からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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番外編:面影

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カナはやはり美鶴さんに似ている。
でもそれだけではない。
俺が憧れたあの男が持っていて俺が持っていないところを持っている。
カナは風間グループに属するこの先の経営が比較的安定している会社の社長候補になった。
もちろん継ぐかどうかはカナのその時の意思を尊重すると松永が決めているが、もし継ぐ時のために経営などを覚えることになった。
それと同時に取引先への挨拶なども同席している。
カナは賢いから、それがどういうことなのかも、会社を継ぐにあたっての責任も全て理解している。
ほとんど急にそういったものが全て降りかかってきた。俺ならその責任に押し潰されそうになる。ならないとしても、責任について悶々と考えてしまう。
でもカナは違った。カナはその責任を全て理解した上で、悩むでもなく、喜ぶでもなくただ淡々と必要なことを吸収している。
「大丈夫?」
心配になってそう聞いた。
「ん?平気。みんないろいろ教えてくれようとしてるのが嬉しいから頑張る」
前向きでさっぱりとした回答だった。
こういうところはあの男譲りな気がする。
「すごいねカナは」
「何が?」
「前向きに頑張れてすごいよ」
「あぁ、だって僕にはゆきがいるもん」
俺はその回答は予想してなかった。
「え……?」
「僕が悩んでしょげても、ゆきはそばにいてくれるでしょ?それに継ぐにしても継がないにしてもこれを頑張ってればゆきに近づけそうだし。だったら頑張れる」
俺は嬉しくてつい返事を忘れてしまう。
「それに父様もいってた。昔は会社を経営することから逃げてたけど、母様に会って向き合えるようになったって。だから僕にとってゆきは父様にとっての母様みたいな人だね」
綺麗に笑うカナはやっぱり美鶴さんにそっくり。
……でもそうか。あの男も逃げたかったことがあるのか。
昔から嫌いだった、憧れの男を少し好きになった。こんなに長い年月が経って、本人がいないところで。
「やっぱりカナは俺の天使だね」
「何が?」
不思議そうなカナの頭をいつものように撫でると、カナは不思議そうにしながらもされるがままになっていた。
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