24 / 33
Ⅰ 入学
30倍サイズの生徒の担任は危険だらけみたい 2
しおりを挟む
萩原先生は、わたしと小鈴ちゃんの席のちょうど境目くらいに、縦横10センチ×20センチくらいの可愛らしいサイズの(実際には3メートル×6メートルというサッカーゴールみたいに大きな黒板だけれど)、黒板を模したホワイトボードを使って授業を進めてくれる。ちなみに、この黒板風ミニホワイトボードは、休み時間にわたしたちと同じくらいの大きさの事務員である東條さんが運んでくれた。
ジッとホワイトボードに字を書いている萩原先生を見て、小鈴ちゃんがわたしに耳打ちをしてくる。
「絶対にくっつけてる机離したらダメだからね」
「何それ? 離したほうが良いってこと?」
わたしが冗談半分に尋ねると、小鈴ちゃんが慌てて首を横に振る。
「そんなわけないでしょ! わたしたちの席の真ん中にホワイトボードが置いてあるってことは、机離れたら落ちちゃうんだから!」
「そんなこと言われたら動かしたくなっちゃうけど」
わたしが本気では動かさないように気をつけながら机の縁に触れようとした瞬間に、小鈴ちゃんが「ダメだって」と言って思いっきりわたしの腕を掴んだせいで、力加減がおかしくなった。あっ、と声を出したのと同時に力が入って勢いよく机を揺らしてしまった。
「ちょっ」
ホワイトボードが思いっきり倒れて、机から落ちて床に落下する。萩原先生はバランスを崩して尻餅をついた。
「こ、小鈴ちゃん……」
わたしがジトっとした瞳で小鈴ちゃんを見てから、床に落ちたホワイトボードを拾い上げる。
「ごめんなさい……」
と小鈴ちゃんが萩原先生を見下ろしながら謝った。
「とりあえず、授業をちゃんと聞いてちょうだい……」
萩原先生が大きなため息をついてから、気を取り直して授業を再開する。
「あの、先生。ここわからないんですけど……」
「どれかしら?」
小鈴ちゃんがわたしたちサイズの、一般生徒用の教室くらい大きな教科書を指差すと、萩原先生が机の上を歩いて小鈴ちゃんの教科書の方に移動する。
姿勢良く歩いている先生が、普通サイズならかなりカッコいい女性であることは理解できる。でも、今の親指姫くらいのサイズだと圧倒的に可愛いが勝ってしまう。キュートアグレッションって言うのだろうか。ちょっとイタズラしたくなっちゃう。
わたしは静かに萩原先生の方に口を近づけていく。そんなことは気づかずに、萩原先生は教科書の上で全身を使って英単語の上をあっちに行ったり、こっちに行ったり、移動していた。そこにフッと軽く息を吹きかけてみる。
「え? ちょっと!?」
萩原先生がコロコロと机の上を転がって、小鈴ちゃんが教科書を押さえていた手に当たる。そんなわたしのイタズラに気づいた小鈴ちゃんが小さくため息をつくのと同時に、萩原先生が立ち上がって、わたしの方をジッと睨んでから、「春山ぁ……!」とお説教モードの声を出してくる。さすがにヤバいかと思った瞬間、小鈴ちゃんが右手で思いっきり机をドンっと叩いた。
大きな音がして、わたしや、後ろの席にいた詩葉先輩までビックリしていたのだから、すぐ近くに、自分の体を叩き潰せてしまうような大きな手が振り下ろされた萩原先生がビックリしないわけがない。ヒッ、と怯えた声を出して、その場に尻餅をついてしまっていた。
もはやお説教ができるようなメンタルではなさそう。小鈴ちゃんがわたしに助け舟を出してくれたということだろうか。不思議に思っていたけれど、次の瞬間に小鈴ちゃんがわたしをキッと睨みつけてきたから、別にわたしの味方をしようとしたわけでは無いことは理解した。
「何してるのよ! ちゃんと授業聞きなさいよ! しかも萩原先生のことビックリさせて、ダメじゃない!」
それを聞いて、わたしは苦笑いをする。萩原先生はわたしに吹き飛ばされた時よりも、明らかに小鈴ちゃんが机を叩いた方に怯えているんだけど……。
少ししてから、萩原先生がバツが悪そうに立ち上がる。
「と、とりあえず、春山は次変なことしたら2ヶ月トイレ掃除当番担当させるからな……」
週替わり当番でやることになっているトイレ掃除を2ヶ月ぶっ通しでするなんて嫌すぎる……。ある意味一番効いてしまうお説教かも。わたしは素直に頷いた。
「すいませんでした……」
「ちゃんと反省しろよ?」
「はい……」
仕方がないから、とりあえず、今は一旦反省したのだった。
でも、小鈴ちゃんも萩原先生のこと怯えさせてたし、わたし以外にも萩原先生のことビックリさせてる人がいるじゃん、と少し不満に思っていたけれど、2限目にはわたしたちよりももっと凄いことを、無意識でやっている人が存在することを知ることになるのだった。
ジッとホワイトボードに字を書いている萩原先生を見て、小鈴ちゃんがわたしに耳打ちをしてくる。
「絶対にくっつけてる机離したらダメだからね」
「何それ? 離したほうが良いってこと?」
わたしが冗談半分に尋ねると、小鈴ちゃんが慌てて首を横に振る。
「そんなわけないでしょ! わたしたちの席の真ん中にホワイトボードが置いてあるってことは、机離れたら落ちちゃうんだから!」
「そんなこと言われたら動かしたくなっちゃうけど」
わたしが本気では動かさないように気をつけながら机の縁に触れようとした瞬間に、小鈴ちゃんが「ダメだって」と言って思いっきりわたしの腕を掴んだせいで、力加減がおかしくなった。あっ、と声を出したのと同時に力が入って勢いよく机を揺らしてしまった。
「ちょっ」
ホワイトボードが思いっきり倒れて、机から落ちて床に落下する。萩原先生はバランスを崩して尻餅をついた。
「こ、小鈴ちゃん……」
わたしがジトっとした瞳で小鈴ちゃんを見てから、床に落ちたホワイトボードを拾い上げる。
「ごめんなさい……」
と小鈴ちゃんが萩原先生を見下ろしながら謝った。
「とりあえず、授業をちゃんと聞いてちょうだい……」
萩原先生が大きなため息をついてから、気を取り直して授業を再開する。
「あの、先生。ここわからないんですけど……」
「どれかしら?」
小鈴ちゃんがわたしたちサイズの、一般生徒用の教室くらい大きな教科書を指差すと、萩原先生が机の上を歩いて小鈴ちゃんの教科書の方に移動する。
姿勢良く歩いている先生が、普通サイズならかなりカッコいい女性であることは理解できる。でも、今の親指姫くらいのサイズだと圧倒的に可愛いが勝ってしまう。キュートアグレッションって言うのだろうか。ちょっとイタズラしたくなっちゃう。
わたしは静かに萩原先生の方に口を近づけていく。そんなことは気づかずに、萩原先生は教科書の上で全身を使って英単語の上をあっちに行ったり、こっちに行ったり、移動していた。そこにフッと軽く息を吹きかけてみる。
「え? ちょっと!?」
萩原先生がコロコロと机の上を転がって、小鈴ちゃんが教科書を押さえていた手に当たる。そんなわたしのイタズラに気づいた小鈴ちゃんが小さくため息をつくのと同時に、萩原先生が立ち上がって、わたしの方をジッと睨んでから、「春山ぁ……!」とお説教モードの声を出してくる。さすがにヤバいかと思った瞬間、小鈴ちゃんが右手で思いっきり机をドンっと叩いた。
大きな音がして、わたしや、後ろの席にいた詩葉先輩までビックリしていたのだから、すぐ近くに、自分の体を叩き潰せてしまうような大きな手が振り下ろされた萩原先生がビックリしないわけがない。ヒッ、と怯えた声を出して、その場に尻餅をついてしまっていた。
もはやお説教ができるようなメンタルではなさそう。小鈴ちゃんがわたしに助け舟を出してくれたということだろうか。不思議に思っていたけれど、次の瞬間に小鈴ちゃんがわたしをキッと睨みつけてきたから、別にわたしの味方をしようとしたわけでは無いことは理解した。
「何してるのよ! ちゃんと授業聞きなさいよ! しかも萩原先生のことビックリさせて、ダメじゃない!」
それを聞いて、わたしは苦笑いをする。萩原先生はわたしに吹き飛ばされた時よりも、明らかに小鈴ちゃんが机を叩いた方に怯えているんだけど……。
少ししてから、萩原先生がバツが悪そうに立ち上がる。
「と、とりあえず、春山は次変なことしたら2ヶ月トイレ掃除当番担当させるからな……」
週替わり当番でやることになっているトイレ掃除を2ヶ月ぶっ通しでするなんて嫌すぎる……。ある意味一番効いてしまうお説教かも。わたしは素直に頷いた。
「すいませんでした……」
「ちゃんと反省しろよ?」
「はい……」
仕方がないから、とりあえず、今は一旦反省したのだった。
でも、小鈴ちゃんも萩原先生のこと怯えさせてたし、わたし以外にも萩原先生のことビックリさせてる人がいるじゃん、と少し不満に思っていたけれど、2限目にはわたしたちよりももっと凄いことを、無意識でやっている人が存在することを知ることになるのだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなわたしたちが1000倍サイズの超巨大エルフ少女たちから世界を取り返すまでのお話
穂鈴 えい
ファンタジー
この世界に住んでいる大多数の一般人たちは、身長1400メートルを超える山のように巨大な、少数のエルフたちのために働かされている。吐息だけでわたしたち一般市民をまとめて倒せてしまえるエルフたちに抵抗する術もなく、ただひたすらに彼女たちのために労働を続ける生活を強いられているのだ。
一般市民であるわたしは日中は重たい穀物を運び、エルフたちの食料を調達しなければならない。そして、日が暮れてからはわたしたちのことを管理している身長30メートルを越える巨大メイドの身の回りの世話をしなければならない。
そんな過酷な日々を続ける中で、マイペースな銀髪美少女のパメラに出会う。彼女は花園の手入れを担当していたのだが、そこの管理者のエフィという巨大な少女が怖くて命懸けでわたしのいる区域に逃げてきたらしい。毎日のように30倍サイズの巨大少女のエフィから踏みつけられたり、舐められたりしてすっかり弱り切っていたのだった。
再びエフィに連れ去られたパメラを助けるために成り行きでエルフたちを倒すため旅に出ることになった。当然1000倍サイズのエルフを倒すどころか、30倍サイズの管理者メイドのことすらまともに倒せず、今の労働場所から逃げ出すのも困難だった。挙句、抜け出そうとしたことがバレて、管理者メイドにあっさり吊るされてしまったのだった。
しかし、そんなわたしを助けてくれたのが、この世界で2番目に優秀な魔女のクラリッサだった。クラリッサは、この世界で一番優秀な魔女で、わたしの姉であるステラを探していて、ついでにわたしのことを助けてくれたのだった。一緒に旅をしていく仲間としてとんでもなく心強い仲間を得られたと思ったのだけれど、そんな彼女でも1000倍サイズのエルフと相対すると、圧倒的な力を感じさせられてしまうことに。
それでもわたしたちは、勝ち目のない戦いをするためにエルフたちの住む屋敷へと向かわなければならないのだった。そうして旅をしていく中で、エルフ達がこの世界を統治するようになった理由や、わたしやパメラの本当の力が明らかになっていき……。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女装男子は百合乙女の夢を見るか? ✿【男の娘の女子校生活】学園一の美少女に付きまとわれて幼なじみの貞操が危なくなった。
千石杏香
ライト文芸
✿【好きな人が百合なら女の子になるしかない】
男子中学生・上原一冴(うえはら・かずさ)は陰キャでボッチだ。ある日のこと、学園一の美少女・鈴宮蘭(すずみや・らん)が女子とキスしているところを目撃する。蘭は同性愛者なのか――。こっそりと妹の制服を借りて始めた女装。鏡に映った自分は女子そのものだった。しかし、幼なじみ・東條菊花(とうじょう・きっか)に現場を取り押さえられる。
菊花に嵌められた一冴は、中学卒業後に女子校へ進学することが決まる。三年間、女子高生の「いちご」として生活し、女子寮で暮らさなければならない。
「女が女を好きになるはずがない」
女子しかいない学校で、男子だとバレていないなら、一冴は誰にも盗られない――そんな思惑を巡らせる菊花。
しかし女子寮には、「いちご」の正体が一冴だと知らない蘭がいた。それこそが修羅場の始まりだった。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
(R18) 女子水泳部の恋愛事情(水中エッチ)
花音
恋愛
この春、高校生になり水泳部に入部した1年生の岡田彩香(おかだあやか)
3年生で部長の天野佳澄(あまのかすみ)
水泳部に入部したことで出会った2人は日々濃密な時間を過ごしていくことになる。
登場人物
彩香(あやか)…おっとりした性格のゆるふわ系1年生。部活が終わった後の練習に参加し、部長の佳澄に指導してもらっている内にかっこよさに惹かれて告白して付き合い始める。
佳澄(かすみ)…3年生で水泳部の部長。長めの黒髪と凛とした佇まいが特徴。部活中は厳しいが面倒見はいい。普段からは想像できないが女の子が悶えている姿に興奮する。
絵里(えり)…彩香の幼馴染でショートカットの活発な女の子。身体能力が高く泳ぎが早くて肺活量も高い。女子にモテるが、自分と真逆の詩織のことが気になり、話しかけ続け最終的に付き合い始める。虐められるのが大好きなドM少女。
詩織(しおり)…おっとりとした性格で、水泳部内では大人しい1年生の少女。これといって特徴が無かった自分のことを好きと言ってくれた絵里に答え付き合い始める。大好きな絵里がドMだったため、それに付き合っている内にSに目覚める。
好きになっちゃったね。
青宮あんず
大衆娯楽
ドラッグストアで働く女の子と、よくおむつを買いに来るオシャレなお姉さんの百合小説。
一ノ瀬水葉
おねしょ癖がある。
おむつを買うのが恥ずかしかったが、京華の対応が優しくて買いやすかったので京華がレジにいる時にしか買わなくなった。
ピアスがたくさんついていたり、目付きが悪く近寄りがたそうだが実際は優しく小心者。かなりネガティブ。
羽月京華
おむつが好き。特に履いてる可愛い人を見るのが。
おむつを買う人が眺めたくてドラッグストアで働き始めた。
見た目は優しげで純粋そうだが中身は変態。
私が百合を書くのはこれで最初で最後になります。
自分のpixivから少しですが加筆して再掲。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる