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Ⅰ 手乗りサイズの新米メイド
手がかりを探そう! 4
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「たとえばさ、通り魔的に人を小さくしては放置する、みたいな奴じゃないよね、きっと」
わたしたちはみんな同じ場所に集められているから、きっと誰かが何かの意図を持ってやっている。
「エミリアが意地悪する相手を探すためにやってんじゃねえのか?」
「でも、あのキスしてきた女性がエミリアさんかどうかって言われたら違う気がするけど……」
「エミリアみたいな真面目そうな雰囲気じゃなかったよな」
「そもそも、わたしたちが今まで会ってきた相手の誰とも違うと思う」
「屋敷の中にはエミリアと同じサイズのメイドがわんさかいるから、その中に紛れてる可能性もありそうだな」
「一人一人見て行ったら見つかるかな?」
「全員見たら見つかるかもしれねえけど」
「よし! じゃあ見つけに——」
わたしが立ち上がると、またリオナがわたしの手首を掴んだ。
「あのな、早とちりおじょうさま。どうやって全員の顔見ていくんだよ?」
「あっ……」
「まずあたしたちは自力じゃアリシアお嬢様の部屋から出ることすら出来ねえんだぞ?」
「それは……」
「それに、仮に隙間が開いていたりして部屋から出られたとしても、地面から遥か高い場所にあるメイドの顔を見ても、きっとピンと来ねえぞ。正面から同じくらいのサイズで見た顔と、下から見上げた巨人の顔はまったく違えんだから」
「結局、大きな人間の協力が必要ってことになるね」
わたしの言葉を聞いて、リオナが大きく頷いた。
わたしとリオナで一緒に部屋の外に出ても、きっと次々降ってくるメイド用の靴から逃げるのに必死で確認どころではなさそうだ。
「もっとも、協力を頼めるやつなんて限られてくるがな」
そもそも会ったことがあるのが、アリシアお嬢様とエミリアくらいだし、エミリアに協力なんて依頼したら、怒られてそのまま踏み潰されてしまいそうだ。
「……アリシアお嬢様に頼むしかないのかな?」
「だろうな。まあ、アリシアのこと使いっ走りみたいな扱いしたら、ソフィアにバレたらめちゃくちゃ怒られるだろうけど」
「それに、そもそも勝手に外に出たらベイリーさんに怒られるから、アリシアお嬢様に接触できる数も限られてくるかもしれないし……」
そこまで言って、わたしたちは一度ため息をついた。
「ソフィアさんとベイリーさんはあんまり信用できない感じなのかな?」
「うーん、あたしもわかんねえけど、頼ったところであたしたちと同じサイズ感だし、あんまり進展は見込めねえんじゃねえのか? 2人とも何か大事なこと隠してる感もすごいしな」
「そうだね。それに、ベイリーさんはいろいろ聞いたら怒りそうだし……」
屋敷案内をしてもらった日にベイリーに言われた言葉を思い出す。
『深く詮索したら、あなた自身の首を絞めてしまうことになるから』
それに、屋敷から出ようとしたときにもかなり怖い声で注意された。
ベイリーは普段は常に微笑んでいる面倒見の良いお姉さんなのに、時々とても冷たい視線と声を出す。それは大抵わたしがこの屋敷の秘密を探ろうとしたとき。今回の目的は、もちろん秘密を探ることに近いことになる。だから、ベイリーからの協力は難しそう。むしろ、バレないように、秘密のひの字も匂わせないようにしないといけない。
ソフィアはソフィアで巨大なお嬢様に棚から机に運んでもらおうと提案しただけで冷たい声で怒ってきたし。あの2人には協力を仰ぐどころかこっそり動いていることがバレたら大変だ。
「じゃあ、ベイリーさんとソフィアさんの目を盗んで、こっそり外に出るしかなってことだね」
「それもあんまり得策じゃねえな。音をしっかり聞いているのかわからねえけど、出ようとしたらベイリーは必ず止めてくるんだよ。それに、あいつらは部屋に窓があるし、うまくこっそり出れても窓から見られてバレそうだな」
ついさっきも外に出ようとしたときには、しっかりとベイリーに止められたわけだから、外に出ようとしたらしっかりとバレてしまうらしい。
「じゃあ、わたしたちに外に出る術はないんですね」
わたしが俯くと、リオナがポンポンと頭を触ってくる。
「まあ、そう落ち込むなよ。そうやってこっそりやろうと思うから詰んじまうんだよ。正面突破してやろうぜ」
「正面突破……?」
リオナが大きく頷いて、いたずらっ子みたいな無邪気な笑みを浮かべた。
「簡単だよ。アリシアに呼ばれたら外に出られるんだから、頻繁に呼んで貰えばいいんだよ」
わたしはリオナの言葉をじっと聞いた。
「基本的にキャンディとメロディが話し相手とか愛でる相手としてよく呼ばれるから、そのときに保護者代わりにあたしらも行ったら良いわけだ」
「保護者代わり?」
そういえば、前も自然にリオナは双子が呼ばれたときに外に出ていた。
「アリシアお嬢様は、エミリアとは違って、とってもあたしたちのことを可愛がってくれてるんだよ。だから、少しでも傷つけたりするリスクは取りたがらない。キャンディとメロディだけを呼んで、走り回って机やベッドから落ちてしまったときに誤って踏んだりしないように、危なくないようにあたしも同行したりするんだよ。そのときに事情を説明して頻繁に呼んでもらえるようにしようぜ。それで、秘密を探り出すんだ」
「そんな上手くいくのかな……?」
「今はそのくらいしか思いつかねえから、とりあえず試してみようぜ」
「そうだね。じゃあ、キャンディとメロディも一緒に、アリシアお嬢様と仲良し大作戦だね」
「だっせーネーミングだな」
リオナは苦笑いをしていたけど、キャンディとメロディは嬉しそうに笑っていた。
「仲良し大作戦だー」
「仲良し! 仲良し!」
こうして、元に戻るための作戦は始動したのだった。
わたしたちはみんな同じ場所に集められているから、きっと誰かが何かの意図を持ってやっている。
「エミリアが意地悪する相手を探すためにやってんじゃねえのか?」
「でも、あのキスしてきた女性がエミリアさんかどうかって言われたら違う気がするけど……」
「エミリアみたいな真面目そうな雰囲気じゃなかったよな」
「そもそも、わたしたちが今まで会ってきた相手の誰とも違うと思う」
「屋敷の中にはエミリアと同じサイズのメイドがわんさかいるから、その中に紛れてる可能性もありそうだな」
「一人一人見て行ったら見つかるかな?」
「全員見たら見つかるかもしれねえけど」
「よし! じゃあ見つけに——」
わたしが立ち上がると、またリオナがわたしの手首を掴んだ。
「あのな、早とちりおじょうさま。どうやって全員の顔見ていくんだよ?」
「あっ……」
「まずあたしたちは自力じゃアリシアお嬢様の部屋から出ることすら出来ねえんだぞ?」
「それは……」
「それに、仮に隙間が開いていたりして部屋から出られたとしても、地面から遥か高い場所にあるメイドの顔を見ても、きっとピンと来ねえぞ。正面から同じくらいのサイズで見た顔と、下から見上げた巨人の顔はまったく違えんだから」
「結局、大きな人間の協力が必要ってことになるね」
わたしの言葉を聞いて、リオナが大きく頷いた。
わたしとリオナで一緒に部屋の外に出ても、きっと次々降ってくるメイド用の靴から逃げるのに必死で確認どころではなさそうだ。
「もっとも、協力を頼めるやつなんて限られてくるがな」
そもそも会ったことがあるのが、アリシアお嬢様とエミリアくらいだし、エミリアに協力なんて依頼したら、怒られてそのまま踏み潰されてしまいそうだ。
「……アリシアお嬢様に頼むしかないのかな?」
「だろうな。まあ、アリシアのこと使いっ走りみたいな扱いしたら、ソフィアにバレたらめちゃくちゃ怒られるだろうけど」
「それに、そもそも勝手に外に出たらベイリーさんに怒られるから、アリシアお嬢様に接触できる数も限られてくるかもしれないし……」
そこまで言って、わたしたちは一度ため息をついた。
「ソフィアさんとベイリーさんはあんまり信用できない感じなのかな?」
「うーん、あたしもわかんねえけど、頼ったところであたしたちと同じサイズ感だし、あんまり進展は見込めねえんじゃねえのか? 2人とも何か大事なこと隠してる感もすごいしな」
「そうだね。それに、ベイリーさんはいろいろ聞いたら怒りそうだし……」
屋敷案内をしてもらった日にベイリーに言われた言葉を思い出す。
『深く詮索したら、あなた自身の首を絞めてしまうことになるから』
それに、屋敷から出ようとしたときにもかなり怖い声で注意された。
ベイリーは普段は常に微笑んでいる面倒見の良いお姉さんなのに、時々とても冷たい視線と声を出す。それは大抵わたしがこの屋敷の秘密を探ろうとしたとき。今回の目的は、もちろん秘密を探ることに近いことになる。だから、ベイリーからの協力は難しそう。むしろ、バレないように、秘密のひの字も匂わせないようにしないといけない。
ソフィアはソフィアで巨大なお嬢様に棚から机に運んでもらおうと提案しただけで冷たい声で怒ってきたし。あの2人には協力を仰ぐどころかこっそり動いていることがバレたら大変だ。
「じゃあ、ベイリーさんとソフィアさんの目を盗んで、こっそり外に出るしかなってことだね」
「それもあんまり得策じゃねえな。音をしっかり聞いているのかわからねえけど、出ようとしたらベイリーは必ず止めてくるんだよ。それに、あいつらは部屋に窓があるし、うまくこっそり出れても窓から見られてバレそうだな」
ついさっきも外に出ようとしたときには、しっかりとベイリーに止められたわけだから、外に出ようとしたらしっかりとバレてしまうらしい。
「じゃあ、わたしたちに外に出る術はないんですね」
わたしが俯くと、リオナがポンポンと頭を触ってくる。
「まあ、そう落ち込むなよ。そうやってこっそりやろうと思うから詰んじまうんだよ。正面突破してやろうぜ」
「正面突破……?」
リオナが大きく頷いて、いたずらっ子みたいな無邪気な笑みを浮かべた。
「簡単だよ。アリシアに呼ばれたら外に出られるんだから、頻繁に呼んで貰えばいいんだよ」
わたしはリオナの言葉をじっと聞いた。
「基本的にキャンディとメロディが話し相手とか愛でる相手としてよく呼ばれるから、そのときに保護者代わりにあたしらも行ったら良いわけだ」
「保護者代わり?」
そういえば、前も自然にリオナは双子が呼ばれたときに外に出ていた。
「アリシアお嬢様は、エミリアとは違って、とってもあたしたちのことを可愛がってくれてるんだよ。だから、少しでも傷つけたりするリスクは取りたがらない。キャンディとメロディだけを呼んで、走り回って机やベッドから落ちてしまったときに誤って踏んだりしないように、危なくないようにあたしも同行したりするんだよ。そのときに事情を説明して頻繁に呼んでもらえるようにしようぜ。それで、秘密を探り出すんだ」
「そんな上手くいくのかな……?」
「今はそのくらいしか思いつかねえから、とりあえず試してみようぜ」
「そうだね。じゃあ、キャンディとメロディも一緒に、アリシアお嬢様と仲良し大作戦だね」
「だっせーネーミングだな」
リオナは苦笑いをしていたけど、キャンディとメロディは嬉しそうに笑っていた。
「仲良し大作戦だー」
「仲良し! 仲良し!」
こうして、元に戻るための作戦は始動したのだった。
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