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Ⅰ 手乗りサイズの新米メイド
わたしの働く場所 4
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「あら、エミリアいつの間にいましたの? まったく気づきませんでしたわ」
座っているアリシアお嬢様がエミリアのことを見上げている様子を、わたしは見上げていた。アリシアお嬢様が気づかないことはまだ理解はできる。同じ大きさならカーペットが音を吸収して人気が無くなることも理解できる。
だけど、わたしも気付かなかったのだ。先ほどアリシアお嬢様はただ歩いているだけで地響きのような音を立てていた。体の大きさがわたしよりも遥かに大きな人たちだから、ただ歩くだけで、とても大きな音と振動を立てるはずなのに。
「一体どう言うことなの……?」
不思議に思っているところに、気づけば目の前にエミリアの巨大なストラップシューズが動いてきていた。こちらは足を動かす時の風によって接近してきていることはわかったけど、やっぱり音はまったくしない。
そのまま、わたしの体を巨大な靴が小突いた。その瞬間、「グエッ」と変な声を出してしまう。それだけの痛みがわたしを襲った。小突いた、といえば可愛らしいけれど、ぶつかった時の圧力はそんな可愛らしいものではない。
わたしの体が軽く吹っ飛んだかと思えば、次の瞬間には、エミリアは素早くしゃがんでいたみたいで、指先でわたしの足を摘んでいた。俊敏な動きの前に、わたしは抵抗しようがない。きっと同じ大きさだったとしても、まったく抵抗できなかっただろう。気付けば右足だけ持たれて、逆さまにつらされた状態で持たれていた。頭に血が昇ってしまう。
「は、離してくださいよ!」と必死に声を出すわたしのことなんて、エミリアは見向きもしない。
「エミリア、いきなりしゃがんでどうしましたの?」
のんびりと語りかけるアリシアお嬢様の方に、「少々お待ちくださいませ」とサッと顔を向けて返事をした後、ハシゴに捕まって様子を見ていたソフィアの方に、逆さ吊りにしていたわたしを近づけた。
「お疲れ様です、ソフィアさん」
「お疲れ様、エミリアさん」
「念のために確認いたしますが、こちらの黒髪の手乗りメイドはソフィアさんたちのお仲間でお間違い無いでしょうか?」
「ええ、間違いないですよ。カロリーナという子ですよ。昨日来たばかりの子だから、あまり虐めないであげると助かります」
「そうですか。不法侵入者で無いのなら、問題ありません」
わたしが怪しい者でないことに納得すると、わたしのことを床に押し付けるみたいにして手のひらでギュッと静かにカーペットに押さえつけた。
「痛たたた……」
わたしの体の倍以上あるストラップシューズに蹴っとばされて、足を摘まれ逆さ吊りにされて、挙句カーペットに押し寿司みたいにして押し付けられたから、体が痛む。これで大きな怪我をしなかったのが不思議なくらいだ。ゆっくりと体を起こすわたしの横にすでにソフィアはやってきていた。
「わたしたちの体は小さくなって、かなり身軽になっているので、元のサイズなら怪我をするようなことでも、多少なら怪我には繋がらないのですよ」
ソフィアがわたしに手を差し伸べた。
「小さいと不便なことだらけですけど、その辺は便利なので武器になりそうなものは武器にしていきましょう」
「は、はい……」
怖いことだらけだから、とてもそんなポジティブには考えられそうに無いのだけれど……。
わたしはすっかりエミリアに怯えていたけれど、ソフィアは気にせずエミリアに話しかけていた。
「エミリアさん、すいませんけど私たちのことを机の上に乗せてもらっても良いですか?」
「もちろん、よろしいですよ」
先ほどまで何を考えているのかわからなかった怖いメイドのエミリアが、信じられないくらい優しい笑みを浮かべてソフィアに微笑みかけていた。そんなわたしたちの様子を見て、アリシアお嬢様が驚きの声を上げる。
「わっ!? ソフィアとカロリーナ、いつの間にいましたの!?」
手のひらで口元を隠して、思い切り驚いていた。その様子を急上昇していくエミリアの手の上から見上げていた。エミリアがわたしたちを机の上に乗せると、アリシアお嬢様との距離がとても近くなった。
座っているアリシアお嬢様がエミリアのことを見上げている様子を、わたしは見上げていた。アリシアお嬢様が気づかないことはまだ理解はできる。同じ大きさならカーペットが音を吸収して人気が無くなることも理解できる。
だけど、わたしも気付かなかったのだ。先ほどアリシアお嬢様はただ歩いているだけで地響きのような音を立てていた。体の大きさがわたしよりも遥かに大きな人たちだから、ただ歩くだけで、とても大きな音と振動を立てるはずなのに。
「一体どう言うことなの……?」
不思議に思っているところに、気づけば目の前にエミリアの巨大なストラップシューズが動いてきていた。こちらは足を動かす時の風によって接近してきていることはわかったけど、やっぱり音はまったくしない。
そのまま、わたしの体を巨大な靴が小突いた。その瞬間、「グエッ」と変な声を出してしまう。それだけの痛みがわたしを襲った。小突いた、といえば可愛らしいけれど、ぶつかった時の圧力はそんな可愛らしいものではない。
わたしの体が軽く吹っ飛んだかと思えば、次の瞬間には、エミリアは素早くしゃがんでいたみたいで、指先でわたしの足を摘んでいた。俊敏な動きの前に、わたしは抵抗しようがない。きっと同じ大きさだったとしても、まったく抵抗できなかっただろう。気付けば右足だけ持たれて、逆さまにつらされた状態で持たれていた。頭に血が昇ってしまう。
「は、離してくださいよ!」と必死に声を出すわたしのことなんて、エミリアは見向きもしない。
「エミリア、いきなりしゃがんでどうしましたの?」
のんびりと語りかけるアリシアお嬢様の方に、「少々お待ちくださいませ」とサッと顔を向けて返事をした後、ハシゴに捕まって様子を見ていたソフィアの方に、逆さ吊りにしていたわたしを近づけた。
「お疲れ様です、ソフィアさん」
「お疲れ様、エミリアさん」
「念のために確認いたしますが、こちらの黒髪の手乗りメイドはソフィアさんたちのお仲間でお間違い無いでしょうか?」
「ええ、間違いないですよ。カロリーナという子ですよ。昨日来たばかりの子だから、あまり虐めないであげると助かります」
「そうですか。不法侵入者で無いのなら、問題ありません」
わたしが怪しい者でないことに納得すると、わたしのことを床に押し付けるみたいにして手のひらでギュッと静かにカーペットに押さえつけた。
「痛たたた……」
わたしの体の倍以上あるストラップシューズに蹴っとばされて、足を摘まれ逆さ吊りにされて、挙句カーペットに押し寿司みたいにして押し付けられたから、体が痛む。これで大きな怪我をしなかったのが不思議なくらいだ。ゆっくりと体を起こすわたしの横にすでにソフィアはやってきていた。
「わたしたちの体は小さくなって、かなり身軽になっているので、元のサイズなら怪我をするようなことでも、多少なら怪我には繋がらないのですよ」
ソフィアがわたしに手を差し伸べた。
「小さいと不便なことだらけですけど、その辺は便利なので武器になりそうなものは武器にしていきましょう」
「は、はい……」
怖いことだらけだから、とてもそんなポジティブには考えられそうに無いのだけれど……。
わたしはすっかりエミリアに怯えていたけれど、ソフィアは気にせずエミリアに話しかけていた。
「エミリアさん、すいませんけど私たちのことを机の上に乗せてもらっても良いですか?」
「もちろん、よろしいですよ」
先ほどまで何を考えているのかわからなかった怖いメイドのエミリアが、信じられないくらい優しい笑みを浮かべてソフィアに微笑みかけていた。そんなわたしたちの様子を見て、アリシアお嬢様が驚きの声を上げる。
「わっ!? ソフィアとカロリーナ、いつの間にいましたの!?」
手のひらで口元を隠して、思い切り驚いていた。その様子を急上昇していくエミリアの手の上から見上げていた。エミリアがわたしたちを机の上に乗せると、アリシアお嬢様との距離がとても近くなった。
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