33 / 160
Ⅰ 手乗りサイズの新米メイド
手がかりを探そう! 4
しおりを挟む
「たとえばさ、通り魔的に人を小さくしては放置する、みたいな奴じゃないよね、きっと」
わたしたちはみんな同じ場所に集められているから、きっと誰かが何かの意図を持ってやっている。
「エミリアが意地悪する相手を探すためにやってんじゃねえのか?」
「でも、あのキスしてきた女性がエミリアさんかどうかって言われたら違う気がするけど……」
「エミリアみたいな真面目そうな雰囲気じゃなかったよな」
「そもそも、わたしたちが今まで会ってきた相手の誰とも違うと思う」
「屋敷の中にはエミリアと同じサイズのメイドがわんさかいるから、その中に紛れてる可能性もありそうだな」
「一人一人見て行ったら見つかるかな?」
「全員見たら見つかるかもしれねえけど」
「よし! じゃあ見つけに——」
わたしが立ち上がると、またリオナがわたしの手首を掴んだ。
「あのな、早とちりおじょうさま。どうやって全員の顔見ていくんだよ?」
「あっ……」
「まずあたしたちは自力じゃアリシアお嬢様の部屋から出ることすら出来ねえんだぞ?」
「それは……」
「それに、仮に隙間が開いていたりして部屋から出られたとしても、地面から遥か高い場所にあるメイドの顔を見ても、きっとピンと来ねえぞ。正面から同じくらいのサイズで見た顔と、下から見上げた巨人の顔はまったく違えんだから」
「結局、大きな人間の協力が必要ってことになるね」
わたしの言葉を聞いて、リオナが大きく頷いた。
わたしとリオナで一緒に部屋の外に出ても、きっと次々降ってくるメイド用の靴から逃げるのに必死で確認どころではなさそうだ。
「もっとも、協力を頼めるやつなんて限られてくるがな」
そもそも会ったことがあるのが、アリシアお嬢様とエミリアくらいだし、エミリアに協力なんて依頼したら、怒られてそのまま踏み潰されてしまいそうだ。
「……アリシアお嬢様に頼むしかないのかな?」
「だろうな。まあ、アリシアのこと使いっ走りみたいな扱いしたら、ソフィアにバレたらめちゃくちゃ怒られるだろうけど」
「それに、そもそも勝手に外に出たらベイリーさんに怒られるから、アリシアお嬢様に接触できる数も限られてくるかもしれないし……」
そこまで言って、わたしたちは一度ため息をついた。
「ソフィアさんとベイリーさんはあんまり信用できない感じなのかな?」
「うーん、あたしもわかんねえけど、頼ったところであたしたちと同じサイズ感だし、あんまり進展は見込めねえんじゃねえのか? 2人とも何か大事なこと隠してる感もすごいしな」
「そうだね。それに、ベイリーさんはいろいろ聞いたら怒りそうだし……」
屋敷案内をしてもらった日にベイリーに言われた言葉を思い出す。
『深く詮索したら、あなた自身の首を絞めてしまうことになるから』
それに、屋敷から出ようとしたときにもかなり怖い声で注意された。
ベイリーは普段は常に微笑んでいる面倒見の良いお姉さんなのに、時々とても冷たい視線と声を出す。それは大抵わたしがこの屋敷の秘密を探ろうとしたとき。今回の目的は、もちろん秘密を探ることに近いことになる。だから、ベイリーからの協力は難しそう。むしろ、バレないように、秘密のひの字も匂わせないようにしないといけない。
ソフィアはソフィアで巨大なお嬢様に棚から机に運んでもらおうと提案しただけで冷たい声で怒ってきたし。あの2人には協力を仰ぐどころかこっそり動いていることがバレたら大変だ。
「じゃあ、ベイリーさんとソフィアさんの目を盗んで、こっそり外に出るしかなってことだね」
「それもあんまり得策じゃねえな。音をしっかり聞いているのかわからねえけど、出ようとしたらベイリーは必ず止めてくるんだよ。それに、あいつらは部屋に窓があるし、うまくこっそり出れても窓から見られてバレそうだな」
ついさっきも外に出ようとしたときには、しっかりとベイリーに止められたわけだから、外に出ようとしたらしっかりとバレてしまうらしい。
「じゃあ、わたしたちに外に出る術はないんですね」
わたしが俯くと、リオナがポンポンと頭を触ってくる。
「まあ、そう落ち込むなよ。そうやってこっそりやろうと思うから詰んじまうんだよ。正面突破してやろうぜ」
「正面突破……?」
リオナが大きく頷いて、いたずらっ子みたいな無邪気な笑みを浮かべた。
「簡単だよ。アリシアに呼ばれたら外に出られるんだから、頻繁に呼んで貰えばいいんだよ」
わたしはリオナの言葉をじっと聞いた。
「基本的にキャンディとメロディが話し相手とか愛でる相手としてよく呼ばれるから、そのときに保護者代わりにあたしらも行ったら良いわけだ」
「保護者代わり?」
そういえば、前も自然にリオナは双子が呼ばれたときに外に出ていた。
「アリシアお嬢様は、エミリアとは違って、とってもあたしたちのことを可愛がってくれてるんだよ。だから、少しでも傷つけたりするリスクは取りたがらない。キャンディとメロディだけを呼んで、走り回って机やベッドから落ちてしまったときに誤って踏んだりしないように、危なくないようにあたしも同行したりするんだよ。そのときに事情を説明して頻繁に呼んでもらえるようにしようぜ。それで、秘密を探り出すんだ」
「そんな上手くいくのかな……?」
「今はそのくらいしか思いつかねえから、とりあえず試してみようぜ」
「そうだね。じゃあ、キャンディとメロディも一緒に、アリシアお嬢様と仲良し大作戦だね」
「だっせーネーミングだな」
リオナは苦笑いをしていたけど、キャンディとメロディは嬉しそうに笑っていた。
「仲良し大作戦だー」
「仲良し! 仲良し!」
こうして、元に戻るための作戦は始動したのだった。
わたしたちはみんな同じ場所に集められているから、きっと誰かが何かの意図を持ってやっている。
「エミリアが意地悪する相手を探すためにやってんじゃねえのか?」
「でも、あのキスしてきた女性がエミリアさんかどうかって言われたら違う気がするけど……」
「エミリアみたいな真面目そうな雰囲気じゃなかったよな」
「そもそも、わたしたちが今まで会ってきた相手の誰とも違うと思う」
「屋敷の中にはエミリアと同じサイズのメイドがわんさかいるから、その中に紛れてる可能性もありそうだな」
「一人一人見て行ったら見つかるかな?」
「全員見たら見つかるかもしれねえけど」
「よし! じゃあ見つけに——」
わたしが立ち上がると、またリオナがわたしの手首を掴んだ。
「あのな、早とちりおじょうさま。どうやって全員の顔見ていくんだよ?」
「あっ……」
「まずあたしたちは自力じゃアリシアお嬢様の部屋から出ることすら出来ねえんだぞ?」
「それは……」
「それに、仮に隙間が開いていたりして部屋から出られたとしても、地面から遥か高い場所にあるメイドの顔を見ても、きっとピンと来ねえぞ。正面から同じくらいのサイズで見た顔と、下から見上げた巨人の顔はまったく違えんだから」
「結局、大きな人間の協力が必要ってことになるね」
わたしの言葉を聞いて、リオナが大きく頷いた。
わたしとリオナで一緒に部屋の外に出ても、きっと次々降ってくるメイド用の靴から逃げるのに必死で確認どころではなさそうだ。
「もっとも、協力を頼めるやつなんて限られてくるがな」
そもそも会ったことがあるのが、アリシアお嬢様とエミリアくらいだし、エミリアに協力なんて依頼したら、怒られてそのまま踏み潰されてしまいそうだ。
「……アリシアお嬢様に頼むしかないのかな?」
「だろうな。まあ、アリシアのこと使いっ走りみたいな扱いしたら、ソフィアにバレたらめちゃくちゃ怒られるだろうけど」
「それに、そもそも勝手に外に出たらベイリーさんに怒られるから、アリシアお嬢様に接触できる数も限られてくるかもしれないし……」
そこまで言って、わたしたちは一度ため息をついた。
「ソフィアさんとベイリーさんはあんまり信用できない感じなのかな?」
「うーん、あたしもわかんねえけど、頼ったところであたしたちと同じサイズ感だし、あんまり進展は見込めねえんじゃねえのか? 2人とも何か大事なこと隠してる感もすごいしな」
「そうだね。それに、ベイリーさんはいろいろ聞いたら怒りそうだし……」
屋敷案内をしてもらった日にベイリーに言われた言葉を思い出す。
『深く詮索したら、あなた自身の首を絞めてしまうことになるから』
それに、屋敷から出ようとしたときにもかなり怖い声で注意された。
ベイリーは普段は常に微笑んでいる面倒見の良いお姉さんなのに、時々とても冷たい視線と声を出す。それは大抵わたしがこの屋敷の秘密を探ろうとしたとき。今回の目的は、もちろん秘密を探ることに近いことになる。だから、ベイリーからの協力は難しそう。むしろ、バレないように、秘密のひの字も匂わせないようにしないといけない。
ソフィアはソフィアで巨大なお嬢様に棚から机に運んでもらおうと提案しただけで冷たい声で怒ってきたし。あの2人には協力を仰ぐどころかこっそり動いていることがバレたら大変だ。
「じゃあ、ベイリーさんとソフィアさんの目を盗んで、こっそり外に出るしかなってことだね」
「それもあんまり得策じゃねえな。音をしっかり聞いているのかわからねえけど、出ようとしたらベイリーは必ず止めてくるんだよ。それに、あいつらは部屋に窓があるし、うまくこっそり出れても窓から見られてバレそうだな」
ついさっきも外に出ようとしたときには、しっかりとベイリーに止められたわけだから、外に出ようとしたらしっかりとバレてしまうらしい。
「じゃあ、わたしたちに外に出る術はないんですね」
わたしが俯くと、リオナがポンポンと頭を触ってくる。
「まあ、そう落ち込むなよ。そうやってこっそりやろうと思うから詰んじまうんだよ。正面突破してやろうぜ」
「正面突破……?」
リオナが大きく頷いて、いたずらっ子みたいな無邪気な笑みを浮かべた。
「簡単だよ。アリシアに呼ばれたら外に出られるんだから、頻繁に呼んで貰えばいいんだよ」
わたしはリオナの言葉をじっと聞いた。
「基本的にキャンディとメロディが話し相手とか愛でる相手としてよく呼ばれるから、そのときに保護者代わりにあたしらも行ったら良いわけだ」
「保護者代わり?」
そういえば、前も自然にリオナは双子が呼ばれたときに外に出ていた。
「アリシアお嬢様は、エミリアとは違って、とってもあたしたちのことを可愛がってくれてるんだよ。だから、少しでも傷つけたりするリスクは取りたがらない。キャンディとメロディだけを呼んで、走り回って机やベッドから落ちてしまったときに誤って踏んだりしないように、危なくないようにあたしも同行したりするんだよ。そのときに事情を説明して頻繁に呼んでもらえるようにしようぜ。それで、秘密を探り出すんだ」
「そんな上手くいくのかな……?」
「今はそのくらいしか思いつかねえから、とりあえず試してみようぜ」
「そうだね。じゃあ、キャンディとメロディも一緒に、アリシアお嬢様と仲良し大作戦だね」
「だっせーネーミングだな」
リオナは苦笑いをしていたけど、キャンディとメロディは嬉しそうに笑っていた。
「仲良し大作戦だー」
「仲良し! 仲良し!」
こうして、元に戻るための作戦は始動したのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
君は今日から美少女だ
藤
恋愛
高校一年生の恵也は友人たちと過ごす時間がずっと続くと思っていた。しかし日常は一瞬にして恵也の考えもしない形で変わることになった。女性になってしまった恵也は戸惑いながらもそのまま過ごすと覚悟を決める。しかしその覚悟の裏で友人たちの今までにない側面が見えてきて……
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる