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第3の事件『死別の涙を拭う偽魔女』 第2章「見えないはずの幽霊が見える街」
第2話「何もできない魔法使い」
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「お退きなさい」
金持ちのお嬢様故に、色鮮やかな服装をしているのだろ思う。
でも、故人を偲ぶための街での華やかな服装は浮いて見える。
みんながみんな黒色の服を着なさいって決まりはないけど、周囲を行き交う人たちの服装は落ち着いた色合い。お嬢様のフラが身にまとっている服は、スプーストの街から除け者状態。
「道を譲ることもできませんの?」
金があるなら、ある程度の教養や常識があるはず。
それなのに、フラは貧しい子どもたちを弱者と決めつけて命令を下す。
金がある人間が偉いっていう、昔なりの考え方に取り残されているフラに子どもたちはおとなしく従う。
(感じ悪っ……)
でも、ある程度の教養があるっていうのは間違っていなかった。
瞬時に俺とノルカが魔女でないと判断したフラは、俺たちを見下すような腹立たしい視線を向けたあとに無視を決め込む。
魔法使いには価値がないといわんばかりのフラの目に嫌なものを感じた。
「あっ! れーばーしさんだっ」
フラ一行が去るのを見送ると、フラに道を譲った子どもたちが何かを見つけて賑やかな声を上げる。
子どもたちが注目する方向を向くと、黒いローブを身にまとったアリザが姿を現した。
「みんな」
黒いローブを身にまとったアリザは相変わらず可愛らしい声と小柄な体型をしていて、募金活動を行っている子たちに紛れてもなんら違和感はない。
「募金活動はダメって言ったでしょ」
特徴ある可愛らしい声で、子どもたちに募金活動をやめるように促すアリザ。
「だって……」
「ママたちに会いたくて……」
アリザに注意された子どもたちは素直に反省の意を示し、そんな姿を見たアリザは子どもたちの頭を優しく撫でていく。
(バッチはない……)
魔女資格を持つ者に与えられるバッチを身につけていないアリザ。
本物の霊媒師だったら、魔女資格のバッチは必要ない。
幽霊を見せることができるくらい力ある霊媒師ですとアリザに返されてしまったら、そうですかと認めるしかない。
「お金の問題じゃないの」
「でも、いつ順番が回ってくるか、わからないから!」
「それでもダメなものはダメ」
子どもたちの証言通り、霊媒師のアリザは自分の商売に対して法外な料金を請求しているわけではないらしい。
「ほら、暗くならないうちに帰ること」
アリザは子どもたちの身を心配しながら、彼らの背中を押して児童養護施設へ帰るように声をかける。
子どもたちは募金活動に未練があるようだが、アリザはその未練を抱く隙すら与えずに笑顔で子どもたちを見送る。
「子どもたちの話し相手になってくれて、ありがとうございましたっ」
「いえ、私たちは何も……」
黒いローブで顔をなるべく見せないようにしていても、俺たちと向き合うことでアリザの少女の美しい金色の髪の毛が姿を見せた。
「では、私は仕事があるので……」
目に見えない幽霊を見ることができるっていう情報だけで、偽魔女の調査する難しさを感じる。
「アンジェル、ここは引きましょう」
目に見えるはずのないものを見ることができる。
故人と再会するためには、写真が必要。
問い詰めるための条件は揃っているのに、偽魔女だと決めつける証拠が見つからない。
「生活費を稼いだら、次の街に移動ね」
「でも……!」
「幽霊が見えるようになっただけで、偽魔女だって疑うことはできない」
「…………」
「何も被害が出ていないって、厄介ね」
誰も、霊媒師のことを悪く言わない。
霊媒師が原因で、不幸になっている人はいない。
被害と呼べるような被害が何も出ていないことが、こんなにも捜査を難しくしていくとは思わなかった。
金持ちのお嬢様故に、色鮮やかな服装をしているのだろ思う。
でも、故人を偲ぶための街での華やかな服装は浮いて見える。
みんながみんな黒色の服を着なさいって決まりはないけど、周囲を行き交う人たちの服装は落ち着いた色合い。お嬢様のフラが身にまとっている服は、スプーストの街から除け者状態。
「道を譲ることもできませんの?」
金があるなら、ある程度の教養や常識があるはず。
それなのに、フラは貧しい子どもたちを弱者と決めつけて命令を下す。
金がある人間が偉いっていう、昔なりの考え方に取り残されているフラに子どもたちはおとなしく従う。
(感じ悪っ……)
でも、ある程度の教養があるっていうのは間違っていなかった。
瞬時に俺とノルカが魔女でないと判断したフラは、俺たちを見下すような腹立たしい視線を向けたあとに無視を決め込む。
魔法使いには価値がないといわんばかりのフラの目に嫌なものを感じた。
「あっ! れーばーしさんだっ」
フラ一行が去るのを見送ると、フラに道を譲った子どもたちが何かを見つけて賑やかな声を上げる。
子どもたちが注目する方向を向くと、黒いローブを身にまとったアリザが姿を現した。
「みんな」
黒いローブを身にまとったアリザは相変わらず可愛らしい声と小柄な体型をしていて、募金活動を行っている子たちに紛れてもなんら違和感はない。
「募金活動はダメって言ったでしょ」
特徴ある可愛らしい声で、子どもたちに募金活動をやめるように促すアリザ。
「だって……」
「ママたちに会いたくて……」
アリザに注意された子どもたちは素直に反省の意を示し、そんな姿を見たアリザは子どもたちの頭を優しく撫でていく。
(バッチはない……)
魔女資格を持つ者に与えられるバッチを身につけていないアリザ。
本物の霊媒師だったら、魔女資格のバッチは必要ない。
幽霊を見せることができるくらい力ある霊媒師ですとアリザに返されてしまったら、そうですかと認めるしかない。
「お金の問題じゃないの」
「でも、いつ順番が回ってくるか、わからないから!」
「それでもダメなものはダメ」
子どもたちの証言通り、霊媒師のアリザは自分の商売に対して法外な料金を請求しているわけではないらしい。
「ほら、暗くならないうちに帰ること」
アリザは子どもたちの身を心配しながら、彼らの背中を押して児童養護施設へ帰るように声をかける。
子どもたちは募金活動に未練があるようだが、アリザはその未練を抱く隙すら与えずに笑顔で子どもたちを見送る。
「子どもたちの話し相手になってくれて、ありがとうございましたっ」
「いえ、私たちは何も……」
黒いローブで顔をなるべく見せないようにしていても、俺たちと向き合うことでアリザの少女の美しい金色の髪の毛が姿を見せた。
「では、私は仕事があるので……」
目に見えない幽霊を見ることができるっていう情報だけで、偽魔女の調査する難しさを感じる。
「アンジェル、ここは引きましょう」
目に見えるはずのないものを見ることができる。
故人と再会するためには、写真が必要。
問い詰めるための条件は揃っているのに、偽魔女だと決めつける証拠が見つからない。
「生活費を稼いだら、次の街に移動ね」
「でも……!」
「幽霊が見えるようになっただけで、偽魔女だって疑うことはできない」
「…………」
「何も被害が出ていないって、厄介ね」
誰も、霊媒師のことを悪く言わない。
霊媒師が原因で、不幸になっている人はいない。
被害と呼べるような被害が何も出ていないことが、こんなにも捜査を難しくしていくとは思わなかった。
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