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第3章「命の価値を測る偽魔女」
第5話「偽魔女」
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「私たちなら暴力の被害を受けた人たちを、犯罪者にすることなく人を殺すことができます」
自分の言うことに間違いはない。
自分こそが、正しい。
自分の考えを、フェリーナは俺に押しつけてくる。
「あ、証拠を残さずに人を殺すのは不可能だと心配されていますか?」
独壇場。
言葉を挟む隙すら与えず、フェリーナは俺のことを人殺しの道へと誘ってくる。
「それ、どうやら嘘らしいですよ。みなさん、願う力が弱すぎるのでしょうね」
さっきまで俺の動きを止める気満々だったくせに、フェリーナは同士を見つけたときの喜びを抑えきれずに両手で握手を求めてくる。
「魔法は、不可能を可能にしました」
握手できる距離までフェリーナが近づくと、彼女の瞳が異様なくらい輝かしく見える。
「私たちは、一瞬で人の命を奪うことができるんですよ」
フェリーナに握り締められた手を振り解き、交渉決裂の合図を送る。
「俺は、人を殺すために魔女を目指してんじゃねーよ」
「結構いいお金になりますよ? 男性がなれない魔女を目指すより、よっぽど豊かな人生を送れると思いますが」
フェリーナと距離を取ろうとした瞬間、鋭い光魔法が足をかすめて動きを鈍らせた。
「今の制度だと、男は魔女になれないもんなー」
「ですよね、ですよね」
攻撃魔法を仕掛けられると思って防御魔法を用意したけど、そもそもフェリーナは俺を攻撃していない。
足が鉛のように重たく感じるだけで、痛みはまったく感じない。
「私と組んで人助けをした方が、幸せな人生を送れちゃいますよ」
光魔法で足が拘束されているんだって気づいた頃には、膝から下の感覚がなくなったかのような状態。足が硬化しているわけではないのに、硬化って言葉が頭を過るほど足が絞めつけられている。
「私もあなたと同じで、人を救いたい側の人間だと思っているんですけどね」
自分に、どんな魔法を仕掛けられているのか。
なんとなくでしか判断できないくらい、何が起きているのかっていう分析が遅れてる。
「いじめは、いじめられる側にも原因があるとか言う方がいるじゃないですか」
防御魔法で魔法を弾く隙も、攻撃魔法でやり返す隙も与えてもらえないほど、フェリーナの魔法が速い。
こうして和やかな会話を繰り広げているように見えて、フェリーナは体のどの部分の動きを次に封じるか見計らっているからこそ質が悪い。
「は? って感じですよね。暴力を振るわれる側に原因がある? ふざけんなって話ですよ」
言葉使いは荒々しいものになっているのに、フェリーナの声はずっと穏やかなまま。
暴力に怯える人たちを救うために活動してきたフェリーナだって、怒りや苦しみ。
悔しさって感情が渦巻いているはずなのに、フェリーナは決して声を荒げたりしない。
「どうして、暴力を受ける側が悪いと決めつけるのですか」
観客は俺しかないのに、フェリーナは優雅に振る舞いながら正論を述べてくる。
「どう考えても、暴力を振るう側が悪いですよね」
「その意見にだけは賛同する」
「その意見に、だけ?」
久しぶりに、俺に発言権を与えたフェリーナ。
でも、俺の言葉を不思議そうな瞳で否定してくる。
「俺は魔法の力を、人殺しになんて使いたくない」
「救いを求めている人がいるのに?」
「そうだよ」
「話し合いで解決なさるおつもりですか? 逃亡の手助けをしますか? それができないから、奥様は旦那の殺害を依頼されたんですよ?」
次こそは攻撃を仕掛けてくると思ったら、また距離を縮められる。
また、握手を交わすんじゃないかってくらい距離が縮められて、俺を殺すには絶好のチャンスが訪れているはず。なのに、フェリーナは俺を傷つけるための魔法を行使しない。
自分の言うことに間違いはない。
自分こそが、正しい。
自分の考えを、フェリーナは俺に押しつけてくる。
「あ、証拠を残さずに人を殺すのは不可能だと心配されていますか?」
独壇場。
言葉を挟む隙すら与えず、フェリーナは俺のことを人殺しの道へと誘ってくる。
「それ、どうやら嘘らしいですよ。みなさん、願う力が弱すぎるのでしょうね」
さっきまで俺の動きを止める気満々だったくせに、フェリーナは同士を見つけたときの喜びを抑えきれずに両手で握手を求めてくる。
「魔法は、不可能を可能にしました」
握手できる距離までフェリーナが近づくと、彼女の瞳が異様なくらい輝かしく見える。
「私たちは、一瞬で人の命を奪うことができるんですよ」
フェリーナに握り締められた手を振り解き、交渉決裂の合図を送る。
「俺は、人を殺すために魔女を目指してんじゃねーよ」
「結構いいお金になりますよ? 男性がなれない魔女を目指すより、よっぽど豊かな人生を送れると思いますが」
フェリーナと距離を取ろうとした瞬間、鋭い光魔法が足をかすめて動きを鈍らせた。
「今の制度だと、男は魔女になれないもんなー」
「ですよね、ですよね」
攻撃魔法を仕掛けられると思って防御魔法を用意したけど、そもそもフェリーナは俺を攻撃していない。
足が鉛のように重たく感じるだけで、痛みはまったく感じない。
「私と組んで人助けをした方が、幸せな人生を送れちゃいますよ」
光魔法で足が拘束されているんだって気づいた頃には、膝から下の感覚がなくなったかのような状態。足が硬化しているわけではないのに、硬化って言葉が頭を過るほど足が絞めつけられている。
「私もあなたと同じで、人を救いたい側の人間だと思っているんですけどね」
自分に、どんな魔法を仕掛けられているのか。
なんとなくでしか判断できないくらい、何が起きているのかっていう分析が遅れてる。
「いじめは、いじめられる側にも原因があるとか言う方がいるじゃないですか」
防御魔法で魔法を弾く隙も、攻撃魔法でやり返す隙も与えてもらえないほど、フェリーナの魔法が速い。
こうして和やかな会話を繰り広げているように見えて、フェリーナは体のどの部分の動きを次に封じるか見計らっているからこそ質が悪い。
「は? って感じですよね。暴力を振るわれる側に原因がある? ふざけんなって話ですよ」
言葉使いは荒々しいものになっているのに、フェリーナの声はずっと穏やかなまま。
暴力に怯える人たちを救うために活動してきたフェリーナだって、怒りや苦しみ。
悔しさって感情が渦巻いているはずなのに、フェリーナは決して声を荒げたりしない。
「どうして、暴力を受ける側が悪いと決めつけるのですか」
観客は俺しかないのに、フェリーナは優雅に振る舞いながら正論を述べてくる。
「どう考えても、暴力を振るう側が悪いですよね」
「その意見にだけは賛同する」
「その意見に、だけ?」
久しぶりに、俺に発言権を与えたフェリーナ。
でも、俺の言葉を不思議そうな瞳で否定してくる。
「俺は魔法の力を、人殺しになんて使いたくない」
「救いを求めている人がいるのに?」
「そうだよ」
「話し合いで解決なさるおつもりですか? 逃亡の手助けをしますか? それができないから、奥様は旦那の殺害を依頼されたんですよ?」
次こそは攻撃を仕掛けてくると思ったら、また距離を縮められる。
また、握手を交わすんじゃないかってくらい距離が縮められて、俺を殺すには絶好のチャンスが訪れているはず。なのに、フェリーナは俺を傷つけるための魔法を行使しない。
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