からっぽを満たせ

ゆきうさぎ

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忘却、喪失⑩

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車が叔父の家に着く。叔父に言われて降りる。
「お前の部屋に向かえ」
言われるがままに玄関から入る。もちろん納屋までの道はしっかり覚えている。
暗くて広い庭を歩きながら納屋にたどり着く。
叔父は首で入れと合図したのでそっと納屋の扉を開けて入る。
僕が家を出た時から変わらない、ただの納屋だ。
納屋へ入って数歩進む。叔父もそれに続いて入ってくる気配がする。叔父の足音が止まったので僕も足を止めて振り返る。
叔父は納屋の扉を後ろ手で閉めて鍵をかけた。
「わかっているよな?なぜこうなったか」
僕は少し考えて頷く。
アパートに帰らなかったから。風間さんという他の人の家に転がり込んでいたから。
「他人の力を借りて生活するとは……恥ずかしいと思わないのか!」
でもどうして。どうしてそれがバレたのだろう。まさかアパートを監視していたというのか。それほど叔父は僕に興味はないだろうと思っていた。解約等をすればさすがにわかるとは思っていたが、一応アパートは借りたままだ。
「見窄らしい姿は許さないと言ったが、他人の家に入り浸ることはそれに当たると思わなかったか?」
思わなかったことはない。ただバレると思っていなかった。
「とにかく。お前は今後納屋に戻ってもらう。以前のように家事をすることも許さない。真っ直ぐこの納屋に戻り、この納屋のみで過ごせ。監視もつける。逃げられると思うな」
冷たい感情しか詰まっていない顔でそう言いきると、叔父は僕に近づいてくる。
この後の行動が読めるから体に力を入れる。
体中に衝撃が何度も何度も走る。走る。
ーー痛い。痛い。いたい。イタイ……
僕が納屋にうずくまり動けなくなると怒りに肩を上下させた叔父は納屋の鍵を開けて乱暴に開けて出て行って、そして乱暴に閉め、更に鍵をかけた。
僕は痛みで動けなくてなにも考えられなくて無意識にそっと目を閉じた。
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