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Ⅱ 専属メイド
巨大な侵入者 2
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とはいえ、先日のベイリーから踏み潰されてしまった夢は、翌日以降も夢に見てしまうくらいに怖いできごとだった。ベイリーからしたら勝手に夢に出された上に、勝手に怯えられているわけだから、少し申し訳なくは思っていた。けれど、怖いものは怖い。
朝ごはんを食べるために、キャンディとメロディに手を引っ張られながらダイニングへと向かった。初めてやってきた日には、鍋いっぱいの巨大なシチューを見て、不思議に思ったけれど、今ならもう意味はわかる。
今日用意されている、とても6人で食べきれないような大量のスープも、実際に元のサイズで食べたら一口にも満たないような量なのだろう。周囲のパンは食べやすいように、ピンセットか何かを使ってかなり小さく切って、わたしたちでも簡単に持てるようなサイズにしてくれているのだろう。
ダイニングにつくと、席にはいつものように間隔をあけてハブられたみたいにソフィアがポツンと佇んでいて、そこから一つ席を空けてリオナが座っていた。4人掛けのテーブルを2つくっつけて最大8人が座れるようになっているダイニングテーブルの対角線上、一番遠い位置にベイリーとソフィアが座っている。
他の4人は流動的に席に着いているけれど、ソフィアとベイリーが一番遠くに座っているのは絶対に変わることはなかった。あの2人は不思議なくらい仲が悪い。そんなことを考えていると、ベイリーに声をかけられて、思わず背筋を伸ばしてしまった。
「カロリーナちゃん、そんなところで立ってないで座ったら?」
わたしはベイリーから距離をとりたかったから、今日はソフィアの横に座った。
「カロリーナちゃんはなんだか最近わたしに余所余所しい気がするわ」
ベイリーから声をかけられたから、慌てて首を横に振った。
「まさか、そんな、よそよそしいわけないじゃないですか……」
乾いた笑いと共に否定する声は震えていて、とても怪しくなってしまう。
「なんだよ、カロリーナとベイリー何かあったのかよ?」
リオナが不思議そうに尋ねていた。
「喧嘩だ!」
「心配だよ!」
キャンディとメロディもリオナに続いて声を出す。
「な、何もないです、本当に……」
そうやって否定している間にも思い出してしまって気分が悪くなってしまい、俯いてしまった。
「この間の夢のせいかしら……。無意識のうちとはいえ、怖い思いをさせてしまってごめんなさい」
「い、いえ……」
わたしは肩で息をしてしまっていた。知らない間に呼吸が荒れている。無意識のうちにベイリーに対して恐怖心を抱いてしまっているのかもしれない。
「夢って何だよ? お前夢の中でベイリーに虐められたのか?」
「意地悪ダメだよ!」
「怖がらせたらダメ!」
リオナたちの言葉を聞いて、ベイリーは「夢の中とはいえ申し訳ないことをしたわね」と寂しそうに謝った。ベイリーは悪くないのに、そう思ってフォローをしようと思ったけれど、声が出なかった。代わりにすぐ横から冷たい声がした。
「白々しいですね」
普段俯いて、何も話さず食事を進めているソフィアが怖い声を出したから驚いた。俯いたまま顔を上げられなかったから、どんな表情なのかはわからなかったけど、空気が凍っているのはわかった。ソフィアはわたしに優しく声をかけてくれた。
「大丈夫ですか、カロリーナさん。食べられなかったら、部屋で食べても良いですからね」
ソッと背中をさすってくれた。
「すいません……」
リオナとキャンディとメロディと、あと一応ベイリーもみんな心配そうに見守ってくれていた。誰も悪くないのになんだか申し訳なくなってしまう。強いて言うならあれだけ生々しい夢を見た、わたし自身のせい。パンを一切れだけ持って立ち上がった瞬間にドンドン、と屋敷全体に響くような、巨大なノックの音が聞こえた。
「誰……?」
わたしたち、手のひらサイズのメイドは6人とも部屋の中にいる。アリシアお嬢様も、エミリアもこの屋敷のドアをノックするようなことはしない。わたしもさすがに顔を上げて、全員がダイニングから出入り口のドアの方を見つめていると、次の瞬間、廊下のスペースでは収まりきらないような巨大な手のひらが室内に入ってきたのだった!
朝ごはんを食べるために、キャンディとメロディに手を引っ張られながらダイニングへと向かった。初めてやってきた日には、鍋いっぱいの巨大なシチューを見て、不思議に思ったけれど、今ならもう意味はわかる。
今日用意されている、とても6人で食べきれないような大量のスープも、実際に元のサイズで食べたら一口にも満たないような量なのだろう。周囲のパンは食べやすいように、ピンセットか何かを使ってかなり小さく切って、わたしたちでも簡単に持てるようなサイズにしてくれているのだろう。
ダイニングにつくと、席にはいつものように間隔をあけてハブられたみたいにソフィアがポツンと佇んでいて、そこから一つ席を空けてリオナが座っていた。4人掛けのテーブルを2つくっつけて最大8人が座れるようになっているダイニングテーブルの対角線上、一番遠い位置にベイリーとソフィアが座っている。
他の4人は流動的に席に着いているけれど、ソフィアとベイリーが一番遠くに座っているのは絶対に変わることはなかった。あの2人は不思議なくらい仲が悪い。そんなことを考えていると、ベイリーに声をかけられて、思わず背筋を伸ばしてしまった。
「カロリーナちゃん、そんなところで立ってないで座ったら?」
わたしはベイリーから距離をとりたかったから、今日はソフィアの横に座った。
「カロリーナちゃんはなんだか最近わたしに余所余所しい気がするわ」
ベイリーから声をかけられたから、慌てて首を横に振った。
「まさか、そんな、よそよそしいわけないじゃないですか……」
乾いた笑いと共に否定する声は震えていて、とても怪しくなってしまう。
「なんだよ、カロリーナとベイリー何かあったのかよ?」
リオナが不思議そうに尋ねていた。
「喧嘩だ!」
「心配だよ!」
キャンディとメロディもリオナに続いて声を出す。
「な、何もないです、本当に……」
そうやって否定している間にも思い出してしまって気分が悪くなってしまい、俯いてしまった。
「この間の夢のせいかしら……。無意識のうちとはいえ、怖い思いをさせてしまってごめんなさい」
「い、いえ……」
わたしは肩で息をしてしまっていた。知らない間に呼吸が荒れている。無意識のうちにベイリーに対して恐怖心を抱いてしまっているのかもしれない。
「夢って何だよ? お前夢の中でベイリーに虐められたのか?」
「意地悪ダメだよ!」
「怖がらせたらダメ!」
リオナたちの言葉を聞いて、ベイリーは「夢の中とはいえ申し訳ないことをしたわね」と寂しそうに謝った。ベイリーは悪くないのに、そう思ってフォローをしようと思ったけれど、声が出なかった。代わりにすぐ横から冷たい声がした。
「白々しいですね」
普段俯いて、何も話さず食事を進めているソフィアが怖い声を出したから驚いた。俯いたまま顔を上げられなかったから、どんな表情なのかはわからなかったけど、空気が凍っているのはわかった。ソフィアはわたしに優しく声をかけてくれた。
「大丈夫ですか、カロリーナさん。食べられなかったら、部屋で食べても良いですからね」
ソッと背中をさすってくれた。
「すいません……」
リオナとキャンディとメロディと、あと一応ベイリーもみんな心配そうに見守ってくれていた。誰も悪くないのになんだか申し訳なくなってしまう。強いて言うならあれだけ生々しい夢を見た、わたし自身のせい。パンを一切れだけ持って立ち上がった瞬間にドンドン、と屋敷全体に響くような、巨大なノックの音が聞こえた。
「誰……?」
わたしたち、手のひらサイズのメイドは6人とも部屋の中にいる。アリシアお嬢様も、エミリアもこの屋敷のドアをノックするようなことはしない。わたしもさすがに顔を上げて、全員がダイニングから出入り口のドアの方を見つめていると、次の瞬間、廊下のスペースでは収まりきらないような巨大な手のひらが室内に入ってきたのだった!
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