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第3章「命の価値を測る偽魔女」
第6話「魔女と偽魔女と魔法使い」
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「人々の困りごとを解決するのは、魔女の使命ですよね」
互いに、見つめ合う時間が続く。
「それなのに」
睨み合うって表現の方が合ってるんだろうけど、フェリーナは今もにこやかに笑っている。
睨み合うって展開に持ち込めないところが、やっぱりフェリーナに場の空気を握られているってことを実感させられる。
「女装をしてまで魔女を目指しているあなたは、困っている方を見捨てるのですか?」
俺にだって、フェリーナを攻撃するチャンスが訪れている。
「見捨てないために」
完全に間合いを読み間違えたとは思ったけど、自分の顔を覗き込まれるくらいフェリーナに距離を縮められたのを怖いと思ってしまった。
「俺は魔女になるって決めたんだよ!」
フェリーナと対峙している、この場所を光で照らすために光魔法を選ぶ。
本来は人々に明かりという名の光をもたらすために使われる魔法を、フェリーナを傷つけるために使った。
「人を救いたいって思ったから……!」
光の矢をイメージして飛ばした光魔法は、フェリーナを傷つけることに成功した。
でも、それは成功したとは言えない。
「ダメですねぇ」
「っ」
「もっと本気にならないと、私を殺すことはできませんよ」
フェリーナが、俺の攻撃を避けなかった。
だから、俺の放った光魔法は、フェリーナを傷つけることに成功した。
「こんな風に」
腕を取られる。
フェリーナの腕から溢れ出る血に触れるよう、手を誘導される。
ぐちゃっとした音が聴覚に響き、自分はフェリーナの血に触れているんだってことを無理に実感させられる。
「出血してしまうと、他殺の線を疑われてしまうんです」
薄暗い世界ではフェリーナの血を確認することはできない。
でも、手が、生温かい感触を確認する。
「だから、人を殺すときは自然死を装うんです」
攻撃を避けなかったフェリーナは痛みを感じているはずなのに、その痛みなんてなかったかのようにフェリーナは綺麗に笑う。
「心臓が止まりますように、って願いを込めるんです」
自分の心臓に、フェリーナの手が置かれる。
「約束ですよ……っ」
手をかけられる直前で、魔法は発動を止めた。
フェリーナの気を引く何かが、目の前を横切った。
「ヴァルツ……ヴァルツ!」
フェリーナの呼び声に反応した黒い存在は金色の瞳を光らせながら、部屋の中を好き勝手に動き回る。
「無事に逃げることができたのですね」
宿屋にいる黒猫の防御魔法を解いた記憶はない。
解かなかったことを後悔していたくらいなのに、自分の防御魔法はフェリーナへの攻撃に集中しているうちに解けてしまったらしい。
「ヴァルツ、私はここですよ」
フェリーナが探し求めていた黒猫と再会できた隙を狙って、フェリーナにもう1度、攻撃魔法としての光を仕掛ける。
黒猫に夢中になっていたはずなのに、フェリーナは華麗に攻撃魔法を防いでしまう。
「アンジェルさん、聞いてました?」
避けることができないくらいの速さで光魔法を飛ばすけれど、何度も何度もフェリーナの防御魔法に弾かれる。
「攻撃魔法で、人を殺してはダメなんですって」
自分の元へと帰ってこない黒猫に意識を向けるっていう不利を抱えながら、フェリーナは舞台上にいるような美しさで次々と魔法を交わしていく。
「人を殺すときは、自然死を装う……っ、う……」
話しかけているのは俺でも、視線は部屋中を駆け回る黒猫に目を向けていたフェリーナ。
フェリーナは頭を抱え込み、自身の足で立っていられなくなる。
「アンジェル!」
どこかから、ノルカの声が聞こえた。
その場へと屈みこんでしまった今が、フェリーナを捕らえる好機。
ノルカの声に込められた想いを拾い、俺はフェリーナを拘束するための魔法を使う。
「っあ……」
攻撃に使っていた光魔法を拘束するための魔法に応用し、フェリーナが魔法を使うことができないように強く拘束する。
ヴァルツと呼ばれていた黒猫は光魔法に拘束されることを嫌って、フェリーナの傍から離れていった。
互いに、見つめ合う時間が続く。
「それなのに」
睨み合うって表現の方が合ってるんだろうけど、フェリーナは今もにこやかに笑っている。
睨み合うって展開に持ち込めないところが、やっぱりフェリーナに場の空気を握られているってことを実感させられる。
「女装をしてまで魔女を目指しているあなたは、困っている方を見捨てるのですか?」
俺にだって、フェリーナを攻撃するチャンスが訪れている。
「見捨てないために」
完全に間合いを読み間違えたとは思ったけど、自分の顔を覗き込まれるくらいフェリーナに距離を縮められたのを怖いと思ってしまった。
「俺は魔女になるって決めたんだよ!」
フェリーナと対峙している、この場所を光で照らすために光魔法を選ぶ。
本来は人々に明かりという名の光をもたらすために使われる魔法を、フェリーナを傷つけるために使った。
「人を救いたいって思ったから……!」
光の矢をイメージして飛ばした光魔法は、フェリーナを傷つけることに成功した。
でも、それは成功したとは言えない。
「ダメですねぇ」
「っ」
「もっと本気にならないと、私を殺すことはできませんよ」
フェリーナが、俺の攻撃を避けなかった。
だから、俺の放った光魔法は、フェリーナを傷つけることに成功した。
「こんな風に」
腕を取られる。
フェリーナの腕から溢れ出る血に触れるよう、手を誘導される。
ぐちゃっとした音が聴覚に響き、自分はフェリーナの血に触れているんだってことを無理に実感させられる。
「出血してしまうと、他殺の線を疑われてしまうんです」
薄暗い世界ではフェリーナの血を確認することはできない。
でも、手が、生温かい感触を確認する。
「だから、人を殺すときは自然死を装うんです」
攻撃を避けなかったフェリーナは痛みを感じているはずなのに、その痛みなんてなかったかのようにフェリーナは綺麗に笑う。
「心臓が止まりますように、って願いを込めるんです」
自分の心臓に、フェリーナの手が置かれる。
「約束ですよ……っ」
手をかけられる直前で、魔法は発動を止めた。
フェリーナの気を引く何かが、目の前を横切った。
「ヴァルツ……ヴァルツ!」
フェリーナの呼び声に反応した黒い存在は金色の瞳を光らせながら、部屋の中を好き勝手に動き回る。
「無事に逃げることができたのですね」
宿屋にいる黒猫の防御魔法を解いた記憶はない。
解かなかったことを後悔していたくらいなのに、自分の防御魔法はフェリーナへの攻撃に集中しているうちに解けてしまったらしい。
「ヴァルツ、私はここですよ」
フェリーナが探し求めていた黒猫と再会できた隙を狙って、フェリーナにもう1度、攻撃魔法としての光を仕掛ける。
黒猫に夢中になっていたはずなのに、フェリーナは華麗に攻撃魔法を防いでしまう。
「アンジェルさん、聞いてました?」
避けることができないくらいの速さで光魔法を飛ばすけれど、何度も何度もフェリーナの防御魔法に弾かれる。
「攻撃魔法で、人を殺してはダメなんですって」
自分の元へと帰ってこない黒猫に意識を向けるっていう不利を抱えながら、フェリーナは舞台上にいるような美しさで次々と魔法を交わしていく。
「人を殺すときは、自然死を装う……っ、う……」
話しかけているのは俺でも、視線は部屋中を駆け回る黒猫に目を向けていたフェリーナ。
フェリーナは頭を抱え込み、自身の足で立っていられなくなる。
「アンジェル!」
どこかから、ノルカの声が聞こえた。
その場へと屈みこんでしまった今が、フェリーナを捕らえる好機。
ノルカの声に込められた想いを拾い、俺はフェリーナを拘束するための魔法を使う。
「っあ……」
攻撃に使っていた光魔法を拘束するための魔法に応用し、フェリーナが魔法を使うことができないように強く拘束する。
ヴァルツと呼ばれていた黒猫は光魔法に拘束されることを嫌って、フェリーナの傍から離れていった。
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