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Ⅱ 専属メイド
メイド研修 9
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洗濯桶の中でもがいているわたしの上からアリシアお嬢様の水色のショーツが降ってくる。
「今はそれ1枚だけでいいわ。後はわたしが洗うから。たった1枚お嬢様のショーツを洗うくらいはしてよね?」
1枚なら簡単に洗えると言っても、それは通常サイズでの話。アリシアお嬢様の腰回りは特別大きいわけではないけれど、それでも小さなわたしにとってはカーペットみたいに大きいのだ。それを水の中に体を浸けて、うまく身動きの取れない中で洗っていく。当然手洗いだから、うまく洗えているのかも心配になる。
それに加えて、エミリアも同時に洗い桶でレジーナお嬢様の服と、アリシアお嬢様の服を洗濯していくから、洗い桶の中に水の流れが発生してしまっていた。流れの速い流れるプールみたいになってしまっていて、かなり危ない。
「ちょ、ちょっとエミリアさん! わたし流されちゃいますから!」
必死にアリシアお嬢様のショーツにしがみついて洗う。当然のようにわたしよりも重みのあるアリシアお嬢様のショーツが命綱代わりみたいになってしまっている。これでは、わたしが洗っているのか、洗われているのか、よくわからなくなる。
「遊んでないで、さっさと終わらせてください。アリシアお嬢様に汚れの残ったショーツを履かせるんですか?」
「それは……」
アリシアお嬢様には、当然綺麗なショーツを履いてもらいたい。
わたしはなんとか足でギュッとアリシアお嬢様のショーツを挟んで掴まりながら、両手でゴシゴシ洗濯を始める。わたしの弱い力でうまく汚れが取れているのかどうかは怪しかった。わたしはもはや洗っているのか、溺れかけているのか、わからなくなっている。
その間にもエミリアが手際良くさっさと作業を進めていく。次第にわたしのしがみつく力も弱っていき、ついにショーツから手を離してしまった。
「た、助けて~」
洗濯石鹸まみれになりながら、洗濯桶の中で、水に流されてしまう。そんなわたしを見て、エミリアがため息をはいてから、わたしのことを簡単に捕まえた。
「洗濯桶はプールじゃないのよ?」
エミリアにメイド服の首元を掴まれてしまい、ダラリと脱力したような状態にさせられる。呆れたような視線で見られて、恥ずかしかった。
「わ、わかってますよ!」
わたしは泣きそうになりながら答える。結局アリシアお嬢様のショーツ1枚満足に洗うこともできず、ショーツはエミリアが洗ってくれたのだった。
洗濯が終わると、休憩時間もなく、またエミリアのポケットに入れられて、運ばれていく。早朝から巨大なミニトマトを運んだし、先ほどは全身を使ってショーツを洗うことになったから、すでにエミリアのポケットの中で眠ってしまいそうなくらい疲れていた。これまでは運ばれている時には首から上を出して、外を覗くようにしていたけれど、今はもうそんな余裕もなかった。まだ午前中だというのに、すでに体力は限界になっている。
エミリアのメイド服はふんわりと柔らかくて、ポケットの中からも甘くてホッとするような匂いがしていた。おそらく真面目なエミリアのことだから、お嬢様たちの前に出る時には不快な思いをさせる可能性が少しでも少なくなるように、自身のメイド服の手入れもきちんとしているに違いない。居心地はかなり良かった。
そんなことを考えていると、ポケットを覆い尽くすような大きなエミリアの手が入ってきて、わたしは捕まえられた。そのまま手のひらに乗せられたわたしに、エミリアが話しかけてくる。
「さ、ついたわよ」
今度はアリシアお嬢様のお部屋にやってくる。
「次は何をするんですか?」
「ベッドメイクと部屋の掃除よ。今はアリシアお嬢様がお勉強とマナー講義の時間だから部屋を空けているのよ。わたしはこの後レジーナお嬢様のお部屋にも行かないといけないから、お部屋の掃除を終わらせたらその間、少し休んでいても良いわ」
「随分優しいんですね」
「別に優しいわけじゃないわ。あなたとわたしでは体にかかる負担が違うから、あなたはそれに見合った休憩を取らなければならない。そうしなければ、メイドとしてベストな仕事ができなくなってしまい、お嬢様たちが困ってしまうのだから」
いつものようにエミリアの徹底的なお嬢様最優先主義的な考え方ではあるけれど、そのおかげでわたしはもうすぐ小休憩を取れるらしい。もう一踏ん張りと思って、気合を入れ直す。
とはいえ、アリシアお嬢様の部屋は、わたしにとってちょっとした町のように広いわけで、相当苦労しそう。それに、エミリアのことだから、わたしがいるのを気にせず箒をかけて、一緒に掃いて、ゴミと一緒にわたしごとゴミ箱に捨ててしまったり……。不安を抱いていると、わたしはアリシアお嬢様のデスクの上に置かれた。
「本とか小物がたくさん乗っているから、隙間の埃はわたしじゃうまく取れないところもあるのよ。わたしが部屋の掃除をしている間、アリシアお嬢様の勉強用のデスクの上を掃除しておいて」
え? と思わず首を傾げてしまった。エミリアからの指示にしては簡単すぎて、裏でもあるのだろうかと疑いながら作業に取り掛かる。
「今はそれ1枚だけでいいわ。後はわたしが洗うから。たった1枚お嬢様のショーツを洗うくらいはしてよね?」
1枚なら簡単に洗えると言っても、それは通常サイズでの話。アリシアお嬢様の腰回りは特別大きいわけではないけれど、それでも小さなわたしにとってはカーペットみたいに大きいのだ。それを水の中に体を浸けて、うまく身動きの取れない中で洗っていく。当然手洗いだから、うまく洗えているのかも心配になる。
それに加えて、エミリアも同時に洗い桶でレジーナお嬢様の服と、アリシアお嬢様の服を洗濯していくから、洗い桶の中に水の流れが発生してしまっていた。流れの速い流れるプールみたいになってしまっていて、かなり危ない。
「ちょ、ちょっとエミリアさん! わたし流されちゃいますから!」
必死にアリシアお嬢様のショーツにしがみついて洗う。当然のようにわたしよりも重みのあるアリシアお嬢様のショーツが命綱代わりみたいになってしまっている。これでは、わたしが洗っているのか、洗われているのか、よくわからなくなる。
「遊んでないで、さっさと終わらせてください。アリシアお嬢様に汚れの残ったショーツを履かせるんですか?」
「それは……」
アリシアお嬢様には、当然綺麗なショーツを履いてもらいたい。
わたしはなんとか足でギュッとアリシアお嬢様のショーツを挟んで掴まりながら、両手でゴシゴシ洗濯を始める。わたしの弱い力でうまく汚れが取れているのかどうかは怪しかった。わたしはもはや洗っているのか、溺れかけているのか、わからなくなっている。
その間にもエミリアが手際良くさっさと作業を進めていく。次第にわたしのしがみつく力も弱っていき、ついにショーツから手を離してしまった。
「た、助けて~」
洗濯石鹸まみれになりながら、洗濯桶の中で、水に流されてしまう。そんなわたしを見て、エミリアがため息をはいてから、わたしのことを簡単に捕まえた。
「洗濯桶はプールじゃないのよ?」
エミリアにメイド服の首元を掴まれてしまい、ダラリと脱力したような状態にさせられる。呆れたような視線で見られて、恥ずかしかった。
「わ、わかってますよ!」
わたしは泣きそうになりながら答える。結局アリシアお嬢様のショーツ1枚満足に洗うこともできず、ショーツはエミリアが洗ってくれたのだった。
洗濯が終わると、休憩時間もなく、またエミリアのポケットに入れられて、運ばれていく。早朝から巨大なミニトマトを運んだし、先ほどは全身を使ってショーツを洗うことになったから、すでにエミリアのポケットの中で眠ってしまいそうなくらい疲れていた。これまでは運ばれている時には首から上を出して、外を覗くようにしていたけれど、今はもうそんな余裕もなかった。まだ午前中だというのに、すでに体力は限界になっている。
エミリアのメイド服はふんわりと柔らかくて、ポケットの中からも甘くてホッとするような匂いがしていた。おそらく真面目なエミリアのことだから、お嬢様たちの前に出る時には不快な思いをさせる可能性が少しでも少なくなるように、自身のメイド服の手入れもきちんとしているに違いない。居心地はかなり良かった。
そんなことを考えていると、ポケットを覆い尽くすような大きなエミリアの手が入ってきて、わたしは捕まえられた。そのまま手のひらに乗せられたわたしに、エミリアが話しかけてくる。
「さ、ついたわよ」
今度はアリシアお嬢様のお部屋にやってくる。
「次は何をするんですか?」
「ベッドメイクと部屋の掃除よ。今はアリシアお嬢様がお勉強とマナー講義の時間だから部屋を空けているのよ。わたしはこの後レジーナお嬢様のお部屋にも行かないといけないから、お部屋の掃除を終わらせたらその間、少し休んでいても良いわ」
「随分優しいんですね」
「別に優しいわけじゃないわ。あなたとわたしでは体にかかる負担が違うから、あなたはそれに見合った休憩を取らなければならない。そうしなければ、メイドとしてベストな仕事ができなくなってしまい、お嬢様たちが困ってしまうのだから」
いつものようにエミリアの徹底的なお嬢様最優先主義的な考え方ではあるけれど、そのおかげでわたしはもうすぐ小休憩を取れるらしい。もう一踏ん張りと思って、気合を入れ直す。
とはいえ、アリシアお嬢様の部屋は、わたしにとってちょっとした町のように広いわけで、相当苦労しそう。それに、エミリアのことだから、わたしがいるのを気にせず箒をかけて、一緒に掃いて、ゴミと一緒にわたしごとゴミ箱に捨ててしまったり……。不安を抱いていると、わたしはアリシアお嬢様のデスクの上に置かれた。
「本とか小物がたくさん乗っているから、隙間の埃はわたしじゃうまく取れないところもあるのよ。わたしが部屋の掃除をしている間、アリシアお嬢様の勉強用のデスクの上を掃除しておいて」
え? と思わず首を傾げてしまった。エミリアからの指示にしては簡単すぎて、裏でもあるのだろうかと疑いながら作業に取り掛かる。
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