からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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救出①

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どのくらい経ったのだろう。夜が明けて日が昇っている。体はまだ痛い。無理矢理体を起こそうとするがどうも動かないところがある。骨が折れているかも知れない。
ぼんやりとそのまま前を向くが納屋の景色があるだけだ。
瞼を閉じれば簡単に風間さんと過ごした楽しい日々も、昔ゆきにぃと遊んだ思い出も、父様と母様のことも思い出せる。
ここを出て、また平穏な日々を過ごしたい。
そう思いながらじっと、することもなく納屋に転がっていると、ふと母屋から騒がしい足音がいくつかと叔父の声が聞こえてきた。
「帳簿は隠せ」
そんな声。実は薄々思っていたことだが、そういう話をするということはやはりそうなのだろう。叔父は会社の資金に手をつけている。そう確信した。
おかしいとは思っていた。会社の経営はどうやら父様が社長をしていた時よりうまく回っていない。その割にアクセサリーや車、見えるところへのお金の使い方は父様のそれより何倍も贅沢だった。
そんなお金がどこにあるのか、不思議に思っていたがそういうことか。
体裁にこだわる叔父のことだ。会社がうまくいっていないことを悟らせないためにも贅沢をしたのだろう。
それで会社の資金に手を出すのは愚策だけど。
僕はそんなことを考えながらまた瞼を閉じた。
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