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Ⅱ 専属メイド
ギスギス 3
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「カロリーナさんはできることをやっていけば良いんですよ? アリシアお嬢様のお世話もエミリアさんと協力して、できる範囲でやっていけば大丈夫です。ただでさえ、あなたはわけもわからず小さくされてしまって困っているのですから、大きさのせいで制限されてしまうのは良くないです」
わたしがアリシアお嬢様の専属メイドになることに反対していたベイリーとは違い、ソフィアは優しく背中を押してくれる。そんなソフィアのことをベイリーがジッと睨む。
「普段融通が効かないくせに、カロリーナちゃんにだけはえらく肩入れしているのね」
「別にそういうわけじゃないですよ。ただ、カロリーナさんがどこかの意地悪メイドに脅されているみたいでしたので」
今度はソフィアがベイリーのことを睨んだ。ベイリーとソフィアが睨み合っている。2人が喋っている光景は普段ほとんど見ないけれど、その理由が納得できるくらい言動の端々から険悪さが滲み出ていた。
「あ、あの……」
恐る恐る止めようとはしたけれど、この2人の仲裁をできる気もせずにオドオドし続けていた。
「さ、カロリーナさん、こんな意地悪腹黒メイドは放っておいてアリシアお嬢様のところに行きましょう」
ソフィアがわたしの手を取って、部屋の外に出ようとする。
「ダメよ。カロリーナちゃん。アリシアお嬢様の専属メイドになるということは、生活のメインスペースがこの屋敷からアリシアお嬢様のお部屋になってしまうのよ。そんなことしたらうっかりアリシアお嬢様の靴に踏み潰されてしまうかもしれないわ」
またベイリーに踏み潰されてしまった夢がフラッシュバックしそうになる。そんなわたしを落ち着かせるみたいにソフィアがわたしに言う。
「アリシアお嬢様はそんな残虐なことしませんよ」
それから、もう一度ベイリーの方を睨んだ。
「ねえ、ベイリーさん。あなたの口からそんなことを言うなんて、どういう神経をしてるのですか?」
ソフィアがわたしの手を離して、ベイリーに詰め寄った。ベイリーの肩に両手を置いて、グッと力を入れている。
「カロリーナさんたちに真相を知られるのがそんなにも恐ろしいのですか? それならあなたは何もしなければよかった。ここで全部ぶちまけてしまってもいいのですよ?」
ソフィアが詰め寄ると、今度はベイリーがムッとした表情をする。勢いよく手を下から上にスイングして、肩に置かれたソフィアの手を払った。2人の様子があまりにもギスギスし過ぎていて、真相がどういう意味なのか聞くこともできない。
「まるでソフィアは自分には後ろ暗いところが無いみたいな言い方ね。わたしだってある程度事の真相には辿り着いているのよ? ただ、裏が取れないから必要以上にあなたのことを責めていないだけ」
またソフィアとベイリーがジッと睨み合っている時に、屋敷の屋根がドンドンと叩かれた。その衝撃でわたしとキャンディとメロディが思わず尻餅をついてしまった。
「アリシアお嬢様からお呼び出しみたいね」
「普段はお呼び出しの時でも屋根を叩く音なんてしませんけど……」
「今は誰も屋敷の前にいないからですよ。普段は用がある時には窓越しに私かベイリーさんに合図をしてもらってるんですよ」
ソフィアがわたしの疑問に答えてから、速やかに部屋の外に出ていった。気まずそうにベイリーも続いて出ていく。
「なんだったんだよ、さっきの」
4人で取り残された部屋でリオナがポツンと呟いた。ベイリーとソフィアが思ったよりも険悪そうで困惑したのはわたしも同じだった。元々距離を置いていたし、2人の仲が悪そうなのは察していた。
だけど、周りにドス黒いオーラでも湧いているのではないだろうかというくらいギスギスしているとは思わなかった。わたしよりも前からいたリオナもビックリしているようだから、これほどの喧嘩は珍しいみたいだ。
キャンディとメロディも怖かったみたいで、部屋の隅で泣きそうな顔をして、抱きしめ合っていた。そんな重たい空気の中、ソフィアがもう一度部屋に入ってくる。
「カロリーナさん、アリシアお嬢様からのお呼び出しですよ」
先ほどベイリーの前で出していたものとは違う、しっかりとした普段通りの澄んだ声で呼びかけられる。アリシアお嬢様の専属メイドの件で揉めていた時に、なんというタイミングだろうか。とりあえず、わたしは部屋の外に出て、階段を降りる。玄関の扉の前には、ベイリーが立っていた。
「カロリーナちゃん、あなたには正しい判断を期待してるわよ」
冷たい声のベイリーに、背筋が震えてしまった。怖くなったわたしの後ろから、今度はソフィアの声がする。
「大丈夫ですよ、カロリーナさん。あなたが信じるべきはアリシアお嬢様です。アリシアお嬢様が一緒なら外の大きな世界だって、怖くはないですよ!」
ソフィアの声に背中を押されるみたいに、わたしは一歩ずつ前に出て、ベイリーの横を通り過ぎる。
「まあ、誰を信じるか、最後はカロリーナちゃんが決める事だものね」
諦めたように呟いてから、ベイリーが扉を開けてくれた。屋敷の外に出ると、眩しい光がアリシアお嬢様の部屋の巨大な窓から差し込んでいて、なんだかスポットライトのようにも感じられた。
外に出たわたしの前には、中腰で立って、扉のところに視線を合わせてくれている煌びやかな少女がいる。今日はアリシアお嬢様が直々に迎えに来てくれていたらしい。
わたしがアリシアお嬢様の専属メイドになることに反対していたベイリーとは違い、ソフィアは優しく背中を押してくれる。そんなソフィアのことをベイリーがジッと睨む。
「普段融通が効かないくせに、カロリーナちゃんにだけはえらく肩入れしているのね」
「別にそういうわけじゃないですよ。ただ、カロリーナさんがどこかの意地悪メイドに脅されているみたいでしたので」
今度はソフィアがベイリーのことを睨んだ。ベイリーとソフィアが睨み合っている。2人が喋っている光景は普段ほとんど見ないけれど、その理由が納得できるくらい言動の端々から険悪さが滲み出ていた。
「あ、あの……」
恐る恐る止めようとはしたけれど、この2人の仲裁をできる気もせずにオドオドし続けていた。
「さ、カロリーナさん、こんな意地悪腹黒メイドは放っておいてアリシアお嬢様のところに行きましょう」
ソフィアがわたしの手を取って、部屋の外に出ようとする。
「ダメよ。カロリーナちゃん。アリシアお嬢様の専属メイドになるということは、生活のメインスペースがこの屋敷からアリシアお嬢様のお部屋になってしまうのよ。そんなことしたらうっかりアリシアお嬢様の靴に踏み潰されてしまうかもしれないわ」
またベイリーに踏み潰されてしまった夢がフラッシュバックしそうになる。そんなわたしを落ち着かせるみたいにソフィアがわたしに言う。
「アリシアお嬢様はそんな残虐なことしませんよ」
それから、もう一度ベイリーの方を睨んだ。
「ねえ、ベイリーさん。あなたの口からそんなことを言うなんて、どういう神経をしてるのですか?」
ソフィアがわたしの手を離して、ベイリーに詰め寄った。ベイリーの肩に両手を置いて、グッと力を入れている。
「カロリーナさんたちに真相を知られるのがそんなにも恐ろしいのですか? それならあなたは何もしなければよかった。ここで全部ぶちまけてしまってもいいのですよ?」
ソフィアが詰め寄ると、今度はベイリーがムッとした表情をする。勢いよく手を下から上にスイングして、肩に置かれたソフィアの手を払った。2人の様子があまりにもギスギスし過ぎていて、真相がどういう意味なのか聞くこともできない。
「まるでソフィアは自分には後ろ暗いところが無いみたいな言い方ね。わたしだってある程度事の真相には辿り着いているのよ? ただ、裏が取れないから必要以上にあなたのことを責めていないだけ」
またソフィアとベイリーがジッと睨み合っている時に、屋敷の屋根がドンドンと叩かれた。その衝撃でわたしとキャンディとメロディが思わず尻餅をついてしまった。
「アリシアお嬢様からお呼び出しみたいね」
「普段はお呼び出しの時でも屋根を叩く音なんてしませんけど……」
「今は誰も屋敷の前にいないからですよ。普段は用がある時には窓越しに私かベイリーさんに合図をしてもらってるんですよ」
ソフィアがわたしの疑問に答えてから、速やかに部屋の外に出ていった。気まずそうにベイリーも続いて出ていく。
「なんだったんだよ、さっきの」
4人で取り残された部屋でリオナがポツンと呟いた。ベイリーとソフィアが思ったよりも険悪そうで困惑したのはわたしも同じだった。元々距離を置いていたし、2人の仲が悪そうなのは察していた。
だけど、周りにドス黒いオーラでも湧いているのではないだろうかというくらいギスギスしているとは思わなかった。わたしよりも前からいたリオナもビックリしているようだから、これほどの喧嘩は珍しいみたいだ。
キャンディとメロディも怖かったみたいで、部屋の隅で泣きそうな顔をして、抱きしめ合っていた。そんな重たい空気の中、ソフィアがもう一度部屋に入ってくる。
「カロリーナさん、アリシアお嬢様からのお呼び出しですよ」
先ほどベイリーの前で出していたものとは違う、しっかりとした普段通りの澄んだ声で呼びかけられる。アリシアお嬢様の専属メイドの件で揉めていた時に、なんというタイミングだろうか。とりあえず、わたしは部屋の外に出て、階段を降りる。玄関の扉の前には、ベイリーが立っていた。
「カロリーナちゃん、あなたには正しい判断を期待してるわよ」
冷たい声のベイリーに、背筋が震えてしまった。怖くなったわたしの後ろから、今度はソフィアの声がする。
「大丈夫ですよ、カロリーナさん。あなたが信じるべきはアリシアお嬢様です。アリシアお嬢様が一緒なら外の大きな世界だって、怖くはないですよ!」
ソフィアの声に背中を押されるみたいに、わたしは一歩ずつ前に出て、ベイリーの横を通り過ぎる。
「まあ、誰を信じるか、最後はカロリーナちゃんが決める事だものね」
諦めたように呟いてから、ベイリーが扉を開けてくれた。屋敷の外に出ると、眩しい光がアリシアお嬢様の部屋の巨大な窓から差し込んでいて、なんだかスポットライトのようにも感じられた。
外に出たわたしの前には、中腰で立って、扉のところに視線を合わせてくれている煌びやかな少女がいる。今日はアリシアお嬢様が直々に迎えに来てくれていたらしい。
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