37 / 160
Ⅰ 手乗りサイズの新米メイド
リティシア家のお嬢様 1
しおりを挟む
「……、なあ、キャンディ、メロディ。なんでこいつはこんなにもぼんやりしてるんだよ……?」
カロリーナの目の前で、リオナが困惑しながら手を上下に翳していた。
「どうしてだろうね?」
「エミリアに押し潰されたから?」
「またあの意地悪メイドかよ!」
リオナがカロリーナの肩を持って、体を思いっきりゆすった。
「おい、お前マジで何があったんだよ!
すっかりアリシアお嬢様とのキスで現実離れしていたわたしの心がやっと戻ってくる。
「あ、リオナ! どうしたの?」
「お前、なんかぼーっとしてたぞ。何があったんだよ。エミリアのせいか?」
「いや……、エミリアじゃなくて……」
先ほどわたしの顔を優しく覆ったアリシアお嬢様の柔らかい唇を思い出して、わたしは両手で頬を抑えた。あのキスは、初めてやってきた子みんなにしているのだろうか。
「ねえ、リオナはアリシアお嬢様にキスされたことある?」
「はぁ? いきなり何言ってんだよ?」
「キャンディは無いよ」
「メロディも無い」
「もちろん、あたしもないけど……」
リオナがわたしの方をジッと見た。
「つまり、キスされたってことか?」
「えっと……」と答えに悩んでいると、先にキャンディとメロディが答えてしまった。
「カロリーナ、チューされてたよ!」
「チューだよ! チュー!」
ご丁寧に、そっくりな2人は、正面で向き合って鏡写しみたいに唇を突き出しあってキスの真似をしながら答えてくれた。恥ずかしくなって、わたしは俯く。
「でも、キスしてもらえるくらい仲良くなったってことは前進だな!」
リオナが嬉しそうに笑ったけれど、わたしは首を傾げた。
「何のことだっけ?」
「何って、アリシアお嬢様と仲良くして小さくなった謎を探るんだろ?」
「あ! そうだった!」
「そうだったって、ちゃんと覚えとけよな……」
リオナは少し呆れながら尋ねてくる。
「で、何かわかったのかよ? あたしたちが小さくなった謎が」
「えっと……。聞こうと思ったら、エミリアさんが邪魔してきて……」
「またエミリアかよ」
リオナが苛立った口調で返した。
「カロリーナ、ぺったんこ!」
「ぺったんこ、ぺったんこ!」
キャンディとメロディがお互いの手の甲を軽く叩き合って、パチパチと音を鳴らしていた。多分、わたしがエミリアの手のひらで机に押し付けられていたことを表現しているのだと思う。
「なんでエミリアがそんなに邪魔してくるんだよ?」
「それはわからないけれど、とりあえず、お互いを詮索したらダメだって言われて……」
「なあ、やっぱりあたしたちを小さくした魔女の正体ってエミリアじゃねえのか?」
リオナは真面目な顔で言った。
「どうして?」
「だって、あいつ明らかにあたしらに敵対心持ってんじゃねえか。どう考えたって怪しい」
リオナが納得しているし、わたしも同様にエミリアのことはとても怪しいとは思った。ただ、無闇に決めつけて間違った方向に推理を進めていくのは危険だから、わたしは必要以上にはリオナに同意はしなかった。
「仮にエミリアさんが怪しいとして、どうやって調査するつもり?」
猫の首に鈴をつけようとするネズミの話を思い出す。解決策はわかっていても、わたしたちがエミリアに協力を仰ぐなんて、絶対に無理だと思う。リオナも「うーん」少し唸ってから、押し黙ってしまった。そして、少しの間考え込んでから口を開く。
カロリーナの目の前で、リオナが困惑しながら手を上下に翳していた。
「どうしてだろうね?」
「エミリアに押し潰されたから?」
「またあの意地悪メイドかよ!」
リオナがカロリーナの肩を持って、体を思いっきりゆすった。
「おい、お前マジで何があったんだよ!
すっかりアリシアお嬢様とのキスで現実離れしていたわたしの心がやっと戻ってくる。
「あ、リオナ! どうしたの?」
「お前、なんかぼーっとしてたぞ。何があったんだよ。エミリアのせいか?」
「いや……、エミリアじゃなくて……」
先ほどわたしの顔を優しく覆ったアリシアお嬢様の柔らかい唇を思い出して、わたしは両手で頬を抑えた。あのキスは、初めてやってきた子みんなにしているのだろうか。
「ねえ、リオナはアリシアお嬢様にキスされたことある?」
「はぁ? いきなり何言ってんだよ?」
「キャンディは無いよ」
「メロディも無い」
「もちろん、あたしもないけど……」
リオナがわたしの方をジッと見た。
「つまり、キスされたってことか?」
「えっと……」と答えに悩んでいると、先にキャンディとメロディが答えてしまった。
「カロリーナ、チューされてたよ!」
「チューだよ! チュー!」
ご丁寧に、そっくりな2人は、正面で向き合って鏡写しみたいに唇を突き出しあってキスの真似をしながら答えてくれた。恥ずかしくなって、わたしは俯く。
「でも、キスしてもらえるくらい仲良くなったってことは前進だな!」
リオナが嬉しそうに笑ったけれど、わたしは首を傾げた。
「何のことだっけ?」
「何って、アリシアお嬢様と仲良くして小さくなった謎を探るんだろ?」
「あ! そうだった!」
「そうだったって、ちゃんと覚えとけよな……」
リオナは少し呆れながら尋ねてくる。
「で、何かわかったのかよ? あたしたちが小さくなった謎が」
「えっと……。聞こうと思ったら、エミリアさんが邪魔してきて……」
「またエミリアかよ」
リオナが苛立った口調で返した。
「カロリーナ、ぺったんこ!」
「ぺったんこ、ぺったんこ!」
キャンディとメロディがお互いの手の甲を軽く叩き合って、パチパチと音を鳴らしていた。多分、わたしがエミリアの手のひらで机に押し付けられていたことを表現しているのだと思う。
「なんでエミリアがそんなに邪魔してくるんだよ?」
「それはわからないけれど、とりあえず、お互いを詮索したらダメだって言われて……」
「なあ、やっぱりあたしたちを小さくした魔女の正体ってエミリアじゃねえのか?」
リオナは真面目な顔で言った。
「どうして?」
「だって、あいつ明らかにあたしらに敵対心持ってんじゃねえか。どう考えたって怪しい」
リオナが納得しているし、わたしも同様にエミリアのことはとても怪しいとは思った。ただ、無闇に決めつけて間違った方向に推理を進めていくのは危険だから、わたしは必要以上にはリオナに同意はしなかった。
「仮にエミリアさんが怪しいとして、どうやって調査するつもり?」
猫の首に鈴をつけようとするネズミの話を思い出す。解決策はわかっていても、わたしたちがエミリアに協力を仰ぐなんて、絶対に無理だと思う。リオナも「うーん」少し唸ってから、押し黙ってしまった。そして、少しの間考え込んでから口を開く。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。


【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる