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第1の事件『承認欲求の偽魔女』 第1章「魔法学園からの旅立ち」
第2話「魔女>>>魔法使い」
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「なんで俺が不合格なんだよ!」
魔女試験の結果を確認次第、学園長室に来るように言われていた。
合格発表当日に俺を心配して時間をとってくれた学園長に感謝はしたいけれど、不合格直後に祖母に顔を見せなきゃいけない孫の身にもなってほしい。
「7年も頑張ったところで、男は魔女になれないってわかっただろ」
「男が魔女になれないとか、昔の事情を押しつけんな」
学園長の許可もなく、来客用の椅子に腰かける。
魔女帽子を深めに被って、祖母の目を見ずに済むよう工夫した。
「俺の実力なら、絶対に合格できた」
魔法と呼ばれる万能なる力が尊重されているローゼンリウス国。
しかし、ユリジスタ暦926年に事件は起きた。
王族に仕えていた男性魔法使いが、王の娘である姫を病から救うことができなかった。
その結果、女性魔法使いへの敬意と男性魔法使いへの不信感が広まった。
「なんで今も、男が使う魔法は質が悪いって言われなきゃなんだよ」
姫の死をきっかけに、女性魔法使いを支持する人たちが増え始めた。
男は現代になっても魔女試験を受けることすら許されない。
それなのに、魔女試験に合格した魔女は高貴なる存在として地位が確立され、将来の安泰が約束される。
一方の魔女試験を受けることができない男性魔法使いは、今も肩身狭い思いをして生きている。少し魔法を使っただけで、後ろ指を刺されるのが男性魔法使いの現状。
「何百年前の決まりを今も引きずるとか、絶対に間違ってる!」
必死に魔女帽子で自分の瞳を隠すけど、自分の瞳を見られずに済んだところで魔女試験に落ちたという現実に変化は起きない。
「……魔女になりたい」
いつまでも不自然に帽子のつばを引っ張っている姿を、泣いているって勘違いされるのも嫌だった。
魔女帽子を手に取り、誰も座っていない隣の来客席に帽子を投げやる。
頭に馴染んだはずの帽子は持ち主を失い。男でも魔女になれると証明するための7年が終わりを告げたことを訴えかけてくる。
「おまえが頑張ったところで、国は変わらなかっただろ」
「俺は、魔女になる」
夢を語るときだけは、祖母の視線から逃げてしまう。
そんな自分をかっこ悪いとは思うけれど、どう頑張っても夢を叶えることができないという現実に打ちのめされる。
「魔女になって、先生になって、魔法の楽しさを伝えたい……」
天井を見上げながら、自分の夢を改めて言葉で表現した。
でも、実現させたいという気持ちを語ったはずの声は、あまりにも弱かった。
叶えたいはずの夢は無残に散って、その夢を拾い上げてくれる人は現れないという現実を受け入れる。
「なんで、今も男の魔法使いを認めてくれないんだよ……」
叶わない夢。
自分が叶うことのない夢を抱いているってことは、何回も何十回も何百回だって言われてきた。諭されてきた。
それでも努力を積み重ねていけば、奇跡が起きるんじゃないかって信じた。
男だって、魔女の資格を得られる日が来るんじゃないかって信じてきた。
でも、現実は優しくもできていないし、甘くもできていないと痛感する。
「珍しく、しけた顔してるじゃないか」
学園長が席から立ち上がり、来客席という居場所を確保した魔女帽子を拾い上げる。
「だって……」
努力したって、叶わない夢。
でも、その夢を叶えたい。
叶えたいけれど、夢を叶えるための方法が分からない。
「ただ夢を叶えたいだけなのに、なんで古い時代に起きた出来事に邪魔されなきゃいけな……」
捨てたはずの魔女帽子が、自分の頭へと戻ってくる。
魔女帽子を自分の頭に戻してくれたのは、ほかの誰でもない祖母だった。
「国が追試験を提案してきた。やってみるかい?」
学園長がくれた言葉の意味が、さっぱり理解できなかった。
魔女試験の結果を確認次第、学園長室に来るように言われていた。
合格発表当日に俺を心配して時間をとってくれた学園長に感謝はしたいけれど、不合格直後に祖母に顔を見せなきゃいけない孫の身にもなってほしい。
「7年も頑張ったところで、男は魔女になれないってわかっただろ」
「男が魔女になれないとか、昔の事情を押しつけんな」
学園長の許可もなく、来客用の椅子に腰かける。
魔女帽子を深めに被って、祖母の目を見ずに済むよう工夫した。
「俺の実力なら、絶対に合格できた」
魔法と呼ばれる万能なる力が尊重されているローゼンリウス国。
しかし、ユリジスタ暦926年に事件は起きた。
王族に仕えていた男性魔法使いが、王の娘である姫を病から救うことができなかった。
その結果、女性魔法使いへの敬意と男性魔法使いへの不信感が広まった。
「なんで今も、男が使う魔法は質が悪いって言われなきゃなんだよ」
姫の死をきっかけに、女性魔法使いを支持する人たちが増え始めた。
男は現代になっても魔女試験を受けることすら許されない。
それなのに、魔女試験に合格した魔女は高貴なる存在として地位が確立され、将来の安泰が約束される。
一方の魔女試験を受けることができない男性魔法使いは、今も肩身狭い思いをして生きている。少し魔法を使っただけで、後ろ指を刺されるのが男性魔法使いの現状。
「何百年前の決まりを今も引きずるとか、絶対に間違ってる!」
必死に魔女帽子で自分の瞳を隠すけど、自分の瞳を見られずに済んだところで魔女試験に落ちたという現実に変化は起きない。
「……魔女になりたい」
いつまでも不自然に帽子のつばを引っ張っている姿を、泣いているって勘違いされるのも嫌だった。
魔女帽子を手に取り、誰も座っていない隣の来客席に帽子を投げやる。
頭に馴染んだはずの帽子は持ち主を失い。男でも魔女になれると証明するための7年が終わりを告げたことを訴えかけてくる。
「おまえが頑張ったところで、国は変わらなかっただろ」
「俺は、魔女になる」
夢を語るときだけは、祖母の視線から逃げてしまう。
そんな自分をかっこ悪いとは思うけれど、どう頑張っても夢を叶えることができないという現実に打ちのめされる。
「魔女になって、先生になって、魔法の楽しさを伝えたい……」
天井を見上げながら、自分の夢を改めて言葉で表現した。
でも、実現させたいという気持ちを語ったはずの声は、あまりにも弱かった。
叶えたいはずの夢は無残に散って、その夢を拾い上げてくれる人は現れないという現実を受け入れる。
「なんで、今も男の魔法使いを認めてくれないんだよ……」
叶わない夢。
自分が叶うことのない夢を抱いているってことは、何回も何十回も何百回だって言われてきた。諭されてきた。
それでも努力を積み重ねていけば、奇跡が起きるんじゃないかって信じた。
男だって、魔女の資格を得られる日が来るんじゃないかって信じてきた。
でも、現実は優しくもできていないし、甘くもできていないと痛感する。
「珍しく、しけた顔してるじゃないか」
学園長が席から立ち上がり、来客席という居場所を確保した魔女帽子を拾い上げる。
「だって……」
努力したって、叶わない夢。
でも、その夢を叶えたい。
叶えたいけれど、夢を叶えるための方法が分からない。
「ただ夢を叶えたいだけなのに、なんで古い時代に起きた出来事に邪魔されなきゃいけな……」
捨てたはずの魔女帽子が、自分の頭へと戻ってくる。
魔女帽子を自分の頭に戻してくれたのは、ほかの誰でもない祖母だった。
「国が追試験を提案してきた。やってみるかい?」
学園長がくれた言葉の意味が、さっぱり理解できなかった。
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