身長48メートルの巨大少女ですけど普通のJKさせてもらっても良いんですか!?

穂鈴 えい

文字の大きさ
上 下
2 / 33
Ⅰ 入学

徒歩100キロの通学路 2

しおりを挟む
わたしは早朝の3時にスマホの振動音だけの目覚ましをかけておいた。枕元で震えるスマホを止めて、目を覚ます。

朝の3時なんて、まだまだ眠い時間なのに、ちゃんと無音の目覚ましでで起きられた自分を褒めてあげたい。目覚ましの音を鳴らさないようにしているのは、わたしを起こすための音を鳴らすと、町内放送みたいな音量になるので、近所からクレームが来ちゃうからだ。

まあ、このスマホの震えだって、普通の人が近くにいたら、立っていられないような強い揺れになるのだとは思うけれど、ここは家の中だから大丈夫。わたしにはただのスマホのバイブレーションにしか感じられないから。

こうして、住宅を丸呑みできてしまいそうなくらい、口を大きく開けて欠伸をしながら、朝の支度を進めていく。別に支度といっても、着替えとか歯磨きとかをするだけではあるけれど、深夜に大きな音を立てて周辺地域に迷惑をかけないようには気をつけた。わたしの立てる小さな物音も、街の住民には騒音になる可能性があるから。ただでさえ、街中にマンションが何棟も入ってしまうような、わたしサイズの大きな小屋を建ててもらっているのだから、騒音まで発生させて迷惑をかけるわけにもいかない。

「わたしが早朝に動くと、近所迷惑になっちゃいそうだから、朝一に移動させるのははやめて欲しいんだけどなぁ……」
まあ、かといって人の多い時間帯に外に出て長距離の移動をしてしまうと、踏み潰しちゃう可能性もあるから、そよりもはマシか。

そんなことを考えながら準備を進めていると、呼び鈴が鳴った。
「なんだろ?」
わたしの家をわざわざ尋ねてくる変わり者は、今まで夏穂以外にはほとんどいなかったのに。かと言って、さすがに夏穂がこんな深夜にわたしの家に来るわけないし。わたしは慎重に玄関ドアの方へと向かっていった。

ドアモニターがあったら訪問者の確認をするのも楽なんだけれど、そんなものを設置したら、映画のスクリーンみたいになっちゃうから、莫大な費用がかかってしまう。当然そんな費用のかかるものは設置してもらえないから、実際にドアを開けて訪問者の確認をするしかない。これでは不審者が訪問してきていても、対面しないといけないから、物騒なんだけどな。

でも、防犯という意味では、夏穂に言わせたら、わたしは存在が防犯らしいから、別に問題ないらしい。一体夏穂はわたしのことを何だと思っているのだろうか。

それはさておき、わたしは足元に20人ほど集まっている、尋ねてきた人物を見た。
「春山月乃さん、今日は僕たちが誘導するので、よろしく頼むよ」
なるほど、通学の為にわたしを学校まで誘導してくれる警察の人みたい。学校まで迷わないように道案内でもしてくれるのだろうか。

わたしは風を吹かせないように、ゆっくりと時間をかけてしゃがんで膝を抱えて背中を丸め、彼らに少しでも視線が近くなるような体勢になる。まあ、それでもわたしは小さなアパートくらい大きいから、視線を合わせることはできないんだけど。しかも、わたしがせっかく顔を近づけたのに、なぜか男性は顔を背けてしまった。

「どうかしましたか?」
「スカートの中、見えてるよ……」
「この大きさだとどうせ見えちゃうんで、気にしないでください」
そう言ったのに、男性の警察官は話しづらそうにしているから、結局女性の警察官の人がわたしの対応をしてくれるようになった。

「今日はわたしが迷子にならないように、わざわざ家まで来てくれてるんですか?」
「迷子?」
「道案内の為に皆さんわざわざ来てくれてるんですよね?」
わたしがおっちょこちょいなばかりに、学校がお金をかけて依頼でもしているのだろうか。だとしたら、なんだか申し訳ないな。そう思ったけれど、女性警察官は、不思議そうに首を傾げてから否定する。

「安全の為に来たけれど、道に迷わない為にちゃんと誘導もするわね」
そういうことか。わたしが夜中に未成年が一人で歩いたら危ない、なんてことを萩原先生に電話越しで伝えたから、警備を依頼されたのか、と納得した。

「警察の方が一緒に来てくれるんだったら、夜道でも不審者に襲われることがないですから、安心ですね」とわたしは微笑む。
「春山さんのことを襲える不審者は多分いないと思うけど……、一応その警戒もするようにしておくわね」
「一応ってことは、他にも何か来た理由があるんですか?」
「今日は交通誘導のほうがメインよ。車を踏み潰したりしないように、通学ルートの人たちの安全を守る為にね」

なるほど、わたしは被害者になるリスクを心配されているわけではなく、加害者になる可能性を心配されているというわけか。理解はしたから、素直に従った。少し不本意ではあるけれど、実際に街をうっかり半壊させてしまったこともあるので、反論もできなかった。

外に出ると、ほんのり肌寒かったから、ポンチョを羽織っておく。まあ、ポンチョと言っても、ヘアサロンで被されるような、手を通す場所だけ穴の空いている巨大な布と言った方が近いような代物だけれど。それでも何も着ないよりもマシだから着る。

「そうだ、春山さん、出発前にこれを耳につけておいてもらっても良いかしら?」
警察の人が数人がかりで運んできてくれたのはワイヤレスのイヤホンだった。わたしサイズの巨大イヤホンだから、普通の人が持つのはかなり重たいと思う。少し申し訳なく思いながら、運ばれてきたワイヤレスイヤホンを指で摘み上げてから、耳につけると、警察の人の声がしっかりと伝わってくるようになった。

『夜なので、騒音にならないように、イヤホン越しに指示を送るわね』
「はーい」
こうして、一人の女子高生が通学をするには少し大袈裟な人数で道路を歩き始めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...