からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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記憶(柳要)①

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こうなることをおそれていた。
僕はもう、この状況を辛いと感じられるようになってしまった。
風間さんとはもう会えないのだろうか。
風間さんに頭を撫でてもらいたい。風間さんの声を聞いていたい。
僕はつい、風間さんの声を頭の中で思い浮かべる。思い浮かべて今まで風間さんにされて嬉しかったことも全部思い浮かんできて、それと同時に僕の体の周りにはそれらは何一つなくて辛い納屋のものしかない。

風間さんにもう会えないかもしれない。

悲しくて、その記憶を排除してまた前のようになにも考えなくて良くなりたいと思った。

ま え の よ う に

そうだ。前もそうだった。
この納屋に初めて入れられた頃の僕はその記憶を全部消し去ろうとした。
だから僕は覚えていない。
父のことも母のことも。

ーーいや、覚えている。
蓋をしただけで。
思い出さないように。


そういえば父と母が死んだ、ということを理解してからも誰かに助けて欲しいと思っていた。
そう……あれは……
あれは……
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