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記念短編集
累計ポイント三万記念SS『マラン嬢の恋心』
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※このSSには『恋愛』『恋愛物を始めて書いた人の作品』が含まれています
※この小説は本編の二章中盤位までを読んでいる事を目安にしてあります
それでも宜しいと言う方はどうぞお楽しみ下さい
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ビギン領領主の娘
『マラン・ビギン・アゲイン』
彼女は少し前、王国の森へと調査に向かっていた。
調査内容は王国側から謎の魔物が帝国の森に入って来ているので調査して欲しいという、公爵からの依頼だった。
実はビギン領は辺境伯としての位を持っているのだが、この帝国内では実力主義の風習が廃れてきており、さらに帝国軍の力が大幅に増しているので、いくら辺境伯と言えども公爵の命令に逆らえなくなるまでに、権力は落ちていた。
その調査中、謎の魔物の正体、《ブラックリザードマン》と《ブラッドリザードマン》に遭遇し、ライトに助けられた。
帰還後、父が過去にした事を全て知り、反省させる為に父の所へ向かうも父に捕まってしまい、魂を抜き取られかける。
そして目が覚めたら………地獄の領地立て直しが待っていた………今はそれが終わり、少し落ち着いた所だ。
この物語はそんな彼女の恋心を書いた話。
そして帝国が傾き、多くの領地が滅びようとも、『不滅』と呼ばれ、帝国に有り続けた領地を支えていた強き女傑の始まりの話である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………はぁ」
「溜め息なんてついてどうしたんですか?幸せ逃げますよ?」
「逆に少し位幸せが逃げた方が気楽かも知れませんね………」
ビギン領の領主の館、執務室ではマランが深い溜め息をつき、ドアの方向を見つめていた。
それに対しゼロシは書類を整理しながらマランの溜め息に軽口を叩いている。
「あ、これのチェックお願いします………で、どうしたんですか?今日で先程のやり取りをしたのは五度目ですよ?」
「………この領地もお父様が高みに登ってから少し経ち、漸く余裕が出来たからですかね?何故かダルスがいつもと違う様に見えるんですよ………判子押したので税金資料の棚に入れておいてください」
「いつもと違うとは?」
「なんか………そう………格好よく?」
二人とも仕事の手を休めずに話をしているので、お互いの顔は見えていないが、マランの顔はほんの少し赤くなっていた。
そしてそれを予感していたゼロシは目をピカーンッ!と光らせてから書類を纏め終わり、税金資料の棚に入れた。
「ほほぅ?なるほどなるほど!そうですか!」
「え?どうしたんです?急に大声を出して?」
「《サイレントルーム》これで良いですよね!じゃあ今日の仕事は終わりです!」
「………まだメイドの履歴書が「どうせ最初に光海様がチェックなされたのですから問題はありませんって!」………怒られますよ?」
「大丈夫ですっ!世の中にはこんな言葉があります!『ばれなければ犯罪じゃ無いのですよ!』」
「………知りませんよ?」
「別に良いです!それよりもマランさんの溜め息の理由!この名探偵ゼロシがしっかりと解決して差し上げましょう!」
マランは仕事をサボろうとしているゼロシに若干呆れつつも少しだけ問題の解決を期待していた。
だがマランは知らなかった………この”迷探偵ゼロシ"の恋愛小説好きを!
「結論から言います!ずばり!それは"恋”です!」
「え?こ、恋?」
ストレートに言われたマランは顔を真っ赤にしながら聞き返した。
だが顔を真っ赤にしたという事は図星という事なのだろう。
「まず最初にダルスさんが護衛しているドアの方向を見て溜め息をついている時点で丸解りです」
「そ、そうですか?」
「そうですよ!次に………マランさん、貴女が最近ダルスさんと話す時、解りやすい程に乙女の顔をしてる事を自覚してますか?」
「えっ!?」
自分が自覚していなかった事をストレートに言われ、マランは顔がどんどん、赤くなっていく。
「キラキラとした目でダルスさんの報告と提案を聞いて何も考えずに了承してる事も最近は良くありますしね、ダルスさんはマランさんの事を第一に考えているので騙したりはしませんが………他の人にそんな事をしていたらいつの日か領地ごと奪われちゃいますよ?」
「そ、そんな事ダルスにしかしませんっ!」
「ほら、もうこれは恋でしょう!」
ゼロシに撃沈され、顔からプシューッ!と煙が出そうな程赤面したマランは、机で顔を隠すように伏せた。
「………《サイレントルーム》使ってあるのでダルスさんには聞こえてませんよ?」
「そう言う問題じゃ無いですっ!」
「まぁ良いじゃないですか!自分の気持ちを知っておく事も年頃の乙女にとって必要な事ですよ?」
「………そう言うゼロシさんは恋愛の経験とかあるんですかぁ?」
マランが若干拗ねながらゼロシに尋ねると、ゼロシはいつものお調子者の顔を一瞬だけ曇らせた。
「………ありますよ?」
「あるんですね………」
机に伏せたままのマランは顔を上げ、ゼロシの話を聴く姿勢に入った。
「どんな恋愛でしたか?」
「…………何万年も前の事なので忘れちゃいました♪」
「………本当は恋愛なんてした事無いんじゃ「ほら、それよりも!今から領地視察に行きますよ!」………そんな予定ありましたっけ?」
「今思い出しました!ほら、準備してきて下さい!」
「………わかりました」
ゼロシの恋愛話を誤魔化されたマランは、半目になりながら執務室を出ていった。
その様子を見ながら、ゼロシは冷や汗をかいていた。
(せ、セーフ………せっかくのリアル恋愛を見られると言うのに私の暗い過去話で落ち込ませるのはNGですからね!)
そしてゼロシはライトから貰った、専用フライチップを一体だけ飛ばした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「え?お母様もゼロシさんも留守番なんですか?」
「はい、ラミ様は領地豊作計画が実行可能かの検討、私はその計画の説明をします、なのでマランさんはダルスさんと二人で行ってきて下さい」
そう言い残し、ゼロシは立ち去った。
「………それでは行きましょうか」
「はい、お嬢様」
二人は活気のある街を歩き始めた。
以前はただ大きいだけの治安が悪い街だったが、今では子供達が走り回り、商人達が品定めをし、大道芸人が芸をしている、とてもいい街になっていた。
「………本当に変わりましたね」
「はい、これもお嬢様の努力、それとあの人達が手伝って下さったおかげですね」
「そうですね」
染々としながら話をしている二人の様に見えるが、実は染々としているのは一人だけで、マランは顔の火照りを押さえるのに必死だった。
(本当に嬉しそうな顔、格好いいですね………はっ!?いけないいけない!平常心を持たなくちゃ!)
(お嬢様、街が活気を取り戻したのを見れて嬉しいんだな、ニヤけが隠せてないし)
ダルスは思いっきり勘違いしていた、鈍感属性持ちなのだろうか?
(駄目だわ………ニヤけが止まらない………もういっその事言っちゃいますか?)
マランはテンパりすぎていつもなら考えない様な事を考え始めていた。
「ダ、ダルス、暁の丘へ行きますよ!」
「はい、そこからなら街を展望できますね」
ダルス、違う、そうじゃない。
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「………マランさん、もう告白するつもりですかね?まだ早くないですか?」
「あら?でも何故かうまく行きそうに思えるわね?」
一方その頃、マランの母、ラミとゼロシは空中に浮かんでいる画面を仲良く見ながら微笑ましく思っていた。
「もしかしたらダルスさんもマランさんの事が好きなのを自覚してないからじゃ無いですか?」
「え?そうだったの?なら両思いね」
「でも上手く行きますかね?」
「行くわよ、あの子ならね」
「流石母親、信頼感が違いますね」
「私の方は政略結婚だったけどね」
「………思ったんですけどダルスさんって鈍感なんですね」
「そうね、マランの解りやすい表情を見ても全く理解してないものね」
「………身分差とか、大丈夫なんですかね?」
「大丈夫よ、他の貴族に何か言われたとしても私があの子達を守るから」
「頼もしいですね!」
この盗撮二人組は、恋愛好きで意気投合したのでもうすっかり仲良しだ、ではあちらはどうだろう?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………橋が壊れてますね」
「暁の丘がこちらの方向ではなかった事が幸いでしょうか?でもこれは報告するべきですね、お嬢様」
「そうですね、では行きましょ「お嬢様っ!」どうしっ!?」
マランは気づいた、崖に近づきすぎたのだ、橋が壊れていた理由は橋を押さえている部分が崩れ落ちたからだと、そして今回落ちるのは自分だと。
マランは悲鳴を上げる暇もなく落ちていく、しかし、その落下は途中で止まった。
「お嬢様!大丈夫ですか!」
ダルスに引き寄せられてマランは少し宙に浮いた。
そしてダルスはマランを抱き止めた。
「ダ、ダルス………ありがとう」
「どういたしまして」
マランはダルスに抱き止められた事で、顔を真っ赤にして思考放棄している。
それに気がついたダルスは急いでマランをおろした。
「ママママ!?マラン様!?すす!?すいませんでした!」
「い、いえ、大丈夫です」
しかし言葉とは裏腹にマランはまだ思考を放棄していた。
だが、それは幸運だったのだろう、何故なら今正気に戻ったら顔を真っ赤にしながらテンパって考えているの事を片っ端から呟いてしまいかねないからだ。
………この初々しい二人の謝罪と放心は夕方になりかける頃まで続いたと言う………。
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「………一瞬ヒヤッとしましたけど………上手く行ってますね」
「初々しくて良いわねぇ」
この二人、こんな事を言っているが、マランが落ちかけた時には物凄く慌てていた。
「私にもこんな時代がありましたねぇ」
「それは気になるわねぇ」
「言いませんよ、最後は暗い話になりますし」
「………なら聞かないわ、それよりもどう思う?マランのあの顔」
「………可愛らしいですねぇ、ダルスさんも釘付けじゃないですか」
「あの子、放心してるけど戻ってきた時が大変ね、多分茹でダコみたいに真っ赤になるんじゃないかしら?」
「それはさっき執務室でなってましたよ?」
「見たかったわねぇ」
「………ダルスさん、謝りまくってますね」
「顔も真っ赤なって………これからが楽しみねぇ」
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「つ、着きましたよ」
まだ顔の熱が抜けないマランは、できるだけ顔をダルスに向けない様にしていた。
ダルスはそれを怒っていると捉えているが………違う、照れているだけだ。
そんな二人も、夕日が出ている方向を向くと、言葉を失った。
そこに写っていたのは、普通の街の風景ではなく、ただの夕日でもなく………建物と建物の間を反射し続ける夕日の光が醸し出す絶景だった。
「………綺麗ですね」
「ええ、本当に」
その光景は心が洗われ、浄化される様な光景で、マランも、告白する事をしっかりと自覚した。
でも不思議と顔は赤面せず、ただひたすらに静かな時間を過ごしていた。
鳥達が飛び去り、人々は家へと帰り始める時間、暁の空の下で、二人の周りの時間は永遠にさえ感じられた。
しかし、その沈黙を破る声が現れた。
「あの、ダルス?」
「何でしょうか、お嬢様」
ダルスの顔を改めて見ても、少し赤面するだけで、テンパる事もなく、一度、深呼吸をした。
「………話があるんです………いや、あるの」
「何でしょう?」
マランは一度目を瞑ってから答えた。
「私、最近………領地の立て直しが落ち着いてからわかった事があるんです、多分それはずっと前から思っていたけど忙しくてわからなかった事、でも漸くわかった事」
一度深呼吸してから、マランは言い放った。
「私………貴方の事が好きなんです!」
「はい………え!?」
「自覚したのはゼロシさんに言われてからで、私が貴方の事を乙女の目で見てるって言われまして、そこからわかっんです」
「………その話は本当ですか?」
「はい、本当です」
マランの告白を聞いたダルスは一度目を瞑り問いかけた。
「俺は騎士ですよ?ほかの貴族に色々言われるかもしれませんよ?」
「それでも良いです」
「身分の差があったとしてもですか?」
「それでも私は諦められない」
「………わかりました、でもこれは俺から言わせて下さい………………俺と、付き合ってくれますか?」
「………喜んでっ!」
この瞬間、二人の恋は実った。
この先の道は長く険しいだろう。
しかし、この二人なら、乗り越えられる。
二人の人生に天使が舞い降りた瞬間だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どうでした!あの時抱き締められてどんな感じでした!?」
「私も気になるわねぇ、お母様に教えなさい!」
「か、勘弁してくださぁい!」
二人が屋敷へ帰ると、恋愛大好き二人組が待ち構えていた。
今はその二人に質問攻めを受けている所だ。
ダルスはマシンガン並みのガールズトークについていけず、ただ赤面して壁で沈黙していた。
「お、お二人とも!落ち着いて下さい!」
「私はいつも通りですよ?」
「私もいつも通りねぇ」
「うぅぅ………」
質問攻めされるマランは真っ赤だったが、その表情はどこか嬉しそうだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ライト「………」ニヤニヤ
光海「………」ニヤニヤ
壁&ロリ好き「「ニヤニヤ」」
ディメン「お前ら気持ち悪いぞ」
ライト「いやー、だってさー、自分が無性別だからねぇ、こういう恋愛ってした事ないから人のを見てるとニヤけてきちゃうんだよ」
光海「私も同じくです」
壁&ロリ好き「左右に同じく」
ディメン「てか何でお前ら作者の分身がいるんだよ?」
壁「今回の話を作る時に」
ロリ好き「脳がたりないから全分身集合だって言われた」
壁「と言うかうさ好きの奴サボりやがったなぁ!?」
ロリ好き「あいつ最近進化し直したんだって」
壁「今度見つけたらぼっこぼこに「二人とも♪そこまでだよ?」ヒィッ!?」
ディメン「賑やかだなぁ………今回はこの小説を読んでくれてありがとな」
ライト「誤字脱字やストーリー矛盾等がありましたらご報告の方をお願いします」
ディメン「それでは皆さん」
ディメン&ライト「「さようなら」」
作者は小説を読もうの一部のコメント欄で色々な姿で大暴れしています(流石に止めてくださいとか言われたら止める程の常識は持ってますよ?まだ言われてはいませんが)
ぜひ見つけてみてね!
※この小説は本編の二章中盤位までを読んでいる事を目安にしてあります
それでも宜しいと言う方はどうぞお楽しみ下さい
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ビギン領領主の娘
『マラン・ビギン・アゲイン』
彼女は少し前、王国の森へと調査に向かっていた。
調査内容は王国側から謎の魔物が帝国の森に入って来ているので調査して欲しいという、公爵からの依頼だった。
実はビギン領は辺境伯としての位を持っているのだが、この帝国内では実力主義の風習が廃れてきており、さらに帝国軍の力が大幅に増しているので、いくら辺境伯と言えども公爵の命令に逆らえなくなるまでに、権力は落ちていた。
その調査中、謎の魔物の正体、《ブラックリザードマン》と《ブラッドリザードマン》に遭遇し、ライトに助けられた。
帰還後、父が過去にした事を全て知り、反省させる為に父の所へ向かうも父に捕まってしまい、魂を抜き取られかける。
そして目が覚めたら………地獄の領地立て直しが待っていた………今はそれが終わり、少し落ち着いた所だ。
この物語はそんな彼女の恋心を書いた話。
そして帝国が傾き、多くの領地が滅びようとも、『不滅』と呼ばれ、帝国に有り続けた領地を支えていた強き女傑の始まりの話である。
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「………はぁ」
「溜め息なんてついてどうしたんですか?幸せ逃げますよ?」
「逆に少し位幸せが逃げた方が気楽かも知れませんね………」
ビギン領の領主の館、執務室ではマランが深い溜め息をつき、ドアの方向を見つめていた。
それに対しゼロシは書類を整理しながらマランの溜め息に軽口を叩いている。
「あ、これのチェックお願いします………で、どうしたんですか?今日で先程のやり取りをしたのは五度目ですよ?」
「………この領地もお父様が高みに登ってから少し経ち、漸く余裕が出来たからですかね?何故かダルスがいつもと違う様に見えるんですよ………判子押したので税金資料の棚に入れておいてください」
「いつもと違うとは?」
「なんか………そう………格好よく?」
二人とも仕事の手を休めずに話をしているので、お互いの顔は見えていないが、マランの顔はほんの少し赤くなっていた。
そしてそれを予感していたゼロシは目をピカーンッ!と光らせてから書類を纏め終わり、税金資料の棚に入れた。
「ほほぅ?なるほどなるほど!そうですか!」
「え?どうしたんです?急に大声を出して?」
「《サイレントルーム》これで良いですよね!じゃあ今日の仕事は終わりです!」
「………まだメイドの履歴書が「どうせ最初に光海様がチェックなされたのですから問題はありませんって!」………怒られますよ?」
「大丈夫ですっ!世の中にはこんな言葉があります!『ばれなければ犯罪じゃ無いのですよ!』」
「………知りませんよ?」
「別に良いです!それよりもマランさんの溜め息の理由!この名探偵ゼロシがしっかりと解決して差し上げましょう!」
マランは仕事をサボろうとしているゼロシに若干呆れつつも少しだけ問題の解決を期待していた。
だがマランは知らなかった………この”迷探偵ゼロシ"の恋愛小説好きを!
「結論から言います!ずばり!それは"恋”です!」
「え?こ、恋?」
ストレートに言われたマランは顔を真っ赤にしながら聞き返した。
だが顔を真っ赤にしたという事は図星という事なのだろう。
「まず最初にダルスさんが護衛しているドアの方向を見て溜め息をついている時点で丸解りです」
「そ、そうですか?」
「そうですよ!次に………マランさん、貴女が最近ダルスさんと話す時、解りやすい程に乙女の顔をしてる事を自覚してますか?」
「えっ!?」
自分が自覚していなかった事をストレートに言われ、マランは顔がどんどん、赤くなっていく。
「キラキラとした目でダルスさんの報告と提案を聞いて何も考えずに了承してる事も最近は良くありますしね、ダルスさんはマランさんの事を第一に考えているので騙したりはしませんが………他の人にそんな事をしていたらいつの日か領地ごと奪われちゃいますよ?」
「そ、そんな事ダルスにしかしませんっ!」
「ほら、もうこれは恋でしょう!」
ゼロシに撃沈され、顔からプシューッ!と煙が出そうな程赤面したマランは、机で顔を隠すように伏せた。
「………《サイレントルーム》使ってあるのでダルスさんには聞こえてませんよ?」
「そう言う問題じゃ無いですっ!」
「まぁ良いじゃないですか!自分の気持ちを知っておく事も年頃の乙女にとって必要な事ですよ?」
「………そう言うゼロシさんは恋愛の経験とかあるんですかぁ?」
マランが若干拗ねながらゼロシに尋ねると、ゼロシはいつものお調子者の顔を一瞬だけ曇らせた。
「………ありますよ?」
「あるんですね………」
机に伏せたままのマランは顔を上げ、ゼロシの話を聴く姿勢に入った。
「どんな恋愛でしたか?」
「…………何万年も前の事なので忘れちゃいました♪」
「………本当は恋愛なんてした事無いんじゃ「ほら、それよりも!今から領地視察に行きますよ!」………そんな予定ありましたっけ?」
「今思い出しました!ほら、準備してきて下さい!」
「………わかりました」
ゼロシの恋愛話を誤魔化されたマランは、半目になりながら執務室を出ていった。
その様子を見ながら、ゼロシは冷や汗をかいていた。
(せ、セーフ………せっかくのリアル恋愛を見られると言うのに私の暗い過去話で落ち込ませるのはNGですからね!)
そしてゼロシはライトから貰った、専用フライチップを一体だけ飛ばした。
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「え?お母様もゼロシさんも留守番なんですか?」
「はい、ラミ様は領地豊作計画が実行可能かの検討、私はその計画の説明をします、なのでマランさんはダルスさんと二人で行ってきて下さい」
そう言い残し、ゼロシは立ち去った。
「………それでは行きましょうか」
「はい、お嬢様」
二人は活気のある街を歩き始めた。
以前はただ大きいだけの治安が悪い街だったが、今では子供達が走り回り、商人達が品定めをし、大道芸人が芸をしている、とてもいい街になっていた。
「………本当に変わりましたね」
「はい、これもお嬢様の努力、それとあの人達が手伝って下さったおかげですね」
「そうですね」
染々としながら話をしている二人の様に見えるが、実は染々としているのは一人だけで、マランは顔の火照りを押さえるのに必死だった。
(本当に嬉しそうな顔、格好いいですね………はっ!?いけないいけない!平常心を持たなくちゃ!)
(お嬢様、街が活気を取り戻したのを見れて嬉しいんだな、ニヤけが隠せてないし)
ダルスは思いっきり勘違いしていた、鈍感属性持ちなのだろうか?
(駄目だわ………ニヤけが止まらない………もういっその事言っちゃいますか?)
マランはテンパりすぎていつもなら考えない様な事を考え始めていた。
「ダ、ダルス、暁の丘へ行きますよ!」
「はい、そこからなら街を展望できますね」
ダルス、違う、そうじゃない。
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「………マランさん、もう告白するつもりですかね?まだ早くないですか?」
「あら?でも何故かうまく行きそうに思えるわね?」
一方その頃、マランの母、ラミとゼロシは空中に浮かんでいる画面を仲良く見ながら微笑ましく思っていた。
「もしかしたらダルスさんもマランさんの事が好きなのを自覚してないからじゃ無いですか?」
「え?そうだったの?なら両思いね」
「でも上手く行きますかね?」
「行くわよ、あの子ならね」
「流石母親、信頼感が違いますね」
「私の方は政略結婚だったけどね」
「………思ったんですけどダルスさんって鈍感なんですね」
「そうね、マランの解りやすい表情を見ても全く理解してないものね」
「………身分差とか、大丈夫なんですかね?」
「大丈夫よ、他の貴族に何か言われたとしても私があの子達を守るから」
「頼もしいですね!」
この盗撮二人組は、恋愛好きで意気投合したのでもうすっかり仲良しだ、ではあちらはどうだろう?
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「………橋が壊れてますね」
「暁の丘がこちらの方向ではなかった事が幸いでしょうか?でもこれは報告するべきですね、お嬢様」
「そうですね、では行きましょ「お嬢様っ!」どうしっ!?」
マランは気づいた、崖に近づきすぎたのだ、橋が壊れていた理由は橋を押さえている部分が崩れ落ちたからだと、そして今回落ちるのは自分だと。
マランは悲鳴を上げる暇もなく落ちていく、しかし、その落下は途中で止まった。
「お嬢様!大丈夫ですか!」
ダルスに引き寄せられてマランは少し宙に浮いた。
そしてダルスはマランを抱き止めた。
「ダ、ダルス………ありがとう」
「どういたしまして」
マランはダルスに抱き止められた事で、顔を真っ赤にして思考放棄している。
それに気がついたダルスは急いでマランをおろした。
「ママママ!?マラン様!?すす!?すいませんでした!」
「い、いえ、大丈夫です」
しかし言葉とは裏腹にマランはまだ思考を放棄していた。
だが、それは幸運だったのだろう、何故なら今正気に戻ったら顔を真っ赤にしながらテンパって考えているの事を片っ端から呟いてしまいかねないからだ。
………この初々しい二人の謝罪と放心は夕方になりかける頃まで続いたと言う………。
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「………一瞬ヒヤッとしましたけど………上手く行ってますね」
「初々しくて良いわねぇ」
この二人、こんな事を言っているが、マランが落ちかけた時には物凄く慌てていた。
「私にもこんな時代がありましたねぇ」
「それは気になるわねぇ」
「言いませんよ、最後は暗い話になりますし」
「………なら聞かないわ、それよりもどう思う?マランのあの顔」
「………可愛らしいですねぇ、ダルスさんも釘付けじゃないですか」
「あの子、放心してるけど戻ってきた時が大変ね、多分茹でダコみたいに真っ赤になるんじゃないかしら?」
「それはさっき執務室でなってましたよ?」
「見たかったわねぇ」
「………ダルスさん、謝りまくってますね」
「顔も真っ赤なって………これからが楽しみねぇ」
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「つ、着きましたよ」
まだ顔の熱が抜けないマランは、できるだけ顔をダルスに向けない様にしていた。
ダルスはそれを怒っていると捉えているが………違う、照れているだけだ。
そんな二人も、夕日が出ている方向を向くと、言葉を失った。
そこに写っていたのは、普通の街の風景ではなく、ただの夕日でもなく………建物と建物の間を反射し続ける夕日の光が醸し出す絶景だった。
「………綺麗ですね」
「ええ、本当に」
その光景は心が洗われ、浄化される様な光景で、マランも、告白する事をしっかりと自覚した。
でも不思議と顔は赤面せず、ただひたすらに静かな時間を過ごしていた。
鳥達が飛び去り、人々は家へと帰り始める時間、暁の空の下で、二人の周りの時間は永遠にさえ感じられた。
しかし、その沈黙を破る声が現れた。
「あの、ダルス?」
「何でしょうか、お嬢様」
ダルスの顔を改めて見ても、少し赤面するだけで、テンパる事もなく、一度、深呼吸をした。
「………話があるんです………いや、あるの」
「何でしょう?」
マランは一度目を瞑ってから答えた。
「私、最近………領地の立て直しが落ち着いてからわかった事があるんです、多分それはずっと前から思っていたけど忙しくてわからなかった事、でも漸くわかった事」
一度深呼吸してから、マランは言い放った。
「私………貴方の事が好きなんです!」
「はい………え!?」
「自覚したのはゼロシさんに言われてからで、私が貴方の事を乙女の目で見てるって言われまして、そこからわかっんです」
「………その話は本当ですか?」
「はい、本当です」
マランの告白を聞いたダルスは一度目を瞑り問いかけた。
「俺は騎士ですよ?ほかの貴族に色々言われるかもしれませんよ?」
「それでも良いです」
「身分の差があったとしてもですか?」
「それでも私は諦められない」
「………わかりました、でもこれは俺から言わせて下さい………………俺と、付き合ってくれますか?」
「………喜んでっ!」
この瞬間、二人の恋は実った。
この先の道は長く険しいだろう。
しかし、この二人なら、乗り越えられる。
二人の人生に天使が舞い降りた瞬間だった。
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「どうでした!あの時抱き締められてどんな感じでした!?」
「私も気になるわねぇ、お母様に教えなさい!」
「か、勘弁してくださぁい!」
二人が屋敷へ帰ると、恋愛大好き二人組が待ち構えていた。
今はその二人に質問攻めを受けている所だ。
ダルスはマシンガン並みのガールズトークについていけず、ただ赤面して壁で沈黙していた。
「お、お二人とも!落ち着いて下さい!」
「私はいつも通りですよ?」
「私もいつも通りねぇ」
「うぅぅ………」
質問攻めされるマランは真っ赤だったが、その表情はどこか嬉しそうだった。
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ライト「………」ニヤニヤ
光海「………」ニヤニヤ
壁&ロリ好き「「ニヤニヤ」」
ディメン「お前ら気持ち悪いぞ」
ライト「いやー、だってさー、自分が無性別だからねぇ、こういう恋愛ってした事ないから人のを見てるとニヤけてきちゃうんだよ」
光海「私も同じくです」
壁&ロリ好き「左右に同じく」
ディメン「てか何でお前ら作者の分身がいるんだよ?」
壁「今回の話を作る時に」
ロリ好き「脳がたりないから全分身集合だって言われた」
壁「と言うかうさ好きの奴サボりやがったなぁ!?」
ロリ好き「あいつ最近進化し直したんだって」
壁「今度見つけたらぼっこぼこに「二人とも♪そこまでだよ?」ヒィッ!?」
ディメン「賑やかだなぁ………今回はこの小説を読んでくれてありがとな」
ライト「誤字脱字やストーリー矛盾等がありましたらご報告の方をお願いします」
ディメン「それでは皆さん」
ディメン&ライト「「さようなら」」
作者は小説を読もうの一部のコメント欄で色々な姿で大暴れしています(流石に止めてくださいとか言われたら止める程の常識は持ってますよ?まだ言われてはいませんが)
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弓術師&テイマーになった幼女、癒しスキルでモフモフ魔物に囲まれてます。
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※素人ですが読んでくれると嬉しいです。感想お待ちしています。
毎週月曜日12時公開です。
ユーヤのお気楽異世界転移
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死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
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