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Ⅰ 手乗りサイズの新米メイド
豪華な晩御飯 5
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「これは意外と重労働かもしれないな……」
コーンを15個くらいアリシアお嬢様の口に放り込んだ辺りで、つい声が漏れてしまった。
スプーン一掬い分くらいにも満たないくらいのコーンだけど、それを食べさせるのはかなりの労力だった。アリシアお嬢様はコーン一粒なんて一瞬で飲み込んでしまうから、インターバルなんてほとんどない。口に投げ込んだ瞬間に喉の奥に吸い込まれてしまうコーンを補充するために、わたしはあくせく走りまわっていた。
「そんなに急がなくても良いですのよ?」
アリシアお嬢様が心配そうにわたしを見つめてくれていて、なんだか申し訳なくなってしまう。
しかも、少し急ごうとした時に、わたしはうっかり躓いてしまった。
「危ないですわ!」
アリシアお嬢様がサッと人差し指をわたしの前に差し出してクッションを作ってくれたから、痛い思いはせずにすんだ。柔らかい指を触りながらホッと息を吐くと、アリシアお嬢様に話しかけられる。
「そろそろ満足しましたわ。いっぱい運んでくれてありがとうですの」
ソッとわたしの頭を人差し指で撫でた後、アリシアお嬢様はスプーンで残りのコーンを全て掬ってしまった。
まだ半分以上あったと思うけれど、アリシアお嬢様はほんの少しの動作で全て回収してしまう。わたしを乗せることもできそうな大きなスプーンが軽々と宙を移動していく姿は圧巻だった。
これで食事の時間は終わり。せっかくまたアリシアお嬢様と話せる機会がもらえたのに、ただ食事をするだけになってしまっていた。なんとか元に戻るための手段を探さないといけないのに。今日は何の手がかりも得られなかった。
きっと食事が終わったら、わたしは小さなドールハウスのメイド部屋に戻らなければならない。その前に、少しで良いから何らかの糸口が欲しい。
「あの、アリシアお嬢様……」
「どうしましたの?」
わたしは声を顰めながら、小さな声で現状を伝えようとする。
「わたし、実は昔はこんな大きさじゃなかったんです。誰かに小さくされてしまったんです。だから、元に戻るための方法を探していて……」
以前、昔は小さくなかったことを伝えようとした時にはエミリアの手のひらに押しつぶされたけど、今日はなぜか最後まで伝えきれた。もしかしたら、エミリアは今日は機嫌が良いから、少し込み入ったことをアリシアお嬢様に伝えても大丈夫なのかもしれない。
わたしは小さくガッツポーズをしながらアリシアお嬢様の反応を確認した。けれど、なぜかキョトンとした顔で首を傾げてわたしのほうをジッと見ていた。
「ごめんなさい、聞こえませんでしたわ。もう一回言ってほしいですの」
どうやら元々サイズ差のせいで小さかった声をさらに顰めてしまったから、全然聞こえていなかったらしい。近くのアリシアお嬢様にも聞こえていないのだから、それより遠くにいるエミリアにも聞こえていなかった。それだけのことだったようだ。
「えっと……」
わたしが困惑していると、アリシアお嬢様の奥から、エミリアの冷たい声が飛んでくる。
「何かプライバシーに関わるお話でもされているのですか? 以前もお伝えした通り、お互いのプライバシーに関するような話をすることは禁止されていますけど」
「違いますわ。おそらく今日のご飯の味でも伝えてくれていただけだと思いますわ。ですわよね、カロリーナ?」
「……はい。今日のステーキが美味しかったのを伝えようとしたんですけど、お腹がいっぱいでうまく声が出せなかったみたいです」
我ながら咄嗟にうまく言い訳ができたというホッとした感情と、結局アリシアお嬢様には何も伝えることができなかった落胆の感情の両方が入り混じっていたのだった。
コーンを15個くらいアリシアお嬢様の口に放り込んだ辺りで、つい声が漏れてしまった。
スプーン一掬い分くらいにも満たないくらいのコーンだけど、それを食べさせるのはかなりの労力だった。アリシアお嬢様はコーン一粒なんて一瞬で飲み込んでしまうから、インターバルなんてほとんどない。口に投げ込んだ瞬間に喉の奥に吸い込まれてしまうコーンを補充するために、わたしはあくせく走りまわっていた。
「そんなに急がなくても良いですのよ?」
アリシアお嬢様が心配そうにわたしを見つめてくれていて、なんだか申し訳なくなってしまう。
しかも、少し急ごうとした時に、わたしはうっかり躓いてしまった。
「危ないですわ!」
アリシアお嬢様がサッと人差し指をわたしの前に差し出してクッションを作ってくれたから、痛い思いはせずにすんだ。柔らかい指を触りながらホッと息を吐くと、アリシアお嬢様に話しかけられる。
「そろそろ満足しましたわ。いっぱい運んでくれてありがとうですの」
ソッとわたしの頭を人差し指で撫でた後、アリシアお嬢様はスプーンで残りのコーンを全て掬ってしまった。
まだ半分以上あったと思うけれど、アリシアお嬢様はほんの少しの動作で全て回収してしまう。わたしを乗せることもできそうな大きなスプーンが軽々と宙を移動していく姿は圧巻だった。
これで食事の時間は終わり。せっかくまたアリシアお嬢様と話せる機会がもらえたのに、ただ食事をするだけになってしまっていた。なんとか元に戻るための手段を探さないといけないのに。今日は何の手がかりも得られなかった。
きっと食事が終わったら、わたしは小さなドールハウスのメイド部屋に戻らなければならない。その前に、少しで良いから何らかの糸口が欲しい。
「あの、アリシアお嬢様……」
「どうしましたの?」
わたしは声を顰めながら、小さな声で現状を伝えようとする。
「わたし、実は昔はこんな大きさじゃなかったんです。誰かに小さくされてしまったんです。だから、元に戻るための方法を探していて……」
以前、昔は小さくなかったことを伝えようとした時にはエミリアの手のひらに押しつぶされたけど、今日はなぜか最後まで伝えきれた。もしかしたら、エミリアは今日は機嫌が良いから、少し込み入ったことをアリシアお嬢様に伝えても大丈夫なのかもしれない。
わたしは小さくガッツポーズをしながらアリシアお嬢様の反応を確認した。けれど、なぜかキョトンとした顔で首を傾げてわたしのほうをジッと見ていた。
「ごめんなさい、聞こえませんでしたわ。もう一回言ってほしいですの」
どうやら元々サイズ差のせいで小さかった声をさらに顰めてしまったから、全然聞こえていなかったらしい。近くのアリシアお嬢様にも聞こえていないのだから、それより遠くにいるエミリアにも聞こえていなかった。それだけのことだったようだ。
「えっと……」
わたしが困惑していると、アリシアお嬢様の奥から、エミリアの冷たい声が飛んでくる。
「何かプライバシーに関わるお話でもされているのですか? 以前もお伝えした通り、お互いのプライバシーに関するような話をすることは禁止されていますけど」
「違いますわ。おそらく今日のご飯の味でも伝えてくれていただけだと思いますわ。ですわよね、カロリーナ?」
「……はい。今日のステーキが美味しかったのを伝えようとしたんですけど、お腹がいっぱいでうまく声が出せなかったみたいです」
我ながら咄嗟にうまく言い訳ができたというホッとした感情と、結局アリシアお嬢様には何も伝えることができなかった落胆の感情の両方が入り混じっていたのだった。
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