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Ⅰ 手乗りサイズの新米メイド
迷探偵カロリーナ 1
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昨晩、お風呂から帰ってきたわたしが部屋に戻れたのは遅い時間だったらしく、すでにリオナたちは眠っていた。だから、情報の共有ができたのは、次の日の夜ご飯が終わり、メイド屋敷の掃除を終えた後の時間だった。
とりあえず、わたしの部屋にリオナとキャンディとメロディを呼んで、みんなでそれぞれの調べたことを話し合うことにした。もっとも、キャンディとメロディは難しい話は興味がないみたいで、部屋の中で走り回って2人で遊んでいたけれど。わたしの部屋にはベッドと机と椅子くらいしか置いていないから、走り回るのに最適らしい。
「お前ら、うるさくしたらソフィアから怒られるから、はしゃぎすぎるなよ」
「はーい」と2人で声を揃えて返事をしている。リオナはすっかりあの2人のお母さんみたいになっていた。
2人の方を見ていたリオナの鋭い視線が、わたしの方に向き直る。
「とりあえず、カロリーナは何かわかったことあったのか?」
真面目な調子でリオナに聞かれて、わたしは得られたことを伝えた。
アリシアお嬢様に、小さくなってしまったから元に戻りたいということを伝えられたこと、ソフィアから昔会ったことがあると伝えられたこと、ソフィアがパトリシアという謎の女性の名前を何度も出していたこと。
「パトリシアって、お前そいつがどんなやつか見たのか?」
リオナがパトリシアという名前に反応した。知り合いなのだろうか。
「わたしは見てないけど……。リオナも知ってるってことはパトリシアさんって言う人はもしかしてかなりの有名人なの?」
「いや、有名かどうかは知らねえよ。でも、ベイリーが言ってたんだよ。そいつも小さくされたって」
「小さくされたって……、わたしたち以外にも小さくされた人がいるってこと?」
屋敷の中に働くメイドたちの中に、パトリシアという名の人物はいない。だから、わたしたち以外に小さくされた被害者がいるとすれば、屋敷内に他にもドールハウスがあり、そこにもわたしたちと同じように小さくされた人たちが住んでいる可能性が考えられる。だとしたら、会って話を聞いてみたい。わたしたちが元に戻るための手がかりも掴めるかもしれないし。
「ねえ、パトリシアさんに会ってみようよ!」
わたしの言葉を聞いて、リオナが頭を抱えた。
「だからな、それが問題なんだよ」
「問題?」
「パトリシアの居場所はベイリーでもまだ特定できてないらしいんだよ」
「えぇ……」
わたしも困った。ベイリーは昔からここにいるし、この屋敷のことなら、メイドたちのことも、お嬢様たちのこともなんでも知っているイメージだった。そんなベイリーが知らない情報ということは、パトリシア探しは相当難航しそうだ。
「ベイリーさんも知らないとなると、探すのは難しいかもね。どこで何やってるメイドさんなんだろう……」
「メイド?」
「え、うん」と頷いてから、思い出す。ソフィアがパトリシアのことをパトリシアお嬢様と何度も呼んでいたことを。
「ああ、そっかパトリシアお嬢様ってことは……」
リオナが大きく頷いた。
「本来なら時期当主のはずだったらしいんだ。でも、行方不明になっちまったから、今は次女のレジーナが時期当主候補の筆頭らしい」
「そっか……」と相槌を打ってから、ふと思い出す。
昨日バスルームで、わたしのことをネズミ扱いして、浴槽に投げ捨てた意地悪な少女のことを。エミリアが、彼女のことを"レジーナお嬢様"と呼んでいたことを。そして、あのエミリアがレジーナお嬢様にはかなり怯えていたことを。わたしの中で、情報が一つの線になって纏まっていく。
「ねえ、リオナってレジーナお嬢様に会ったことあるの?」
「あたしはねえな。でも、噂で聞くところ結構やべえヤツっぽいんだよな。かなり高圧的というか……」
確かに高圧的で容赦がない人だった。バスルームに入る前にメイドにかなりキツく当たっていたし、エミリアも怯えているみたいだった。
「わたし、昨日レジーナお嬢様に会ったよ」
「マジかよ! どんなヤツだったんだよ?」
「どんなヤツって……。内臓出そうになるくらいギュッと握られたり、バスタブの中にポイって投げられたり……、わたしたちのことネズミとかチビメイドって呼んだり……」
伝えている途中でリオナがかなりムッとしているのがわかった。
「なんだよ、そいつ! あたしが殺してきてやる!」
物騒なことを言いだした。そのまま部屋から飛び出していきそうな勢いだったから、慌ててメイド服のエプロンを掴んで止めた。
「だから、わたしたちちっちゃくなってるんだから、簡単に返り討ちにあって、踏み潰されちゃうだけだからダメだって!」
今いる小さなメイド専用の屋敷内にいると、すべてがわたしたちに合わされた大きさでできているから、何も怖いものはないように錯覚してしまう。けれど、昨日実際にアリシアお嬢様と一緒に晩御飯を食べて、入浴をしてみたら、今の体がいかに不便で脆いかを実感した。
「でも、このまま舐められたままでいられるわけねえだろ!」
「そもそもどこの部屋にいるのかわからないし、闇雲に探したって探す範囲が広すぎて見つからないよ!」
「そうだけどよ……」
ようやくリオナがおとなしくなってきた。
「今はレジーナお嬢様のことは放っておいたらいいよ。今大事なのはパトリシアお嬢様のほうなんだから。レジーナお嬢様の方には、元の大きさに戻ってから、一緒に一言文句でも言いに行こうよ」
わたしが笑顔で伝えると、リオナも諦めたように笑う。
「わかったよ……。でも、元に戻ったら絶対にビンタくらいはするからな!」
少し剣幕を弱めつつも、やっぱり物騒なことを言っているリオナのことは一旦放っておいて、とりあえず話を戻した。
とりあえず、わたしの部屋にリオナとキャンディとメロディを呼んで、みんなでそれぞれの調べたことを話し合うことにした。もっとも、キャンディとメロディは難しい話は興味がないみたいで、部屋の中で走り回って2人で遊んでいたけれど。わたしの部屋にはベッドと机と椅子くらいしか置いていないから、走り回るのに最適らしい。
「お前ら、うるさくしたらソフィアから怒られるから、はしゃぎすぎるなよ」
「はーい」と2人で声を揃えて返事をしている。リオナはすっかりあの2人のお母さんみたいになっていた。
2人の方を見ていたリオナの鋭い視線が、わたしの方に向き直る。
「とりあえず、カロリーナは何かわかったことあったのか?」
真面目な調子でリオナに聞かれて、わたしは得られたことを伝えた。
アリシアお嬢様に、小さくなってしまったから元に戻りたいということを伝えられたこと、ソフィアから昔会ったことがあると伝えられたこと、ソフィアがパトリシアという謎の女性の名前を何度も出していたこと。
「パトリシアって、お前そいつがどんなやつか見たのか?」
リオナがパトリシアという名前に反応した。知り合いなのだろうか。
「わたしは見てないけど……。リオナも知ってるってことはパトリシアさんって言う人はもしかしてかなりの有名人なの?」
「いや、有名かどうかは知らねえよ。でも、ベイリーが言ってたんだよ。そいつも小さくされたって」
「小さくされたって……、わたしたち以外にも小さくされた人がいるってこと?」
屋敷の中に働くメイドたちの中に、パトリシアという名の人物はいない。だから、わたしたち以外に小さくされた被害者がいるとすれば、屋敷内に他にもドールハウスがあり、そこにもわたしたちと同じように小さくされた人たちが住んでいる可能性が考えられる。だとしたら、会って話を聞いてみたい。わたしたちが元に戻るための手がかりも掴めるかもしれないし。
「ねえ、パトリシアさんに会ってみようよ!」
わたしの言葉を聞いて、リオナが頭を抱えた。
「だからな、それが問題なんだよ」
「問題?」
「パトリシアの居場所はベイリーでもまだ特定できてないらしいんだよ」
「えぇ……」
わたしも困った。ベイリーは昔からここにいるし、この屋敷のことなら、メイドたちのことも、お嬢様たちのこともなんでも知っているイメージだった。そんなベイリーが知らない情報ということは、パトリシア探しは相当難航しそうだ。
「ベイリーさんも知らないとなると、探すのは難しいかもね。どこで何やってるメイドさんなんだろう……」
「メイド?」
「え、うん」と頷いてから、思い出す。ソフィアがパトリシアのことをパトリシアお嬢様と何度も呼んでいたことを。
「ああ、そっかパトリシアお嬢様ってことは……」
リオナが大きく頷いた。
「本来なら時期当主のはずだったらしいんだ。でも、行方不明になっちまったから、今は次女のレジーナが時期当主候補の筆頭らしい」
「そっか……」と相槌を打ってから、ふと思い出す。
昨日バスルームで、わたしのことをネズミ扱いして、浴槽に投げ捨てた意地悪な少女のことを。エミリアが、彼女のことを"レジーナお嬢様"と呼んでいたことを。そして、あのエミリアがレジーナお嬢様にはかなり怯えていたことを。わたしの中で、情報が一つの線になって纏まっていく。
「ねえ、リオナってレジーナお嬢様に会ったことあるの?」
「あたしはねえな。でも、噂で聞くところ結構やべえヤツっぽいんだよな。かなり高圧的というか……」
確かに高圧的で容赦がない人だった。バスルームに入る前にメイドにかなりキツく当たっていたし、エミリアも怯えているみたいだった。
「わたし、昨日レジーナお嬢様に会ったよ」
「マジかよ! どんなヤツだったんだよ?」
「どんなヤツって……。内臓出そうになるくらいギュッと握られたり、バスタブの中にポイって投げられたり……、わたしたちのことネズミとかチビメイドって呼んだり……」
伝えている途中でリオナがかなりムッとしているのがわかった。
「なんだよ、そいつ! あたしが殺してきてやる!」
物騒なことを言いだした。そのまま部屋から飛び出していきそうな勢いだったから、慌ててメイド服のエプロンを掴んで止めた。
「だから、わたしたちちっちゃくなってるんだから、簡単に返り討ちにあって、踏み潰されちゃうだけだからダメだって!」
今いる小さなメイド専用の屋敷内にいると、すべてがわたしたちに合わされた大きさでできているから、何も怖いものはないように錯覚してしまう。けれど、昨日実際にアリシアお嬢様と一緒に晩御飯を食べて、入浴をしてみたら、今の体がいかに不便で脆いかを実感した。
「でも、このまま舐められたままでいられるわけねえだろ!」
「そもそもどこの部屋にいるのかわからないし、闇雲に探したって探す範囲が広すぎて見つからないよ!」
「そうだけどよ……」
ようやくリオナがおとなしくなってきた。
「今はレジーナお嬢様のことは放っておいたらいいよ。今大事なのはパトリシアお嬢様のほうなんだから。レジーナお嬢様の方には、元の大きさに戻ってから、一緒に一言文句でも言いに行こうよ」
わたしが笑顔で伝えると、リオナも諦めたように笑う。
「わかったよ……。でも、元に戻ったら絶対にビンタくらいはするからな!」
少し剣幕を弱めつつも、やっぱり物騒なことを言っているリオナのことは一旦放っておいて、とりあえず話を戻した。
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