からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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これまで、これから①

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「カナ、それでどこまで思い出したの?」
ゆきは僕が泣き止むとそう聞いてきた。
「だいたいは思い出した。ゆきにぃのことも父様と母様のことも」
記憶が戻ったおかげで、自分がどういうふうに過ごしていたか、感情の起伏や素の性格みたいな抑えてきたものも全部思い出した。
思い出したこともあってあの堅苦しい振る舞いはしなくなった。むしろ、あれほど気を遣ったような振る舞いはもうできない。息が詰まる。
「そっか。……あの頃のカナ、天使みたいに可愛かったんだよねぇ」
うっとりとして語り始めるゆきの表情は懐かしいものがある。
「僕が褒めるとだいたいゆきは嬉しそうだった」
「そりゃぁね!あんなかわいい子がにっこり僕をかっこいいとか褒めるんだよ??嬉しい」
風間さんと呼んでいた頃より砕けた雰囲気で話せる。ゆきにぃは僕を素直に甘えさせてくれる相手だった。僕も少なからずゆきと一緒で御曹司としてきちんとしなければいけないことも多かった。もちろん両親はそう言わないのだが、周りから期待されていることは感じていた。
でもゆきは違った。ゆきは僕に期待しなかった。最初のゆきはそっけなさはあれど、僕の面倒をちゃんと見てくれた。僕もそんなに考えて懐いたわけではないが、懐いた理由の一つだと思う。
「あ、カナ、今もカナはかわいいから褒めてくれたらめっちゃ嬉しいよ」
ニコニコと僕を見つめて褒めてほしいと言わんばかり。ちょっとイタズラを仕掛けてくる辺りも昔から変わっていない。
「……ゆき大好き」
僕はゆきと反対側に顔を向けて布団をかぶると小さい声でそう言った。
「っ……ひどい、顔見たかった……絶対かわいい」
僕は布団をしっかりと握って捲らせないように構えたが、ゆきは僕に無理をさせないためか、今回は布団をめくろうとしてこなかった。
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