からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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これまで、これから③

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昔、何度か来たことのある風間家本邸は、昔のままで、迷わず約束の一階の応接室にたどり着くことができた。
もちろんゆきが一緒に来ているので迷っても案内してくれるのだが、その必要は全くなかった。
応接室に着くと、懐かしいソファや机、本棚があった。この一階応接室も昔よくゆきと遊び場にしていた。小さい頃だから社長ごっことか言って立派な机にふかふかのチェアがあるこの部屋で、よく踏ん反り返ったふりをした。
懐かしさに部屋を少し見渡しているとこえをかけられた。
「やぁ、退院早々呼びつけてごめんね。久しぶり要くん」
おじさんは昔より少し皺が多くなった印象だが、以前と変わらず紳士的で声音も穏やかで、昔のままだった。
「失礼します。ご挨拶遅くなり……」
「あ、大丈夫だよ、要くん楽にして」
おじさんは昔の通り優しい人だ。僕も頷いて少し力を抜く。隣にいるゆきにソファに促され、そっと座る。おじさんは立派なチェアから降りると僕の向かいにあるソファへ移動してきて座った。
「今回は大変だったね。俺も調査はしていたがもっと早く尻尾を掴んでああするべきだった。申し訳ない」
おじさんは膝に手をつき頭を下げる。
「いえっ……そんな……むしろ風間グループでもないのにありがとうございます」
僕は慌てて同じように頭を下げる。
「で、剛士の会社のことなんだけど」
僕はそっと顔を上げて居住まいを正す。
「あの会社、一旦風間グループで引き取っておこうと思う。いずれは君の好きなようにしてくれていいが、今は君はやっぱり勉学をするべきだと思ってね。かなり優秀だと聞いているし」
おじさんから「潰そうと思う」と言われたら交渉に入ろうと思っていたが引き取ってくれるならいうことはない。
ただ、完全吸収されるかと思っていたのに、好きにしていいというのが気になって驚いた表情でおじさんを見つめてしまう。
「元は君の会社だからね、剛士が君に残した会社だ。渡すも自分で持つも、君が考えるべきだろうと思って。あと、彼のたっての希望でね」
おじさんが手招きすると入口の方から1人の男性がおじさんの後ろに控えた。
僕はその人に見覚えがある。
「松永……」
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