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Ⅱ 専属メイド
可愛い妹と過保護な姉 1
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長い廊下を歩いてレジーナお嬢様の部屋にたどり着く。歩いている間、かなりたくさんのメイドたちに頭をさげて挨拶をされていた。いないものにされていたアリシアお嬢様とは大違いだった。
レジーナお嬢様はホッと息を吐いた。
「さ、ついたわよ。あんたにとってはこの部屋は2回目ね。……2回目よね? 知らない間にもっといっぱい侵入してないでしょうね……?」
レジーナお嬢様がわたしを握る手に少し力が入ったので、慌てて首を横に振った。
「し、してないです! 本当です!」
「そこまで必死に否定しなくてもそんなに疑ってないわよ。だいたいあんた一人じゃ扉も開けられないんだし、アリシア以外に扉を開けられる仲間もいなさそうだし」
「まあ、そうですけど……」
レジーナお嬢様にポイっと机に投げられたから、おもいっきり尻餅をついてしまった。
「痛た……」とお尻をさすった。
「初めてだわ。チビメイドを部屋に自発的に入れたのは」
レジーナお嬢様がわたしの体を隅々まで覗くみたいに、腕を上に上げたり、メイド服をめくってみたりしながら、至近距離で観察を始める。大きな瞳が近くにあるし、強い吐息の風もやってくるしで、緊張してしまう。
「あの、ちょっと怖いんでやめて欲しいんですけど」
「ねえ、あんた誰に向かって命令してるわけ?」
レジーナお嬢様が苛立った声を出す。
「命令とか、そんなんじゃ……」
怯えながら答えると、レジーナお嬢様はガラスのコップを持ってくる。お水でも飲むのだろうかと思って、見上げていると、それをひっくり返してわたしの上に被せてくる。
「えっ!? ちょっと! 何するんですか!?」
「あんたは生意気だから、逃げられないようにしたのよ。自分の置かれている立場をわきまえなさい」
「だ、出してください!」
ガラスをバンバン叩いたけれど、強化ガラスにみたいに頑丈に感じるガラスのコップは、当然わたしが叩いたくらいで壊れるはずはない。
「も、目的は何なんですか!」
「みっともないから静かにしたらどうかしら?」
「レジーナお嬢様が突然連れ攫って閉じ込めたからじゃないですか!」
レジーナお嬢様の印象は、浴室で投げ捨ててきたり、アリシアお嬢様に意地悪なことを言ったりした人。そんなレジーナお嬢様に連れ去られてしまったのだから、これから何をされるのか、恐ろしかった。
それに加えて、わたしにはレジーナお嬢様に怒られることについて、心当たりはある。あのベイリーに踏み潰される怖い夢を見た日、わたしがレジーナお嬢様の部屋に忍び込んでいたことは事実だったようなのだから。
「あんまり騒ぐと、あんたの顔、セロハンテープでグルグル巻きにしちゃうから」
レジーナお嬢様が机の引き出しからセロハンテープを取り出して、わたしの前で引っ張った。これを貼られたら大変なことになってしまうから、わたしは息を呑んで、大人しく静かにしておくことにした。レジーナお嬢様なら本当に貼りかねないし。
「でも、一体何のためにわたしを呼び出したのですか?」
「あなたがアリシアと一緒にわたしの部屋に忍び込んだからよ」
レジーナお嬢様がわたしの上にあったコップをどかせてから、腕をソッと親指と人差し指で摘みながら答える。レジーナお嬢様から見たら小枝みたいなわたしの腕は、少し力を入れられただけで簡単に折れてしまいそうで怖かった。
「怖いんですけど……」
「そりゃ怖がらせてるんだもの」
「あの、アリシアお嬢様と一緒に部屋に入ったのは謝りますから、もう帰してくださいよ」
「嫌よ! わたしはとっても怒っているの! 帰すつもりはないからね!」
レジーナお嬢様がプイッと顔を横に向けた。
「帰すつもりがないって、そんな……」
「当然よ。あなたはわたしの大切なアリシアを誑たぶらかせ、結託させて、悪巧みをさせた。重罪じゃないかしら?」
「た、誑かしたなんて……、誤解ですよ! わたしはただアリシアお嬢様に協力してもらっただけで――」
「うるさいうるさい!!」
レジーナお嬢様が、持っていたわたしの腕を引っ張って、持ち上げて、目の前まで持っていく。足がぶらぶらと宙に浮かんだままにされてしまい、怖かった。
「離してください……」
「あなたがアリシアのことを誑かしたって認めたら離してあげる……」
ジッと見つめてくるレジーナお嬢様の澄んだ瞳は、アリシアお嬢様とよく似ていた。それなのに、どうしてこんなにも性格が違うのだろうかと困ってしまう。どうやらわたしは、存在しない事実を認めなければ下ろしてはもらえないらしい。
レジーナお嬢様はホッと息を吐いた。
「さ、ついたわよ。あんたにとってはこの部屋は2回目ね。……2回目よね? 知らない間にもっといっぱい侵入してないでしょうね……?」
レジーナお嬢様がわたしを握る手に少し力が入ったので、慌てて首を横に振った。
「し、してないです! 本当です!」
「そこまで必死に否定しなくてもそんなに疑ってないわよ。だいたいあんた一人じゃ扉も開けられないんだし、アリシア以外に扉を開けられる仲間もいなさそうだし」
「まあ、そうですけど……」
レジーナお嬢様にポイっと机に投げられたから、おもいっきり尻餅をついてしまった。
「痛た……」とお尻をさすった。
「初めてだわ。チビメイドを部屋に自発的に入れたのは」
レジーナお嬢様がわたしの体を隅々まで覗くみたいに、腕を上に上げたり、メイド服をめくってみたりしながら、至近距離で観察を始める。大きな瞳が近くにあるし、強い吐息の風もやってくるしで、緊張してしまう。
「あの、ちょっと怖いんでやめて欲しいんですけど」
「ねえ、あんた誰に向かって命令してるわけ?」
レジーナお嬢様が苛立った声を出す。
「命令とか、そんなんじゃ……」
怯えながら答えると、レジーナお嬢様はガラスのコップを持ってくる。お水でも飲むのだろうかと思って、見上げていると、それをひっくり返してわたしの上に被せてくる。
「えっ!? ちょっと! 何するんですか!?」
「あんたは生意気だから、逃げられないようにしたのよ。自分の置かれている立場をわきまえなさい」
「だ、出してください!」
ガラスをバンバン叩いたけれど、強化ガラスにみたいに頑丈に感じるガラスのコップは、当然わたしが叩いたくらいで壊れるはずはない。
「も、目的は何なんですか!」
「みっともないから静かにしたらどうかしら?」
「レジーナお嬢様が突然連れ攫って閉じ込めたからじゃないですか!」
レジーナお嬢様の印象は、浴室で投げ捨ててきたり、アリシアお嬢様に意地悪なことを言ったりした人。そんなレジーナお嬢様に連れ去られてしまったのだから、これから何をされるのか、恐ろしかった。
それに加えて、わたしにはレジーナお嬢様に怒られることについて、心当たりはある。あのベイリーに踏み潰される怖い夢を見た日、わたしがレジーナお嬢様の部屋に忍び込んでいたことは事実だったようなのだから。
「あんまり騒ぐと、あんたの顔、セロハンテープでグルグル巻きにしちゃうから」
レジーナお嬢様が机の引き出しからセロハンテープを取り出して、わたしの前で引っ張った。これを貼られたら大変なことになってしまうから、わたしは息を呑んで、大人しく静かにしておくことにした。レジーナお嬢様なら本当に貼りかねないし。
「でも、一体何のためにわたしを呼び出したのですか?」
「あなたがアリシアと一緒にわたしの部屋に忍び込んだからよ」
レジーナお嬢様がわたしの上にあったコップをどかせてから、腕をソッと親指と人差し指で摘みながら答える。レジーナお嬢様から見たら小枝みたいなわたしの腕は、少し力を入れられただけで簡単に折れてしまいそうで怖かった。
「怖いんですけど……」
「そりゃ怖がらせてるんだもの」
「あの、アリシアお嬢様と一緒に部屋に入ったのは謝りますから、もう帰してくださいよ」
「嫌よ! わたしはとっても怒っているの! 帰すつもりはないからね!」
レジーナお嬢様がプイッと顔を横に向けた。
「帰すつもりがないって、そんな……」
「当然よ。あなたはわたしの大切なアリシアを誑たぶらかせ、結託させて、悪巧みをさせた。重罪じゃないかしら?」
「た、誑かしたなんて……、誤解ですよ! わたしはただアリシアお嬢様に協力してもらっただけで――」
「うるさいうるさい!!」
レジーナお嬢様が、持っていたわたしの腕を引っ張って、持ち上げて、目の前まで持っていく。足がぶらぶらと宙に浮かんだままにされてしまい、怖かった。
「離してください……」
「あなたがアリシアのことを誑かしたって認めたら離してあげる……」
ジッと見つめてくるレジーナお嬢様の澄んだ瞳は、アリシアお嬢様とよく似ていた。それなのに、どうしてこんなにも性格が違うのだろうかと困ってしまう。どうやらわたしは、存在しない事実を認めなければ下ろしてはもらえないらしい。
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