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Ⅰ 手乗りサイズの新米メイド
現実 3
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「わたし、元々婚約者がいたんだ」
「すげえな。カロリーナってあたしと同じくらいの歳だろ?」
「ええ。まだ14歳だけど、もう婚約者がいたの。相手の顔を見たこともないけど」
「1つしか歳変わんねーのに、なんかお前大人だな」
リオナが興味津々で頷いた。
「大人じゃないよ。ただ、親に言われた通りの道を無理やり歩かされてただけ。いわゆる政略結婚っていうやつ。わたしの意思とは関係なく、親が勝手に決めて、国内での自分達の立場をよくするためにわたしを使おうとしたの。だから、それが嫌で、勢いで家を飛び出した」
「そうか……。でも、その婚約者と結婚しておいたら将来は安泰だったんじゃねえのか?」
「多分ね。でも、あの時のわたしはそんな選択肢を選ぶよりも外にでて一人で自分の道を選んだほうが幸せだと思ってたのよ」
「だけど外に出て、うまくいかなかったってわけか」
「生活力は何もなかったからね……。ずっとメイドに助けてもらってたから、わたしは何もできなくて、お金はないから、まともに食事も取れなくて、いつの間にかわたしは路上に倒れてた」
「まあ、そうなるよなぁ」とリオナが小さくため息をつく。
「で、結局倒れてたところを謎の女性に助けてもらったの……」
「謎の女性……。もしかして、前髪が長くて真っ赤なルージュ引いてるやつか?」
「そう! まさにその人!」
「あたしもそいつと会って、目が覚めたらここにいた」
「つまり、わたしたちを小さくしたのはその人ってことで間違いないってことだよね……?」
「少なくとも、関連はしてるんだろうな」
「じゃあその人を探したら、わたしたちは元に戻れるんじゃ……?」
「かも知れねえけど……」
「探そう! 早く探して元に戻してもらおう!」
わたしが立ち上がって、早速部屋から出ようとしたところをリオナが手首をギュッと掴んで止めた。
「待てって」
「リオナも行こうよ!」
「どこにだよ?」
「そりゃ、その女の人のところにだよ」
「だから、そいつはどこにいるんだよって」
「わからないけど、とにかく見つけないと!」
「だから……」
「ああ、そっか……」
呆れたように頭を抱えるリオナの言いたいことが、ようやくわかった。そもそもわたしたちは、この屋敷を置いているアリシアお嬢様の私室から出ることすらできない。
少しの間、重たい空気が流れた。わたしたちが解決すべき課題は、あまりにも厄介だ。そんな空気を壊すみたいに、リオナがわたしの頬を引っ張りながら、笑いだした。優しく引っ張ってきているけれど、リオナは元の力が強いからか、結構力が加わってきていて、ちょっと痛い。
「な、何してるの!?」
「なんかお前、思慮深そうに見えて、意外と何も考えてねえな」
「なっ、何も考えてないって……」
わたしは揶揄われて恥ずかしくなり、頬を赤らめる。
「カロリーナってあたしが思ってるよりも面白いかも知れねえな」
「面白いって、そんな……」
「ま、一旦落ち着けって。とりあえず座れよ。しばらくはここで一緒に暮らしながら、糸口見つけようぜ。カロリーナおじょうさま」
リオナがわたしのことをお嬢様呼びして、揶揄うようにケラケラと笑った。
「バカにしないでよ……。それに、もう今はメイドだし」
わたしが俯きがちにベッドに腰掛けると、その横にリオナも座った。リオナはそのままわたしの腰に手を回して、優しく話してくる。
「バカになんてしてねえって。そんなに拗ねるなよ」
「拗ねてなんてないから!」
「まあまあ、あたしもお前が戻る方法探すの手伝ってやるから機嫌直せって」
「リオナだって、元に戻らないといけないでしょ?」
「どうなんだろうな。あたしは今の生活で満足してるし、そこまで急は要さねえんだけどな。けど、あの意地悪巨大メイドのエミリアのことは一発ぶん殴らないといけねえし、元の大きさに戻るのも悪くねえかもな」
うんうん、とリオナが頷いてから続ける。
「それに、少なくともお前が元に戻ったら、あたしが小さいままでも面倒見てもらえるから、お前のことだけでも元に戻さねえとな」
リオナが楽しそうに話した。今わたしよりも背の高いリオナが、わたしの手のひらに乗るサイズに見えるところを想像してみると、可愛らしくて笑みが溢れてしまった。威圧感のあるリオナの睨みも、きっと可愛らしく見えるに違いない。
「わたしだけ元に戻った時には、リオナのこと可愛がってあげるね。毎日美味しいパンを食べさせてあげる!」
「キャンディとメロディの分も頼むぜ」
うん、と大きく頷いてからわたしたちは笑い合ったのだった。
「すげえな。カロリーナってあたしと同じくらいの歳だろ?」
「ええ。まだ14歳だけど、もう婚約者がいたの。相手の顔を見たこともないけど」
「1つしか歳変わんねーのに、なんかお前大人だな」
リオナが興味津々で頷いた。
「大人じゃないよ。ただ、親に言われた通りの道を無理やり歩かされてただけ。いわゆる政略結婚っていうやつ。わたしの意思とは関係なく、親が勝手に決めて、国内での自分達の立場をよくするためにわたしを使おうとしたの。だから、それが嫌で、勢いで家を飛び出した」
「そうか……。でも、その婚約者と結婚しておいたら将来は安泰だったんじゃねえのか?」
「多分ね。でも、あの時のわたしはそんな選択肢を選ぶよりも外にでて一人で自分の道を選んだほうが幸せだと思ってたのよ」
「だけど外に出て、うまくいかなかったってわけか」
「生活力は何もなかったからね……。ずっとメイドに助けてもらってたから、わたしは何もできなくて、お金はないから、まともに食事も取れなくて、いつの間にかわたしは路上に倒れてた」
「まあ、そうなるよなぁ」とリオナが小さくため息をつく。
「で、結局倒れてたところを謎の女性に助けてもらったの……」
「謎の女性……。もしかして、前髪が長くて真っ赤なルージュ引いてるやつか?」
「そう! まさにその人!」
「あたしもそいつと会って、目が覚めたらここにいた」
「つまり、わたしたちを小さくしたのはその人ってことで間違いないってことだよね……?」
「少なくとも、関連はしてるんだろうな」
「じゃあその人を探したら、わたしたちは元に戻れるんじゃ……?」
「かも知れねえけど……」
「探そう! 早く探して元に戻してもらおう!」
わたしが立ち上がって、早速部屋から出ようとしたところをリオナが手首をギュッと掴んで止めた。
「待てって」
「リオナも行こうよ!」
「どこにだよ?」
「そりゃ、その女の人のところにだよ」
「だから、そいつはどこにいるんだよって」
「わからないけど、とにかく見つけないと!」
「だから……」
「ああ、そっか……」
呆れたように頭を抱えるリオナの言いたいことが、ようやくわかった。そもそもわたしたちは、この屋敷を置いているアリシアお嬢様の私室から出ることすらできない。
少しの間、重たい空気が流れた。わたしたちが解決すべき課題は、あまりにも厄介だ。そんな空気を壊すみたいに、リオナがわたしの頬を引っ張りながら、笑いだした。優しく引っ張ってきているけれど、リオナは元の力が強いからか、結構力が加わってきていて、ちょっと痛い。
「な、何してるの!?」
「なんかお前、思慮深そうに見えて、意外と何も考えてねえな」
「なっ、何も考えてないって……」
わたしは揶揄われて恥ずかしくなり、頬を赤らめる。
「カロリーナってあたしが思ってるよりも面白いかも知れねえな」
「面白いって、そんな……」
「ま、一旦落ち着けって。とりあえず座れよ。しばらくはここで一緒に暮らしながら、糸口見つけようぜ。カロリーナおじょうさま」
リオナがわたしのことをお嬢様呼びして、揶揄うようにケラケラと笑った。
「バカにしないでよ……。それに、もう今はメイドだし」
わたしが俯きがちにベッドに腰掛けると、その横にリオナも座った。リオナはそのままわたしの腰に手を回して、優しく話してくる。
「バカになんてしてねえって。そんなに拗ねるなよ」
「拗ねてなんてないから!」
「まあまあ、あたしもお前が戻る方法探すの手伝ってやるから機嫌直せって」
「リオナだって、元に戻らないといけないでしょ?」
「どうなんだろうな。あたしは今の生活で満足してるし、そこまで急は要さねえんだけどな。けど、あの意地悪巨大メイドのエミリアのことは一発ぶん殴らないといけねえし、元の大きさに戻るのも悪くねえかもな」
うんうん、とリオナが頷いてから続ける。
「それに、少なくともお前が元に戻ったら、あたしが小さいままでも面倒見てもらえるから、お前のことだけでも元に戻さねえとな」
リオナが楽しそうに話した。今わたしよりも背の高いリオナが、わたしの手のひらに乗るサイズに見えるところを想像してみると、可愛らしくて笑みが溢れてしまった。威圧感のあるリオナの睨みも、きっと可愛らしく見えるに違いない。
「わたしだけ元に戻った時には、リオナのこと可愛がってあげるね。毎日美味しいパンを食べさせてあげる!」
「キャンディとメロディの分も頼むぜ」
うん、と大きく頷いてからわたしたちは笑い合ったのだった。
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