からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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クリスマス⑤

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ゆきの今回のプランは風間邸を中心にしているらしい。
「カナには、久しぶりに家族のクリスマスを存分に楽しんで欲しい」
そういってゆきは飾り付けされた風間邸を隅々まで案内してくれた。
まずは庭園。
庭園は昔から庭師の人が季節にあった植物を育てていて、一年中その季節に一番美しい花が広がる。
今はポインセチア、プリンセチア、クリスマスローズが咲いていた。
後ろからついてくるゆきはずっとカメラをのぞいている。
「せっかく綺麗なのに見ないの?」
「せっかく綺麗な庭園にカナがいるのにそれを残さない方がもったいない」
ゆきはカメラを離す気はなさそう。僕だってもう少しゆきの顔を見たいし、カメラを借りてゆきを撮りたい。
「ガゼポあったよね、あそこ行こうよ」
座って会話をしようとすればそんな隙も生まれるかと思った。
「そこは夜だね」
「え?」
「楽しみにしてて」
ゆきに何か考えがあるらしく、カメラを構えるだけで説明してくれる気配はない。
ガゼポの件は諦めるとして、ゆきの顔を見ること、カメラを借りて写真を撮ることは諦められない。
「ゆき……」
ゆきのコートの裾をちょっと引っ張りながらカメラを覗き込むようにして声をかける。本当は袖が良かったけど、袖はカメラを構えているから高さがあり、あざとく引っ張るのは難しい。
「え?」
ゆきはちょっとびっくりしながらやっとカメラから少し目を離す。
「僕も撮りたいし、ゆきの顔みたい……」
上目遣いでそういうと、ゆきはカメラをそっと腰の高さくらいまで下ろして、僕の空いてる手の上に載せる。
最近判明したが、ショータが言う女の子のあざとい仕草をすることがゆきに効果覿面だ。
「ありがと!」
にっこり笑ってカメラを構える。
「ちょ、ちょっと待って、まだ待って、さっきのが効いてるから……」
僕のあざとい仕草のせいで崩れた表情のままになっているゆきは、カメラから必死に逃げるが僕はその表情が撮りたいので追いかけて撮る。
「カナほんとどこで覚えてくるのそういうの……かわいすぎ……」
庭園ではしゃぐ僕たちを少し遠くから邸の使用人の人たちが微笑ましくみていたことには気づかなかった。
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