
「謝罪なんて良いですよ……。過ぎたことですし……」
痛い思いはいっぱいしたけれど、それはレジーナお嬢様からの指示を忠実に守ってメイドとして仕事をしていただけだと今ならわかる。そんなエミリアを必要以上に責めようとは思えなかった。
「でも、その代わり、もうわたしたちに酷いことはしないでください。たとえレジーナお嬢様からの命令だったとしても、わたしだけでなく、リオナやキャンディやメロディにも意地悪しないでください!」
しっかりと伝えた。
「わかりました……。二度と無礼なことは……」
エミリアが柄にもなく泣いていたから、逆にわたしが困ってしまう。
「エミリアさん、そんなに泣かなくても……」
「わたしのせいで、リティシア家との関係が拗れてしまったら、お嬢様たちの顔に思いっきり泥を塗ってしまうことになります……。そんなことをしてしまっては、わたしはメイドとして大失格です……」
「いえ、もうわたしはリティシア家からは出ている身ですので大丈夫かと」
「そういうわけには行きませんよ。カロリーナ様はたとえ家を出ている身でも、間違いなくリティシア家の方なのですから……」
「当人が気にしないでって言ってるんだから、もう気にしないでください。それに、言葉遣いも今までのままで大丈夫ですよ」
「そう言うわけには……」
「メイドとしては、エミリアさんはわたしの大先輩なんですから、今まで通りで大丈夫です」
年齢もエミリアの方が多分上だし。今のままが一番しっくりくる。
「わかったわ……。でも、反省はし続けるから」
「別にし続けなくても良いですよ……」
わたしは苦笑いをしてから、かなり脱線した話を戻すのだった。
わたしは悩みつつ話を始める。
「わたしがまだ幼かった頃の話なんですけど、そのとき社交パーティーでパトリシアお嬢様や、ソフィアと一緒にいたアリシアお嬢様と出会ったんです」
「社交パーティー……?」
エミリアが尋ねてくるから、わたしが答える。
「元々わたしはリティシアという家の三女だったんです。それで、定期的に社交パーティーとか、他の家と親交を深めるパーティーがあったんです。まあ、もう昔のことですけど……」
わたしは苦笑いをしたけれど、エミリアが突然泣きそうな顔をしていたから、ビックリした。
「あの……、何かありました……?」
わたしが恐る恐る尋ねると、エミリは怯えたような声を出す。
「え、リティ……。嘘……。い、今リティシア家って言った……?」
明らかに取り乱しているエミリアのことが不思議だった。
「言いましたけれど、どうしました……」
エミリアが口元を両手で覆って突然泣き出してしまった。
「え……エミリアさん!? どうしました!?」
突然のことすぎて、わけが分からず、わたしは困惑してしまう。
「た、大変申し訳ございませんでした……!!!」
エミリアが突如立ち上がって綺麗に90度の角度で深々とお辞儀をして謝罪を始めた。床に大粒の涙がボタボタと落ちている。
「ま、待ってください、どうしたんですか?」
「あ、謝ってももう遅いですよね……。わたしのこと、今までわたしがやったみたいに、思いっきり蹴って、押し潰してください。わたし、リティシア家のお嬢様にそんな無礼なことをしたなんて……」
「いえ、別にそんな謝らなくても……」
困惑しているわたしのことを気にせず、エミリアは謝罪を続けた。
「あ、でも、ダメですよね。今の体じゃ、わたしのこと踏み潰せないですよね……。じゃあ、自分で……」
エミリアがメイド服のスカートを捲り上げて、中から小さなナイフを取り出した。護衛も兼ねたメイドだからか、武器も所持しているらしい。
「ごめんなさい。こんなので許されるとは思ってないのですが……」
腕を捲り上げて、肌を出すと、そこには既に何本かナイフで切った後が出てくる。
「これは自分への罰ですから」
エミリアが刃を当てて自傷行為をしようとしたから、慌てて叫ぶ。
「エ、エミリアさん!! やめてくださいってば!! 本当に切ったら、わたし怒りますよ!!!」
エミリアが刃を止めた。
「ですが、わたしはどうやってあなたに謝罪をしたら……」
「謝罪なんて良いですよ……。過ぎたことですし……」
痛い思いはいっぱいしたけれど、それはレジーナお嬢様からの指示を忠実に守ってメイドとして仕事をしていただけだと今ならわかる。そんなエミリアを必要以上に責めようとは思えなかった。
「でも、その代わり、もうわたしたちに酷いことはしないでください。たとえレジーナお嬢様からの命令だったとしても、わたしだけでなく、リオナやキャンディやメロディにも意地悪しないでください!」
しっかりと伝えた。
「わかりました……。二度と無礼なことは……」
エミリアが柄にもなく泣いていたから、逆にわたしが困ってしまう。
「エミリアさん、そんなに泣かなくても……」
「わたしのせいで、リティシア家との関係が拗れてしまったら、お嬢様たちの顔に思いっきり泥を塗ってしまうことになります……。そんなことをしてしまっては、わたしはメイドとして大失格です……」
「いえ、もうわたしはリティシア家からは出ている身ですので大丈夫かと」
「そういうわけには行きませんよ。カロリーナ様はたとえ家を出ている身でも、間違いなくリティシア家の方なのですから……」
「当人が気にしないでって言ってるんだから、もう気にしないでください。それに、言葉遣いも今までのままで大丈夫ですよ」
「そう言うわけには……」
「メイドとしては、エミリアさんはわたしの大先輩なんですから、今まで通りで大丈夫です」
年齢もエミリアの方が多分上だし。今のままが一番しっくりくる。
「わかったわ……。でも、反省はし続けるから」
「別にし続けなくても良いですよ……」
わたしは苦笑いをしてから、かなり脱線した話を戻すのだった。
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