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Ⅱ 専属メイド
可愛い妹と過保護な姉 7
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ホッとしたような声でレジーナお嬢様は続ける。
「有難いことに、アリシアはあなたのことをとても気に入っているみたいね。あなたを含めて、たくさんの小さなメイドたちがいるのだから、少しでも寂しい思いをしなくて済んでいるとわたしは信じているわ」
レジーナお嬢様はわたしの上に乗せていた手のひらをようやく退けてくれた。
上から抑えられながら正座をしていたせいで、足が痺れてしまっていた。痛た……、とレジーナお嬢様に聞こえないくらいの小さな声で呟いてから、わたしは正座の状態になっていた足を座ったまま伸ばした。そんなわたしに向かって、スラリと長い人差し指をすぐ目の前までグッと近づけてくる。突然目の前に巨大な人差し指がやってきて、びっくりしてしまう。
「だから、良い? アリシアのこと泣かせたら、次期当主としてではなく、アリシアの姉として、あなたのことを許さないからね! 泣いたって許してあげないくらい踏んづけちゃうからね! あと、わたしがアリシアのことを気にかけてるって言うのも誰にも言っちゃダメよ? せっかくのわたしの気遣いが台無しになるから」
わたしは大きく3度ほど頷いた。泣かせたら許さないも何も、わたしの大きさでアリシアお嬢様に危害を加えるなんて絶対にできないと思うけれど。
「でも、これで納得しました。アリシアお嬢様のことを寂しがらせないために、魔女に頼んでわたしたちのことを小さくしてもらったんですね!」
それなら話は早いかもしれない。わたしがアリシアお嬢様に意地悪しないということと、元の大きさに戻った方が、もっとアリシアお嬢様のために奉仕ができることを伝えたら、レジーナお嬢様がまた魔女に頼んで元の大きさに戻そうとしてくれるかもしれない。だけど、レジーナお嬢様はキョトンした表情で首を傾げた。
「ううん、そんなわけないわ。順番が逆よ。あなたたち小さなメイドが現れたから、アリシアの寂しさを紛らわせるのにちょうど良かったと思っただけ。さすがに人を手のひらサイズにして欲しいなんて、そんな酷いこと頼まないわよ……」
少し同情混じりの視線でわたしを見つめられて、それはそれで心にくる。
「じゃあ、わたしはなんで小さくされたんですか!」
「そんなのわたしに言われてもわからないわ。突然連れてきたのよ、リオナも、キャンディも、メロディも、あなたも……」
「誰が小さくしたかっていうのはやっぱり教えてくれないんですよね……?」
少しレジーナお嬢様と打ち解けてきたから、恐る恐る尋ねたけれど、レジーナお嬢様がゆっくりと首を横に振った。
「パトリシアお姉様は極度のお人好しだし、アリシアはとても純粋すぎて、2人とも昔から悪い人に騙されやすそうな体質だったわ。だからわたしは幼い頃から、2人の分まで警戒心を持って生きてきたのよ。そんなわたしの性格のせいかはかわからないけれど、わたしはその魔女のことが少し怖いわ。普段は無害なのは間違いないけれど、スイッチが入った時には何をしでかすかわからないから。わたしはあの子に込み入ったことは話せないし、彼女の名前をあなたに伝えるのも怖いのよ……」
レジーナお嬢様が珍しく怯えたような表情をした。
「ちなみに、エミリアさんではないんですよね?」
「なんでそこでエミリアの名前が出てくるのよ? わたしが自分の専属メイドにそんな危険な子をつけるわけないでしょ?」
とりあえず、わたしたちの身近に怖い魔女がいるわけではなさそうなのはホッとする。わたしの周りはエミリア以外とても優しい人ばかりだし、そのエミリアが魔女じゃないのなら、わたしの周りに警戒すべき魔女はいない。安心はしたけれど、ふと別の疑問も湧いてくる。
「……あれ? エミリアさんってアリシアお嬢様の専属メイドじゃないんですか?」
「違うわよ。わたしについてくれているメイドの一人よ。ただ、あの子が危険な目に遭わないように周囲の雑音をシャットアウトしてもらえるようにしているだけ。アリシアを守ることが、エミリアがわたしの専属メイドとしてこなすべき仕事なのよ」
なるほど……、と納得した。それなら、今までアリシアお嬢様へ入ってくる不要な情報を極端にをシャットアウトしたり、初見の時に、わたしが安全な人物か分かるまで警戒していたのも納得できた。まあ、過剰防衛すぎる気もするから、好意は持てないけれど……。
「じゃあ、アリシアお嬢様には……?」
「あの子にはまだ専属のメイドはいないわ……」
そう言って、レジーナお嬢様がジッとわたしのことを見下ろしていることに気がついた。
「な、なんですか……?」
恐る恐る尋ねると、レジーナお嬢様が真面目な顔で言う。
「ねえ、あなたがアリシアの専属メイドに立候補したら良いんじゃないかしら?」
「え……」と強張った表情でレジーナお嬢様のことを見上げた。
「有難いことに、アリシアはあなたのことをとても気に入っているみたいね。あなたを含めて、たくさんの小さなメイドたちがいるのだから、少しでも寂しい思いをしなくて済んでいるとわたしは信じているわ」
レジーナお嬢様はわたしの上に乗せていた手のひらをようやく退けてくれた。
上から抑えられながら正座をしていたせいで、足が痺れてしまっていた。痛た……、とレジーナお嬢様に聞こえないくらいの小さな声で呟いてから、わたしは正座の状態になっていた足を座ったまま伸ばした。そんなわたしに向かって、スラリと長い人差し指をすぐ目の前までグッと近づけてくる。突然目の前に巨大な人差し指がやってきて、びっくりしてしまう。
「だから、良い? アリシアのこと泣かせたら、次期当主としてではなく、アリシアの姉として、あなたのことを許さないからね! 泣いたって許してあげないくらい踏んづけちゃうからね! あと、わたしがアリシアのことを気にかけてるって言うのも誰にも言っちゃダメよ? せっかくのわたしの気遣いが台無しになるから」
わたしは大きく3度ほど頷いた。泣かせたら許さないも何も、わたしの大きさでアリシアお嬢様に危害を加えるなんて絶対にできないと思うけれど。
「でも、これで納得しました。アリシアお嬢様のことを寂しがらせないために、魔女に頼んでわたしたちのことを小さくしてもらったんですね!」
それなら話は早いかもしれない。わたしがアリシアお嬢様に意地悪しないということと、元の大きさに戻った方が、もっとアリシアお嬢様のために奉仕ができることを伝えたら、レジーナお嬢様がまた魔女に頼んで元の大きさに戻そうとしてくれるかもしれない。だけど、レジーナお嬢様はキョトンした表情で首を傾げた。
「ううん、そんなわけないわ。順番が逆よ。あなたたち小さなメイドが現れたから、アリシアの寂しさを紛らわせるのにちょうど良かったと思っただけ。さすがに人を手のひらサイズにして欲しいなんて、そんな酷いこと頼まないわよ……」
少し同情混じりの視線でわたしを見つめられて、それはそれで心にくる。
「じゃあ、わたしはなんで小さくされたんですか!」
「そんなのわたしに言われてもわからないわ。突然連れてきたのよ、リオナも、キャンディも、メロディも、あなたも……」
「誰が小さくしたかっていうのはやっぱり教えてくれないんですよね……?」
少しレジーナお嬢様と打ち解けてきたから、恐る恐る尋ねたけれど、レジーナお嬢様がゆっくりと首を横に振った。
「パトリシアお姉様は極度のお人好しだし、アリシアはとても純粋すぎて、2人とも昔から悪い人に騙されやすそうな体質だったわ。だからわたしは幼い頃から、2人の分まで警戒心を持って生きてきたのよ。そんなわたしの性格のせいかはかわからないけれど、わたしはその魔女のことが少し怖いわ。普段は無害なのは間違いないけれど、スイッチが入った時には何をしでかすかわからないから。わたしはあの子に込み入ったことは話せないし、彼女の名前をあなたに伝えるのも怖いのよ……」
レジーナお嬢様が珍しく怯えたような表情をした。
「ちなみに、エミリアさんではないんですよね?」
「なんでそこでエミリアの名前が出てくるのよ? わたしが自分の専属メイドにそんな危険な子をつけるわけないでしょ?」
とりあえず、わたしたちの身近に怖い魔女がいるわけではなさそうなのはホッとする。わたしの周りはエミリア以外とても優しい人ばかりだし、そのエミリアが魔女じゃないのなら、わたしの周りに警戒すべき魔女はいない。安心はしたけれど、ふと別の疑問も湧いてくる。
「……あれ? エミリアさんってアリシアお嬢様の専属メイドじゃないんですか?」
「違うわよ。わたしについてくれているメイドの一人よ。ただ、あの子が危険な目に遭わないように周囲の雑音をシャットアウトしてもらえるようにしているだけ。アリシアを守ることが、エミリアがわたしの専属メイドとしてこなすべき仕事なのよ」
なるほど……、と納得した。それなら、今までアリシアお嬢様へ入ってくる不要な情報を極端にをシャットアウトしたり、初見の時に、わたしが安全な人物か分かるまで警戒していたのも納得できた。まあ、過剰防衛すぎる気もするから、好意は持てないけれど……。
「じゃあ、アリシアお嬢様には……?」
「あの子にはまだ専属のメイドはいないわ……」
そう言って、レジーナお嬢様がジッとわたしのことを見下ろしていることに気がついた。
「な、なんですか……?」
恐る恐る尋ねると、レジーナお嬢様が真面目な顔で言う。
「ねえ、あなたがアリシアの専属メイドに立候補したら良いんじゃないかしら?」
「え……」と強張った表情でレジーナお嬢様のことを見上げた。
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